「高い生活文化性が低環境負荷生活を育む??」 Emileのコラム248 | 地球村研究室

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厳しい地球環境制約の中で心豊かに暮らすには?沖永良部島で実践しながら考えたいと思っています!!

 6月20日、梅雨が明けてから、一滴の雨も降らない・・・芝生は枯れ始め、散水も追いつかない、台風が恋しい・・・・???

 久しぶりの北海道大学、寒いかなと思って一枚多めに羽織って行ったが・・・30℃・・・笑

 7月19日13h30 第1回OPaRL(一つの地球で暮らせる社会を描く研究所)シンポジウム、リアル参加はまだ席があるようです。是非、皆さんと未来の子供たちに手渡せるバトンを一緒に考えたいです!!

【申込受付中】OPaRL第1回公開シンポジウム「一つの地球で暮らせる社会を考える」(参加費無料/ハイブリッド開催) (esa-ecosystem.jp)

 

自然の修復能力以下で暮らす(一つの地球で暮らす)ことが、持続可能な社会を創る唯一の解であることはすでに明らかであり、世界中の人たちが日本人と同じ暮らしをすれば、地球2.8個(エコロジカル・フットプリント)が必要なことから、日本人は、2.8分の一すなわち、現在の約4割の環境負荷で暮らす必要がある。

 5月のコラムでも書かせて頂いたが、沖永良部島の調査では、すでに一つ以下で暮らしている方が多くいらっしゃり、平均でも地球1.2個で、一つの地球まであと一歩という位置にある。

 

 なぜ、沖永良部島の人たちは、それ程低環境負荷で暮らすことが出来ているのだろうか? 島の多くの人たちには笑顔があふれ、爪に火を灯して暮らしているような悲壮感は全くない。そこで、生活アンケート調査を行ってみた。アンケートは、自然との関わり、家族との関わり、地域(コミュニティー)との関わり、つながり/豊かさとの関わりに関する全30の設問に答えて頂く形で行った。このアンケート調査は、我々の研究グループが日本全体でも行っており、それと比較することで島の特徴がつかめるのではないかと考えた。

 

 その結果、ほぼすべての設問で日本の平均を上回る親和性を示し、特に自然やコミュニティーとの親和性が特徴的に高く、自然や家族、地域とのつながりに満足し、今の暮らしを幸せに思う人たちが多くいることも明らかになった。また、アンケート結果と生活環境負荷の関係も調べたが、これには相関は見られなかった。すなわち、まだ仮説レベルではあるが、自然や家族、地域とのつながりが暮らしの幸せを想う人達を育み、今以上の快適性や利便性を生み出す機器や道具を求めていないのではないかと思う。

 日本人が失ってはならない文化要素が44に集約できることは以前明らかにしたが、島で2012-13年に行った学術調査で、沖永良部島では45番目の要素として「家族をつくる」が新たに加わり、45の内の30の要素があることがわかった。とてつもなく文化度が高いのである。これが移住を決めたきっかけでもあるのだが。。。。 この30に重みをつけて統計処理することで沖永良部島の5つの文化要素(生活価値)も明らかになった。それは、「食」 山や海から恵みの食材を頂き、豚、ヤギ、鶏を飼い、松葉やソテツを燃料に、自給自足の生活の中に多くの楽しみさえ見つけた。「自然」 食も、仕事もすべてが、豊かな海、豊かな山、豊かな水の恩恵であった。「集い」 イイタバ(結)や共同作業場を基本に、自分たちで共同して冠婚葬祭から生活場までのあらゆることやものを創り上げた。「楽しみ・遊び・学び」 大人は、たしなみとして三線、歌、踊りを覚え、それが遊びであり、楽しみとなりさらには恋の醸成にも繋がった。つらい水くみや草刈りも、それを楽しむことを考え、ハレの日(先祖供養、学芸会、敬老会)は、食や芸の披露会にもなった。「仕事」 農業、漁業、砂糖つくり、塩つくり、運搬・・・子供にも暮らしの役割があり、一人でいくつもの仕事を持ち、仕事と生活の境界には、明確な線引きはなかった。これらの文化要素は、まさしく「自然」「家族」「コミュニティー」から成り立っている。

 

 沖永良部島の人たちは、地球環境のことを考えて暮らしているのではない。ただ、離島であるが故の多くの制約の中で、心豊かに暮らすためには、自然に生かされていることを知り、自然を活かし、自然を往なすという基本的な足場の上に、それと融合した形での家族やコミュニティーの形を創り上げてきたのだろう。そしてその原理が、まだしっかりと残っている結果として、豊かでありながら環境負荷の低い暮らしを生み出しているのだと思う。

 

4月に一つの地球で暮らせる社会を描く研究所「OPaRL(オパール)」を設立し、多くの方に4割の暮らしの話をしているが、ほとんどの方が、そんな無理な、無茶な… という意見が多い。でも、島にはそれを笑顔で軽々とクリアーしている人たちがいる。本当に凄い人たちだと思うし、世界の最先端を走っていることをもっと自慢して欲しい。加えて、5月に閣議決定された「第六次環境基本計画」の最重要課題は「ウェルビーイング」と「自然の維持修復」であり、強い追い風も吹いている。

 

さあ、「自然」「家族」「コミュニティー」の「か・た・ち」をもっとオシャレに未来の子供たちのために進化させたい、楽しい悩み事ではある・・・・