思い出のルノー・フロリド 天国と地獄 | ektarのピントグラスな日々・デザイン備忘録

思い出のルノー・フロリド 天国と地獄

当時 生意気な大学生だった僕は、ある日突然に親父から、○○さんが、ルノー・フロリドからマツダ・ルーチェに乗り換えるので、 古いフロリドいらないか?って連絡きたけど、欲しいか?? と言われた。

 

○○さんは、親父がルノー4VC(我が家初めての中古マイカー)をいじくりまわして乗っていた頃からのルノー友達で、小学生当時の僕も、○○さんのルノーのオートチョーク改造に夜遅くまでお手伝いさせられた事があった。

 

ルノー・フロリドといえば、ルノーのスポーツカーということで、日本に輸入されはじめた当時、碑文谷にあった共進ルノーのサービス工場で、たまに見たのを思い出し、

あのスタイルだったら欲しいなあー と 早速、もらい受ける事にした。

これが、フロリド 天国と地獄の幕開きです。

 

さて、もらい受けたフロリドは車検残1年半余り! これはラッキー!

東京の世田谷区から僕の住んでいる横浜の自宅まで 第三京浜経由で、無事自走してたどり着きました。

今にして思えば、よくたどり着けたものだと思います。

 

横浜の自宅の庭に駐車したフロリドを、明るい日の下で見ると、そこいらじゅう、

ボロボロで、よれよれの美女といった風情!

フロリドを手に入れた喜びに浸るヒマなく、親父と車のチェック!

 

いよいよ地獄編の幕開きです。

液漏れしているブレーキマスター・シリンダーとクラッチ・マスターシリンダー!!!

前輪はロッキードのディスクブレーキで段付き摩耗!!

後輪のブレーキドラムも凄まじい段付き摩耗!!

後輪のドライブシャフトのラバーブーツは破れてるし・・

ハブベアリングは全部ゴロゴロ音がするし・・

右後(リアエンジンなので)のドライブシャフトは折れて溶接され、歪んでるし・・

エンジン絶不調・・・・

ブレーキシリンダーは液漏れ・・・

黒塗りアンダーコート?が何度も塗られて超厚塗りで、下回りのボルト頭が埋没・・

冷却系ゴムホースが劣化して穴があいて、テープで止めてあるし・・

エンジンとミッションはオイルまみれの上に土埃がついて黒い土の塊の様相・・

薄暗い、カンテラのようなヘッドライト!

 

こんなので、よく車検が通せたものだ!

 

電気系も怪しくて、

死にそうな6Vバッテリーと発電が怪しい6Vダイナモ・・・

あちらこちらの配線が、切ってあったり、継ぎ足してあったり、オリジナルから

程お遠い不思議な配線に・・

 

エンジン掛けるのも大変な時があって、車のお尻にクランクレバー用の穴が

あいていて、人力クランキングが出来るので 何度も助けられました。

 

外装は、 塗装ひび割れだらけ! 何度も塗装の上から厚塗りされ、その為らしい・・

サンダーで一部を剥いでみたら、6層表れて、前オーナーによると、ワックス洗車はまったくしないで、数年に一度新しく上塗りすれば綺麗になる!という方針だったらしい。!

 

ボディーのドア下のサイドシルが一部腐食で穴が!

 

ボディー後部のフェンダーにある空気取り入れ口の下部が腐食でさびて穴が・・

 

でも、メッキパーツには奇跡的に錆なし!

 

まあ、こんな状況でした。

 

まずは、エンジンとミッションを整備しようと降ろす事に・・

で、近所にお住まいの土建屋さんの若旦那から 土建屋さんの車庫に放置されていたチェーンブロックをお借りし、 庭に、丸太で櫓を組み、エンジンを吊り上げて外しました。

その前に、ドライブシャフト、ミッションを外したのは言うまでもありません。

 

整備の参考資料は、青山の島田洋書で入手できた、ルノー・ドーフィンのチルトン版の整備マニュアルと、親父が持っていた日野ルノーの整備書です。

その時は、フロリドの中身は4CVだと思ってましたが、実は中身がドーフィンだったので、ドーフィンマニュアルも役にたってくれました。

 

この日野ルノーの整備書は大変によく書けていて、いまでも我が家の家宝として

所有しております。

僕の車の整備知識の9割は、この整備書のおかげです。(古いけどね)

 

大学3年生の春休みは、フロリドの修理に明け暮れました。

ガールフレンド(後に奥様となる方)に会ってる時間もあまり無く、たまに会うとあまりの手と指の黒い油汚れに仰天され・・

 

急ピッチで修理を進め、4月の新学期からは、カッコよく蘇ったフロリドで都下の美大まで華々しく通学しようという魂胆!

