「ガリッ、ざりっ」

白いご飯を食べていて、突然歯の奥で音がした。

何か欠けた音だった。寝ぼけた頭でよくわからないまま、飲み込んだ。




朝の支度を終えて、キッチンの掃除をしていると、

「ザーッザーッ」と耳鳴りがした。

疲れているのか、今日は昼寝でもしようかと思っていると、

脳の血管に異物が流れている感覚がした。

しかも一つではなく、複数、どんどん細かくなっていった。

これはいけない。血栓かしら。

もう若くない証拠と家庭の医学を引っ張り出すために、書斎に向かった。

耳鳴りは止まなかった。


違和感を覚えたのは、血栓らしき物が全身を巡りはじめたからだ。

いくらなんでもどこかで壁にぶつかってもいいのに、スルスルと音を立てて循環していく。

こんなに早く、血栓は全身をまわるのだろうか?

何かおかしいと、分厚い本をめくったその時、

「パシャり」

音がした。

瞬きの瞬間だった。

その瞬間、血栓は止まった。

何か悪い予感が、奇妙な確信に変わった。


(私、カメラか何かを飲み込んだのかな?)



つづく