FP1級実技検定(資産設計提案業務:日本FP協会)を2020年9月13日に受検いたしました。
受検に至るまでのプロセス、受検当日の状況、自己採点の結果などについて、「受検記」としてまとめました。
1.はじめに
2019年12月にCFP資格審査試験6課目同時合格が確定後、おのずと軸足は9か月後の日本FP協会主催のFP1級実技検定(資産設計提案業務)に向かいました。
実は2級受検生時代の2018年12月ごろに「腕試しに」2017年9月検定の問題を解いたことがあって、論述は全く歯が立たなかったけれど論述以外は7~8割ぐらいの出来でした。100点満点換算するとぎりぎり合格ラインの60点だったので、「CFP合格レベルにまで仕上げるとどこまで論述以外の問題で積み上げができるのだろうか」と思いを巡らせました。
それからCFP6課目合格までの約1年ぐらいは、FP1級実技検定の問題を目にすることはありませんでした。
時が経ち、2019年12月17日にCFP6課目同時合格の吉報をいただきました。
CFPエントリー研修のEラーニングを仕上げながら、1年ぶりにFP1級実技検定の問題を目にしたら、「かなりの」手ごたえ。
CFPの難問に慣れていたので、「この問題だったら、1.5級レベル」と思いました。
この1年でのレベルアップを実感しつつ、苦手分野の問題については難問級の問題もあって苦戦しそうな印象を持ちました。
特に2018年検定では、CFP+1級学科合格者を以ってしても合格率は71%という数字に衝撃を受けました。
「軽く見てはいけない」と直感しました。
また、論述問題は相変わらず歯が立たない。
このあたりの対策が必要と思いました。
2.準備期間
2-(1)鬼門の論述対策(2019.12~2020.3)
2019年の年の暮れに、2011年以降の過去問を掲載しているサイトの情報を頼りに、出題内容を横並びさせながら出題傾向を分析していました。
ちょうどタイミングよく、年末に「CFPエントリー研修のEラーニング」に取り組んでいて、そのときに察しがつきました。
たとえばNISAとか配偶者の贈与税額軽減などの個別の知識を確認する内容ではなく、このEラーニングの教材に掲載されているFP業務を取り巻く諸法規(金融商品取引法、金融商品販売法、消費者契約法、税理士法、著作権法、個人情報保護法など)がFP業務とどのようにかかわってくるのかを押さえておく必要性を直感しました。
そこで、大変愚直な方法ですが、CFPエントリー研修のEラーニングと確認テストのスライド(全80枚ぐらい)を画面コピーの上EXCELやWordに貼り付けたものをプリントアウトして参考書代わりに活用しました。
これが大変重宝しました。
何度も読み直すうちに、「ここに出ている内容からの出題になるのではないか?」と理解できました。
年が明けてから、ある方からアドバイスをいただき、「CFP資格標準テキスト」でFP関連法規で関わりのありそうな「金融資産運用設計、ライフプランニング、リスクと保険」のうち、まだ持っていなかった「金融資産運用設計、ライフプランニング」を2月に購入しました。
これにより、過去問で出題されて以降に法改正のあった事項についての知識のアップデートができました。
「書き方」については、学習開始より2~3か月は問題文を見た瞬間、思考停止していましたが、3月ぐらいからは「書くべきキーワード」ぐらいは思い出せるようになりました。
2-(2)過去問演習(2020.2~2020.3)
過去問演習は、2011年以降の過去問を掲載しているサイトの情報と、受検生バイブルの「1級FP技能検定実技精選過去問題集(FPK研修センター編:いわゆる「緑本」)を活用しました。
前述の2011年以降の過去問を掲載しているサイトの情報は、ブラウザの情報をコピペしてWordに貼り付け(過去10回分すべてです)、プリントアウトして問題集としても活用できるようにしました。
上記はほぼ同時並行で、緑本は2月中旬に、過去問10回分は3月中旬に1周目を終えました。
結果は、緑本は正答率85%、過去問10回分は正答率92%でした。