 

早起きして、夜遅くまで修理を続け、

 

ブレーキマスターシリンダー、クラッチシリンダー交換

ハブベアリング、オイルシール交換

ブレーキディスク、ドラムの段付摩耗修正(近所の鉄工所にお願い・・)

ミッションオーバーホール

クラッチオーバーホール

ドライブシャフト・・折れてないものに交換 知り合いの、当時千葉にお住まいだったルノーでは高名な土屋さんにお譲りいただきました。

ついでにダイナモもいただきました。

小さなOHVのエンジンも完全にバラシて、お掃除と、ベアリングのチェック。

ヘッドが煤まみれで、硬くこびりついた煤の塊を除去。

バルブも擦り合わせ、

ピストンリングも傷だらけだったので新品に交換!

キャブのオーバーホール

湿式エアクリーナのお掃除

機械式燃料ポンプのチェック

バッテリーももっとマシな6V中古品に交換。

 

それが終わったら、スプレーガンで塗りなおし・・。

 

でなんとか4月の始めにここまでたどり着いて、まさに、名車再生シリーズの進行速度。

 

まあ、まだ20歳そこそこの若さのエネルギーでできたんだとは思います。

今はちょいと無理・・。

 

 

さて、試運転中の悪夢・・・

 

本牧の米軍住宅の桜並木を通って、モーリスガレージの横から山手に尾根伝いの道を走るのが学生時代の日課で、再び走れるようになったフロリドでルンルン試運転ドライブのさなか・・ 本牧の米軍住宅の脇当たりで、

 

シフトレバー(鉄ロッド製)が根本からポッキリ折れる!

 

 

ええ・・・なんでこんなものが折れるんだ???

結構、前代未聞だとは思います。

幸い2速で折れたため、自宅まで2速だけなんとか戻りました。

 

 

 

ブレーキホースが裂ける!

シフトレバーを溶接して貰って修理した後、

山手の下り坂でブレーキ掛けたら

フロントフェンダーあたりから白い霧が吹きだして、

ブレーキがスコスコに!!

 

ハンドブレーキで止めてチェックするとフロントブレーキホースが

破れてオイルがだだもれ・・・!

 

ブレーキホースに黒いシャシーぺインドが厚く何層にも塗られ、

傷み具合が目視でチェックできなかったというしょうもない状態です。

 

で、ブレーキホースは全部交換しました。

 

なんとか完成を見て、早速 乗り回し始めたのですが、電気容量の乏しさに悩まされました。 まあ、電気が足りてないわけですが、ダイナモがイマイチなのか、

バッテリーがイマイチなのか? それとも、古いくたびれたハーネスの電線とか

古いコネクターがイマイチなのか?

 

親父の乗っていた4CVでは電気容量不足はなかったので、謎です。

 

具体的には、

雨降りの寒い夜、交差点で右折しようとすると、ウインカーのリレーが動かない!!! という状況で、

 

ヘッドライト点灯

ワイパー動作

ヒーターオン

 

の状態で、ウインカーのリレーが動かない!!!!

 

で、交差点に入る前には ヒーターを切って、

ヘッドライトは消してポジションランプのみにして、

そーするとウインカーが点滅するので、

交差点で曲ったら即ウインカーオフでヘッドライト点灯

 

という方法で切り抜けるわけです。

 

 

まあ、そんな具合で乗り始め、

これからが天国編に!!!

 

4月の中頃に いよいよキャンパスデビューです!

絶対的アンダーパワーの中身はともかく、外観はバッチリピカピカに

したので、かなり目立つ存在。

デザインの主任教授が、若いころブラジルで乗っていたという事で

おほめの言葉をいただきました。

 

後輩のギャル美大生にもオフランスのスタイリッシュなオープンカー

なので人気沸騰WWWWWWW

フロリドは無理やり2人押し込める折り畳み後席があり、

(オーケージョナル・フォー と称する)

後輩の仲良し女子美大生を満載して、学校を終えた午後、

幌を上げたオープン状態で

吉祥寺方面へ送りがてらワイワイドライブしていたのであります。

 

芸能人でもお金持ちの息子でもない僕が美大のキャンパスに

フロリドで通学できたのは、まあ、忘れられない幸福な体験でした。

 

僕にとって、フロリドは、まさに修理地獄とオープンドライブ天国の

を体現した迷車だったわけで、

見掛け倒しでもよいから、デザインセンスの良いクルマに乗りたい病の原点かも

しれません。

 

あー、もう一度乗りたいなーWWWWWW

(がんばれば4人乗れるというのは、かなりポイントが高いと思います。

両手に花ですよ!

フェアレディ―1500が3人乗り(後席は横向き)というのも、ポイント高く

完全なツーシータは案外不便)