最近、海外の紛争で電気代がどんどん上がっていくんだけど

 

理由や原因今後の対策について解説します。

 

2022年6 月 30 日8 月2 日、ロシア政府は遂にサハリン 2 の権利・義務を移管する新たなロシア法人の設立に関する政府令を発表した。新ロシア法人「サハリンスカヤ・エネルギヤ」

 

ロシアから天然ガスが入らなくなるとどれだけ電気代が上がるの?


 

こんにちは、成功電気の今井です。

愛知県北名古屋市で住宅の電気設計を20年ほど続けています。
主に住宅の蓄電池、太陽光発電、V2Hやスマートホームの

設計施工を500件以上実施しています。

 

 

もくじ

サハリン(樺太)の天然ガス事業とは

サハリン2の現状

エネルギーのコストについて

電気代について

エネルギー政策、政治について
まとめ



 

サハリン(樺太)の天然ガス事業とは

 

サハリンとは、ロシア連邦の東に位置していて

日本の北海道の北、別名「樺太」日露戦争後南樺太は日本領でしたが

第二次世界大戦後北方四島と合わせ旧ソ連領となっています。

 

30年前に天然ガスの調査をしたところ、点々と埋蔵されていることが確認されました。

 

イギリス・日本・ロシアの企業が出資し、開発計画が立上り
サハリン1プロジェクト・サハリン2プロジェクトとして、1990年代から生産プラント・パイプラインなどの建設が進められています。

サハリン1
ロシア・サハリン島北東沖海上


サハリン2

サハリン州北東部沿岸に存在する石油および天然ガス鉱区と関連する陸上施設の開発プロジェクト
シェル、三井、三菱の所有するサハリン・エネルギー社は2002年の上半期に約90億ドルを投資し

世界最大規模のLNGプラントを建造しました。

その他6か所のプロジェクト計画は存在していましたが採掘に至らりませんでした。

 

 

漫画「ゴールデンカムイ」著者 野田サトルの舞台ともなっています。
一説にはアイヌ語でこの島を「カムイ・カㇻ・プㇳ・ヤ・モシㇼ 」
アイヌ語で「神が河口に造った島」を意味しています。


ロシア・サハリン1プロジェクト
サハリン石油ガス開発株式会社(SODECO)へ出資
SODECO(30%/当社Net比率4.59%)

 

 



サハリン2の現状

2009年3月29日液化天然ガスの出荷が始まりました。

ロシアのウクライナ侵攻の影響により


サハリン2の運営会社であるサハリンエナジーの株主は

ロシアのガスプロム(50%プラス1株)

英エネルギー大手シェル(27.5%マイナス1株)

三井物産(12.5%)

菱商事(10%)

となっていましたが

三井物産と三菱商事「サハリン2」の資産価値を見直して減額したことを明らかにし

両社合わせてことし3月末の時点と比べて、2100億円余りの減額

三井物産は2022年3月期にもサハリン2の資産価値を441億円減額し、三菱商事も同様に減額。

三井物産は2日、ロシアで参画する液化天然ガス(LNG)「サハリン2」開発事業などで、6月30日付のロシア大統領令を踏まえて新たに投資価値を1366億円減額した。投資残高は902億円。

三井物産902+1366+441=2709億円

2022年2月28日、英蘭シェルがロシアによるウクライナ侵攻に抗議する形でサハリン2を含むロシアでの全事業から撤退することを表明

 

2022年8月5日、運営会社サハリンスカヤ・エネルギヤが立上り、運営を開始

 


2024年10月5日 石油サービス・設備大手の米ベーカー・ヒューズは極東ロシアの資源開発事業「サハリン2」メンテナンス関連のサービスを提供しないことを表明

 

2025年現在 日本勢は三井物産が12・5%、三菱商事が10%の出資を維持しつつ

ロシアのガスプロム残りの株式を所有しています。

 

 

 

エネルギーのコストについて

 

2005年7月14日にサハリン・エナジーは総事業費が当初の100億ドルから200億ドルに倍増すると発表
200億ドル=130円換算で2.6兆円の総工費
そのうち日本企業が22.5%の権益を持っているため