ライフプランニングでの公的年金・社会保険、リスクと保険での保険証券読み取り、相続事業承継での法定後見制度・複雑な家系での法定相続割合・店舗併用住宅での贈与税配偶者控除・二世帯住宅の場合の小規模宅地等の評価減の特例において、弱点があぶり出されました。
また、過去10回分の出題内容をEXCELでの一覧表にまとめました。
各問題ごとにコメント、難易度を記し、傾向と難易度の把握に努めました。
ここでの気づきとして、2016年あたりからCFP定番問題レベルの出題が、金融・ライフ・相続あたりで目につき始めていることがわかりました。、「過去問オンリーでは足元をすくわれる」という危機感も持ちました。
3.知識の再確認期間(2020.4~2020.7)
3-(1)CFP試験の復習を兼ねて(2020.4~2020.5)
上記に記した通り、「1級実技=1.5級」ながらも足元をすくわれないよう、CFPの定番問題は確実に解けるようにしておこうと、次の対策を施しました。
①CFP試験問題(2019.11)の分析結果のブラッシュアップ
これは受験直後の2019年12月に、自分の受けた全6課目の試験問題の分析を
駆け足で行いましたが、合格後に気づいたことをこのブログでアップした内容を反
映させました。
2020年4~5月の1か月を要しましたが、知識が抜け落ちしないよう、自らの「脳ト
レ」になりました。
②「マイCFP精選問題集」の編集と問題演習
FP1級(協会)実技対策として、過去問の内容に近いCFPの問題を自分なりにセレクト
してつくった「マイCFP精選問題集」を編集しました。
特に、出題内容がCFP寄りにシフトしつつある金融・ライフ・相続の課目より全部で
189題の問題を、過去4回分の試験よりセレクトして演習しました。
1周目は6月より始め、知識の抜け落ちが目立ち、正答率は85%。
金融資産運用設計での定額貯金での元利合計額計算(半年複利型)と上場株式の譲
渡所得(所得税・住民税/確定申告する場合と申告不要を選択時の計算)、ライフプラ
ンニングでの働き方とその関連法令等に関する設問で、知識の欠落が目立ちました。
(2周目(8月に実施)では94%にまで回復しました。)
3-(2)論述対策
①CFP試験問題からのヒント抽出
FP1級(協会)実技対策に思いを巡らせたときに、「もしかしてCFP試験の金融資産運用
設計の最後の方に出てくる【金融資産運用に係る制度や法規に関する問題】にヒントが
あるのではないか?」と気づきました。
それは、ライフプランニングやリスクと保険でも同様でした。
そこで、2020年4~5月にかけて、これらの問題をすべてWordのファイルに貼り付け、
正しい内容のキーポイントには「青」で、誤った内容には「赤」で色分けして編集しました。
プリントアウトして読み直すだけでも、記述対策時のイメージづくりに役立ちました。
②FPジャーナルの活用
2か月に一度の「FPと倫理テスト」に加え、2020年に入り「FPと著作権法」について2回
にわたっての特集が組まれたことから、これらも重要な情報として活用しました。
2020年6月あたりから、論述対策を意識して何度も読みました。
③自作の論述問題13題の作成と演習
これまで10回の過去問を解くだけでは不十分と思い、2020年6月に、自分なりに分析し
た結果をもとに、「予想問題」を13題考えました。(内容は、9月17日のブログでも紹介し
ました。)
あわせて、【書く練習】も必要と思い、【300字制限の原稿用紙】のマス目をつくった解答
用紙も用意して演習しました。
ここで、ありとあらゆる切り口から攻められても対応できるだけの「書く力」が養われまし
た。
年明け早々の「問題文を見たら思考停止」していた自分とは別人になりました。
4.仕上げの時期(2020.7~試験前日)
4-(1)行政書士試験対策との並行
2020年7月中旬ぐらいで、やろうと考えていた受検対策をひととおり仕上げました。
ちょうどこの時に、「行政書士試験」も意識し始めました。
将来、FP業務との組み合わせもできそうと考えたからです。
行政書士試験は熟考の末2020年11月試験にエントリーしたこともあり、8月までは「二足のわらじ」での学習でした。
