その晩見た夢は、
生きてきた中でも最悪No.1の悪夢だった。
「ーますー」
それは、遠い山びこのようなもので始まった。
「あ、ーーますかー?」
(呼びかけられてる…?)
夢の中で、音だけが響く空間にいた。
「あ!聞こえますかー?聞こえますねー?やったー!!」
やたらとテンションの高い、オペレーターさんだと思った。
「お世話になっております、未来機構のものです!
この度、お客さまが数ある応募の中から、カメラシステム試験に見事!当選しまして!
当選結果とカメラ導入試験無事通過をご連絡させていただきましたー!!」
(……は?)
寝耳に水とはこのことだった。
(カメラ…って)
「はい!既にお楽しみいただいている、あのカメラ!私どもの叡智の結晶でございまして、いやーお気に召していただけて何より…」
(だから何のはなし?そんな試験に応募したことは…)
「ないようで、あるんです。いや、あるようでないのかな?」
(何…それ、聞いてない…)
「はい、ですが!ほんっとうに数ある人間の中から、選ばれたお客さま!何より誇りに思っていただけたらと存じます!」
(嫌な予感しかしないわ…)
「あ、このオペレーター信用に足らない、と認識されましたね!すぐに対応を交代いたします!」
「…失礼いたします。代わりまして、対応を承ります」
一瞬でガラリと変わり、驚いた。
「突然のこと、驚かれるのも無理はございません。この時代、この世界のお客さまにて、当未来機構がアクセスして直接コンタクトを取ったのはお客様が5人目でございます。何卒、対応にご容赦いただきたく存じます。」
いんぎん無礼とは…と思った瞬間、またオペレーターが代わった。
「失礼いたします。対応を交代させて…」
(責任者を出して!)
「失礼しました、私が責任者でございます」
また交代した。
(いい加減、変なことに巻き込むのはやめてください、このカメラを取って下さい)
「お客様、申し訳ありませんが出来かねます」
(出来かねます、じゃない!何とかして!)
悪夢、これは悪夢だと、思っていたかった。
現実だと認識するには、何もかも不足していた。
何に?何にだろう?
つづく