ピルトン-アストフスコエ-A プラットフォーム(モリクパック、PA-A)原油日量90000バレル、ガス170万立方メートル
ルンスコエ-A(Lun-A)天然ガス5000万立方メートル、日量5万バレルの液体(水とコンデンセート)と1万6000バレルの石油を生産する能力
ピルトン-アストフスコエ-B プラットフォーム(PA-B) 原油日量7万バレル、ガス280万立方メートル
3事業所合計 原油 9万+1.6万+7万=17.6万バレル  天然ガス170+5000+280=5450万㎥
https://miraiz.chuden.co.jp/business/electric/contract/fuelcost/unitprice/__icsFiles/afieldfile/2022/07/29/nen_price_202209_1.pdf
2022年9月分は5.06円
天然ガス101844円/t
原油88732円/kl
換算値参照東京ガスHP https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/library/pdf/investor/ig1000.pdf
1t≒天然ガス1,220m3

1トン≒原油1.2kℓ=原油7.4バレル=6.17バレル/kl
から、単純に計算すると(精製時損失など含まず)
天然ガス 5450万÷1220=44672t×365×101844円=1兆6300億円
原油   17.6万÷6.17=2.85万kl×365×88732円=9230億円
年間2兆5000億円の生産量があることになります。
販売価格から原価計算を20%として、5000億円とすると
天然ガス貯蔵コスト 2500億円
天然ガス輸送コスト 2000年代ごろで約半額が輸送コストとなっていた。天然ガス8000億円+原油4500億円=1.25兆円
天然ガス販売コスト 電力販売では20%の利益が確定(その他設備コストは別で清算されている)5000億円
人件費及び施設管理費など
タンカーによる輸送コストは100 万 btu(MMbtu)当たり 0.5~1 ドル 25㎥=1mmBTUとすると

このように計算すると、原材料コストが上昇してはいるが、輸送コストは燃料費に占める割合が大きくないためインフレの影響は受けにくいため
利益が相当出ていることは推測が可能
サハリン2では、想像以上に利益が上がり始め、その内容に目を付けたロシアが横取りしてきたと考えるのが納得感が高い
13年間生産が続き、燃料価格高騰から
投資比率12.5%(年間5000億円の生産量なら625億円の売上の三井物産は2022年現在でも減価償却残が2709億円)
総工費2.6兆円で毎年5000億円の売上→6年でペイ(現状ではもっと早くペイ可能)
こう見ると、エネルギービジネスは採掘で当たるとめちゃくちゃ儲かることが分かりました。

"2020年9月では30250円だったLNG(天然ガス)が
2021年11月には84510円と3倍近く上昇しています。"
サハリンから日本と輸送距離も近く、採算が合いやすいが、別の場所では問題かもしれない。

https://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/1070.pdf

"天然ガスの輸送にかかるコストは、パイプラインと LNG では 3,000km から 4,000km で
逆転するとの試算がいくつもあり(IEA 「Natural Gas Transportation」など)、一般にそ
う認識されている。つまり、3,000km まではパイプラインが安いが、それ以上距離が伸び
ると LNG が有利ということである。ただし、パイプラインを陸上に埋設するか海底か、あ
るいはパイプの径によりこの数字は違ったものとなる。"

輸入するエネルギーの場所により、コストが変わることが分かります。
そう考えると、サハリン2の場所は東京から1800kmとその他の場所と比較しても3倍以上近くコストが削減可能となっています。

 

 

電気代について

 

中部電力 2022年4月分電気料金の燃料費調整について

2020年9月では30250円だったLNG(天然ガス)が
2021年11月には84510円と3倍近く上昇しています。

 

天然ガスの商流は、川下からたどると

電気小売事業者 中部電力ミライズの場合

火力発電会社  JERA 

天然ガス流通  三井物産、三菱商事 

天然ガス生産  サハリン・エネルギー社

となり、今回生産会社が入れ替わるわけです。

 

 

天然ガスのスポット価格(USドル/百万BTU)は2018年から2020年ごろまで2ドルから3ドルで推移

2021年後半から4ドルを突破し、2022年5月に8ドルまで上昇しています。

 

9電力合計で年間3000万トンの調達、国内利用の約60%

ロシアからの天然ガス(LNG)輸入は全量8055万tの7.9% 

 

サハリン2のLNG生産量は年1000万トン。このうち日本は約600万トンを輸入


中部電力は27日、ロシアの液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン2」からの調達が途絶えた場合の影響を示した。短期契約のスポット市場から割高なLNGを調達することで経常損益が年500億円ほど悪化する。

