前のお話
ふたりめは
新婚のご夫婦。
患者さんは、20代の方で
長引く風邪が治らず
総合病院で診察を受けた結果
白血病の診断がくだった。
新婚のご夫婦は
本当なら、一番楽しい時期を
過ごしていただろう。
この奥様は、若くて元気。
どんな逆境にも負けないんだっていう
強いイメージもあった。
ところが、化学療法が始まって
みるみる衰弱し
弱音を吐く患者さんと
口論が絶えなくなった。
もっと、強く頑張ってほしい。
もっと、未来に希望を持つ人であってほしい。
もっと・・・
もっと・・・
理想の旦那様像があったんだろう。
当時の私は、この奥様に
怒りさえ感じていた。
体も心も辛いのは患者さんなのに
どうして優しくできないの?
私は私で、理想の奥様像を
持っていたんだと思う。
そして、もし私だったら
こんな風にはしないっていう思いが
強くなっていった。
現実にはならなかった
彼との結婚生活。
どんなことがあっても
お互いを支えて生きていくって
疑いもなく思ってた。
けど、今は奥様の気持ちもよくわかる。
結婚したばかりで
希望にあふれた未来を
イメージしていただろう。
そこにやって来た試練。
ご夫婦とは言っても
まだ歴史も浅く
弱い面やイヤな面を
お互いに見せてなかったのかもしれない。
そんな中で
まるで未来を失うかのような現実。
それは、あの頃の私と同じだったけど
認めることが怖くて
奥様に対して怒りの感情がわいたのだろう。
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