「神様の贈り物 1」の続きです。


突然のインフルエンザ。
突然の仕事のキャンセル。
とても楽しみにしていた仕事。

しかも、その撮影は
2回目のキャンセル。
1回目は私達の機材の故障。
2回目は私のインフルエンザ。

先方にも申し訳なくて
合わせる顔がなかった。
悔しくて仕方なかった。

起こることは必然。
わかってる。
でも、そう思いたくなかった。



隔離部屋で寝込んでいる私に
abuが声をかけてきた。

「仕事なくなったし、
 俺、アンナの授業参観に
 行ってくるよ」

はっ!
そうだ、そうだった!
今日はアンナの
授業参観でもあったのだ。
小学生最後の。

「うん、じゃあお願いね」

撮影が決まった直後に
学校から連絡があり、
娘には申し訳ないけれど、
参観日は行かないよ、
と言っていたのだった。

abuが言うまで忘れていた自分、
胸がチクッと痛んだ。



しばらく眠ると、
玄関の戸が開く音で
目を覚ました。

「ただいまーっ!」

アンナの
弾むような元気な声。
abuが隔離部屋に来て
私に言った。

「恵美がインフルエンザにかかったのは、
 こういうことだったんだよ。
 俺、今日学校に行ってやっとわかった」

そして、私に紙袋を差し出した。



なんと…

その授業参観は特別なもので
お父さんお母さんに
贈り物をする日。

サプライズのために
内緒にされていたのだった。

子供達は
ずいぶん前から準備をし
その日に備えていた。

ひとりひとり、
子供が自分の親に
プレゼントを渡す時に

手紙を読んで
聞かせてくれることに
なっていた。

最後にはクラス全員で、
練習を重ねた合唱も
披露することになっていて…

つまり
もし行かなければ
アンナは

周りが親に手紙読むのを
聞いてもらいながら

一生懸命作った
プレゼントを渡す中

練習した歌を
一生懸命歌って
聞いてもらう中

ひとりぼっちに
なってしまうところだった…

親が来ないと
寂しい思いをする
そんな特別な授業参観だと
アンナは知っていたのに

私達が仕事仕事と
言っているのを
いつも見ているからだろう

「来なくて平気だよ!」

と笑顔で言ったのだった。

けれど、もし、行かなかったら
ほぼ全員の父兄が来ている中
みんなのように

読み上げる手紙を
聞いてもらえない

一生懸命作った
プレゼントを渡せない

練習した歌を
聞いてもらえない

どんなにか寂しい思いを
したことだろう。

いつもイイコになり過ぎて
悲しい、寂しいを
封印してしまう子なので
それを知った時
涙が止まらなかった。



紙袋には
手紙とプレゼントが
入っていた。

あぶは手紙を
私はプレゼントを
もらった。

少ないお小遣いで
頑張って買った材料を使い
小さな手で作った
可愛いポーチ。

またまた涙が止まらなかった。

「ごめんね、アンナ…」

心の中で何度も繰り返した。

ひょこっと隔離部屋に
顔を出すアンナ。
涙を布団カバーで
ごしごしふいて言った。

「ありがとう、うれしいよ!
 大切に使うね!」

「レースは手縫いでつけたんだよ」

「おーっ、まつり縫いだね。
 さーすがぁ」

「えへへ」



インフルエンザに
かかったことで
こうした流れになったことが
神様からの贈り物に
思えてならない。

ひとりの少女の愛を
とりこぼすことなく
受け取ることができたのだから…

ひとりの少女の心を
瀬戸際で救うことが
できたのだから…

そして、何より
救われたのは私…



私はどこを
見ていたのかしら。

私は何を
見ていたのかしら。

私はこんな大切なものを
何と引き換えに
していたのかしら。

おばかさん。



インフルエンザという
神様からの贈り物で
私は目が覚めた。

青い鳥のように
宝物はそばにある。

遠くを探さなくても。

それをまず大切にしなくて
何を大切にできよう。

それを大切にするために
強くならなくて
何に立ち向かうことができよう。

何を守れよう。

子育ては自分育て。
私は娘に育てられている。

ありがとう、アンナ。
ありがとう、神様。

インフルエンザも
捨てたもんじゃない(笑)



最後にこの場を借りて。
また撮影がキャンセルになったのに、
快諾してくださった、
そして、
この出来事を知って
心から喜んでくださった、
Kご夫妻に心からの感謝を。

撮影を心から楽しみにしています!