1t≒天然ガス1,220m3=48.8mm(百万)BTU

48.8mmBTU×1040円(8ドル、1ドル130円)=50752円

48.8mmBTU×330円(3ドル、1ドル110円)=16104円

600万t×5万円=3000億円

600万t×1.6万円=960億円

 

サハリン2の長期契約がスポット契約と同等となる場合、2倍のコストアップとなる予測があり

つまり、1t5万円のスポット価格の半分、2.5万円となります。

とすると、差額は1500億円となります。

中部電力はJERAの27.3%販売先なので、差額1500億円のうち409億円となります。

中部電力の仕入れがJERAのスポット価格から20%利益を乗せた分となります。

 

この価格高騰が電気代に及ぼす影響

中部電力の年間販売電力118,300,000,000kwh(2018年度)

売上3兆円=25.36円となります。
 

アラビアニュース

 

 

 


エネルギー政策、政治について


岸田首相は3日の東京都内での街頭演説で

「ロシア産石油は今の半分程度の価格を上限とし、それ以上では国際社会で買わない仕組みをつくる」

と述べていた。

これを受け、メドベージェフ氏は

「市場の石油は大幅に減り、価格もはるかに高くなるだろう」

とけん制。日本はロシア産の石油やガスを得られなくなり、サハリン2の参加もなくなるとどう喝した。

 

 

岸田首相がリップサービスをしたことで国益が阻害されたことになります。

ロシアも日本を注視しており、首相の言動の上げ足取りを探している中で

相手を見くびらないことを願っています。

 

サハリンスカヤ・エネルギヤ

 

 

海賊と呼ばれた男

 

計算してみると、実際の燃料調整費の単価はスポット価格がそのまま反映されており

私たちの電気代への影響はないように見えます。

しかし、中部電力の発表では500億円の損失が出ると表現しています。

燃料価格が上昇する場合、本来は燃料調整費を上げて中部電力的には販売価格が上がってしますと表現するはずです。

つまり、サハリン2の長期契約で安価に仕入れた天然ガスは中部電力の収益になっている

と仮定できます。

 

たしかに、仕入れ価格を努力して削減すると自社の売上が減少してしまう会社形態となっていると

社会の利益と会社の利益のベクトルが合わなくなります。

 

というわけで、ロシアが天然ガスを輸出しなくなっても電気代は変わらない

ことは分かりました。

しかし、電力会社が電気代単価を上げ、会社の損失を補填する可能性はあります。

実際に東北電力は電気代単価の切り上げを国に申請しました。

 

 


まとめ


このように、海外に拠点を置くエネルギーの生産は、様々なリスクにさらされます。
しかし、国内にエネルギー拠点を置く設備はこういったリスクの影響を受けません。

過去には軍艦島などで生産されていた石炭はSDGsではNG
再生可能エネルギーである太陽光発電を普及させることに全力投球です
今後20年は安泰です。
2009年から10年固定買取、2012年から20年固定買取がスタートし、最悪でも2032年から太陽光発電の自由買取が大規模に始まります。
2020年までは20年の固定買取が続いたということは、2040年までは太陽光発電の自由買取需要が増え続けることになります。

エネルギーのベースは、原油や天然ガスが多く、その価格がその他のエネルギー価格に影響します。
再生可能エネルギーの環境価値を、その他の原油や天然ガスとの差別化→2円程度がJクレジットなどの環境価値取引によるコストで転換可能
各エネルギー原価が10円前後であれば、2円でも20%の影響力となりとても大きい効果となります。
原発は、廃棄物処理コストや開発費、安全対策費などが別予算となっています。原材料費だけで原油や天然ガス、再エネなどと比較すればメリットがあるように見えますが
それはただ、計算の根拠となるベースがおかしいだけです。
水力発電は日本の環境を最大限活かせるのでこれから増やすことが国益となりえます。

 

8月5日から1 カ月後となる9 月 5 日から 8 日に具体的な結論が出る予定です。

 

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

(短報)ロシア:サハリン 2 に関する新ロシア法人設立の政府令を発出より

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/009/433/202208_j_ru_recenttopic_GovernmentalDecreeonEstablishingNewRussianEntityforS-2.pdf