FPと行政書士のウエイトを1対1とし、朝はFP、通勤・退勤時は行政書士と時間を区切り、FPのほうは過去問10回分とマイCFP精選問題集の演習と、論述問題の書く練習に努めました。
行政書士の学習と並行して、大きなメリットがありました。
それは、民法の学習で、苦手だった法定後見制度の知識をFP学習時代にはたどりつかなかった深さまで突っ込んでの学習ができたことや、民法改正で気にしていた配偶者居住権・契約不適合責任を学べたことでした。
「別角度」からの学習も役立つことを実感しました。
4-(2)直前演習
試験2週間前となった9月からはさすがにFP:行政書士=3:1ぐらいにして、最後の仕上げに入りました。
本番対策と試験時間が3時間もある行政書士試験対策も考慮して、試験1週間前にはを過去10回分の問題とマイCFP精選問題集から合計184題の模擬試験を実施しました。3時間で終わると思っていましたが、実際は過去10回分の問題(163題)で3時間。ここでいったん区切ってCFPコーナーで1時間少し。合計4時間超のロングランでした。
結果は182勝2敗の正答率98.9%。
これで、大きな自信を得ました。
5.試験当日(2020.9.13)
実は金曜・土曜と目が冴えてよく眠れませんでした。業務で気の張る出来事があって、そのことを思い出すと時折自分を見失いそうにさえなりました。
朝ランを1時間少し走り、少しでもそういった気持ちをリセットしようと努めました。
試験時間は13時30分からなので、10時ぐらいまでは脳を休め、眠気をそらしました。
10時ぐらいから最後の確認に入りましたが、部屋が暑いのかちょっと熱っぽく感じました。
体温測ると37度1分!
これはまずい。
あわてて風通しの良い部屋に移動して、扇風機の力も借りながら熱覚まし。
1時間後に再計測したら36度7分。
あわや0次関門でアウトの危機からは脱出できました。(注⇒出発直前には36度1分となりました。)
11時過ぎに自宅を出発。
千代田線で新御茶ノ水駅まで移動後に乗り換えて、試験会場最寄りの市ヶ谷駅へ。
12時過ぎに到着し、会場のTKP市ヶ谷カンファレンスセンターへ。
この試験会場は思い出深い場所。
1年前の9月15日(当日も日曜日)にMGCに出場していた母校陸上部後輩を応援した場所のすぐ近くであり、そして2019年11月17日にCFP6課目同時合格を決めた場所。この会場で受検できることはこの上なく幸運なことと感謝しました。
会場についたときにはまだ準備前でした。幸い少し一服できそうだったので、コンビニで買ったおにぎりで栄養補給。
睡魔と目の周りが充血しているのがわかり、苦戦を覚悟しました。
「論述以外は満点」というひそかにあたためていた目標はありましたが、それはいったんリセットして「失点5以内」に下方修正。
睡魔で集中力が持つかどうか心配だったので、「1問1問、慎重かつ確実に」を意識することにしました。
会場設定完了後に所定の座席へ着席。
70名ほど収容のホールで、後ろから2番目の場所でした。
あたりを見渡すと、男女比率は7:3。年齢構成は40~50代が多そうな感じでした。
そして、あの「緑本」を開いている方々が全体の7割ぐらい。
わたしはというと、緑本は無視して、家でプリントアウトしてきた「FPとコンプライアンス」(日本FP協会マイページにあり)をひたすら読み直していました。論述対策でした。
この瞬間、「精神的に優位」に立てた(=勝った!)と思い、緊張感と睡魔もいくぶん取れました。
試験開始までの時間はとても長く感じました。
睡魔を何とかしようと、何度か深呼吸。
論述問題でキーワードになりそうな語句を何度も心の中で繰り返しました。
目の前の解答用紙を見て、「論述問題は6問目」と察しがつきました。
そして、2問目に3つの枠があったので、ここは個人向け国債の中途換金時の受取額計算と推測しました。(当たりでした)
13時30分に試験開始。
問題文を見る前に、「これは外せない」と思ってすぐに「過量取引」と「著作権法のキーワード」をメモ。
そして問題を見ると、論述以外はほぼ過去問焼き直しと直感。行ける!
