予算委員会の攻防が、どういう意図で行われていたのかは、それを主導した立憲の安住さんの話を聞くと一番よくわかると思われますが、安住さんは国民向けにはあまりメッセージを発信していない感じがします。

 

僕がアクセスできる情報の中では、安住さんが国会議員に向けて現状と今後を説明している短いスピーチを原口さんが記録、配信してくれているものがありましたが、これはマイクを通さずに収録されていたので、極端に音量を上げないと聞き取れないものでした。普通に再生すると聞き取れなかったので、僕はそこから情報をとることはできませんでした。

 

そのスピーチがあった後で、原口さんは佐賀に帰るために飛行場に向かい、車内からも配信してくれていました。そして翌日の通常の配信で、安住さんのスピーチも引用しつつ、どういうことだったか説明してくれていました。

 

しかし原口さんの説明は、何も知らない人に向けての説明という形ではなくて、既に出ていた、今回の立憲の行動は全く成果が出なかったという最低の評価に対して、怒りの反論を試みるという形となっていて、包括的でなく、断片的な印象でした。

 

だけど、これでだいぶわかってきた感じがします。

 

れいわの大石さんは、予算案について岸田さんが目論んでいることを徹底して阻止することを、立憲がやろうとしているのかなと想像していたようですが、実際はそうではなかった気がします。

 

安住さんの狙いとしては、自民党がやろうとしているおかしな行為を幅広く視野に収めていて、できるだけ全部押し返すことを考えていたように思います。

 

予算案の強行採決が準備されていると知った時点で、これも止めようとするし、裏金追求でも成果を挙げようとするし、他の危険な法案の審議についても押し返そうとする、という形で、ひとつのことに徹底してこだわるのではなくて、相手にとって突かれたら困るところを突いて行き、ひとつでも多く、相手の嫌がることを呑ませるというやり方でやっているように感じました。

 

予算案の早期成立を狙った今回の動きは、岸田さんの思惑通りに進んだと言えなくもないですが、いろいろ条件を突き付けて、いくつかの譲歩を引き出しているようです。主に、裏金問題の方で関係者を国会ひ引き出す約束ができたようで、うまくやれれば自民党の不正をこれまで以上に世間に示すことができる、ということみたいです。

 

岸田さんは、目の前の予算案のことしか頭にない状況だったので、普通だったら譲歩しないところでも譲歩したようです。

 

原口さんは、与野党の数の圧倒的な差を考えれば、安住さんはよくやっていると見たようです。しかし、政治資金規正法の改正で、連座制導入を言っていることが良くないとか、細かいことを言いだすと、異論があるようでした。

 

外野で見ている評論家の人たちも、安住さんの考えや、他の立憲の質問者の要求が間違っていると言うことがあります。また安住さんに関しては、与党と手打ちをして、大事な決定に対して徹底抗戦せずに譲ってしまう、という評価もあります。

 

手打ちの内容が、原口さんが言っているような、与党にダメージを与えるようなこと、国会が与党が少数意見を完全無視で自分たちの思惑を押し通す場にならないようにすることであるなら、評論家の人もある程度は評価するかもしれませんが、安住さんの説明が不十分ということなのか、何の情報もなく遠目から見た印象だけで判断されて、何か利権をもらっているんじゃないかという疑惑を持たれているように思います。

 

僕は大石さんの解釈を聞いていたので、予算案の早期成立を止めようとして、結局、抵抗が十分でなくて通ってしまった、という印象を持ちました。

 

れいわの方では、立憲の抵抗は本気じゃない、選挙のためのアピールで、私たち仕事してますという印象付けを少しやっておこうか、という感じのセレモニーだ、という解釈なんだと思います。どうも、れいわは与野党交渉の場にも入れてもらってないようなので、一般国民と同じように、遠目から見た印象でしか判断できないのかもしれません。

 

今回の予算案の早期成立の目論見は、岸田さんが衆院解散のフリーハンドを持つために発案され、強行されたのだと思います。

 

どこからも異論の出ない予算であるとか、早く成立させなければならないと与野党間で合意がある場合には、参議院の審議を経ないでも成立するように、多分、考えられたルールがあって、そのルールを自分勝手な理由で適用しようとして、無理やり短時間で合意に至った形を作ろうとした、ということが今回の悪だくみの内容なんでしょう。

 

しかし自民党でも参議院議員からすると、自分たちの存在がないがしろにされたと感じられるわけです。参議院の審議なんてどうでもいいように扱われたわけですから。

 

そして予算案を通過させるのと交換に、何人かの自民党議員を、立憲が国会に呼ぶことを認めたということですから、岸田さんが自己保身のために身内を売った形になって、その人たちからしたら裏切られたという思いがあるでしょう。

 

原口さんの評価では、そうやって与党の中に亀裂を作って、内部分裂させることが、攻撃としてかなり有効だということでした。

 

国会の本義を考えたら、政敵を潰すことが良いことだとは言えないかもしれませんが、そうまでしないと、特に最近の自民党は、野党の言うことを全く聞かないで、国会を自分たちの都合を押し通すだけの場にしてしまうので、抵抗する側もなりふり構っていられない部分があるということかもしれません。

 

しかしれいわの中で言われていることを考えると、立憲と他の野党の間にも亀裂が走っている感じがします。

 

大石さんは今回、一人牛歩という形で、立憲の動きと連動しているつもりだったようですが、安住さんの狙っているところとは違っていて、実際には見込み違いで孤立してしまっていたようです。

 

安住さんは、予算案だけを問題にしているのではなくて、そこで必ずしも勝つ必要はなくて、全面戦争を戦う中で、どこかで勝利を得ればいいという感じだったのかもしれません。予算案審議の場で負けても、それはそれでいい、ということだと、大石さんは頑張り損になってしまいます。

 

山井さんのフィリバスター演説も、真剣さや真心が感じられない、ふざけているように見えるという理由で、櫛渕さんには不評でした。

 

与党の一丸となった圧力に抵抗するという意味では、ふてぶてしい態度は有効かもしれませんが、一般国民や他の野党議員に対するアピールとしては少々まずいという感じもしますね。