さらに論述問題は、本命クラスととしてリストアップしたひとつであった「消費者契約法」。
開始直後にメモした「過量取引」が生きてきました。
思わず、「やった!」とガッツポーズ。
そのときに小声が漏れてしまい、試験監督官から何か言われるかな。。。と思いましたがセーフ。
いつだったかの「夢」で、試験官と言い合いになって退場させられたことを思い出しました。
問題を解く順序ですが、まずは論述問題で「キーワード」だけを列挙して論理の組み立てを考えてから、それ以外の問題に移ることにしました。
論述問題でひとつ誤算。消費者契約法で、取消となる事業者の行為だけではなく、【無効】となる事業者の行為も求められていました。ここはちょっと動揺しましたが、他の問題を解きながら思い出すことを待つことにしました。
論述以外の問題は、過去問レベルで対応できる問題ばかり。
CFPレベルと思える問題はなかったように思えました。
ただ、○×問題の3問に自信が持てないものがあり、▲3点を覚悟していました。
論述以外をほぼ1時間で終えて、鬼門の論述問題へ。
ほぼ練習通りに書けたように思えましたが、やっぱり【無効】となる事業者の行為が思い出せずじまい。
頭の中のたんすの引き出しから、何とか「取り消しを認めない条項がある場合」だけは思い出しました。
ここまでで残り2行。よく見ると、300文字ちょうどではなく320字まで書けそうだ。
「ここぞ」とばかりに、消費者契約法でFPが留意すべき点を【結び】として書くことにしました。
ただ、なかなか最後の2行に収まりきらない。
ここだけで20分以上を要して書き終えました。
この段階で残り30分。もう一度解答を見直し、○×問題で自信のなかった箇所3か所の正誤判定を変えました。結果的にはこれが「吉」と出ました。
ただ、後悔しているのは論述問題。消費者契約上における消費者の範囲をざっくりと書きすぎたことをあとで気づきました。
事前の練習通り、「個人(個人事業主として取引した場合を除く)」として書いていれば、文句なかったのですが。。。
「密」を回避するため、試験終了13分前に(ほんとうに期限ぎりぎりです)退出しました。
これで、FP1級実技試験は無事に終えることができました。
6.自己採点結果
当日17時30分に日本FP協会より発表された解答と答え合わせ。
論述以外は【満点】取れたと思っていましたが、実際は15-(ウ)の○×問題で惜しい失点1の準パーフェクト。
携行品損害保険で、盗難の場合と紛失の場合を取り違えてしまいました。
睡魔も影響したかもしれないですが、これも実力です。
そして、論述問題は読めば読むほどぼろが見つかって不安になり、6~7割得点できていれば全体で90点に乗りそうなので、これで「よし」としようと割り切りました。
7.振り返って
今回は難易度的には易しい部類に入る内容でした。
新型コロナも考慮したのかどうか定かではありませんが、1級実技(日本FP協会)は「ボーナスステージ」という考えもあると思います。
ただ、「これが当たり前」と思うと、2018年のようにCFP6課目合格者+FP1級学科合格者でも合格率71%のようになってしまいかねません。
わたしの場合は「9か月」と十分過ぎる準備期間をいただけました。
今回中止となったCFP6月試験があれば3か月の準備となる方もいらっしゃいますが、いずれにしても「CFPレベルを落とさないこと」が大切で、それが試験に臨むにあたっての最低限の「礼儀」ではないかと思います。
<完>