埼玉が3年ぶり2度目の制覇!
        最終区、エースで逆転は予定通り!

 

 まさか最終7区まで、勝負がもつれるとは……。
 もとより混戦が予想されてはいた。しかしアンカー結着というのはまったく想定外だった。
 6区の中学生区間を終わってトップは前回の覇者・長野、2位は茨城で10秒差、3位の神奈川も10秒差、4位は埼玉で13秒差、5位は千葉で4秒差……。トップから5位までが14秒以内につけている6位福島とは41秒もはなれているから、もはやこれは圏外である。最終区は最長区で13㎞だから、上位5チームにはいづれも優勝のチャンスがあった。
 逃げる長野は関颯人(東海大)追う2位の茨城は茨城・出口和也 (旭化成)、3位の神奈川は越川堅太(神奈川大)、4位の埼玉は設楽悠太、5位の千葉は鈴木塁人(青学大)という顔ぶれ、いわば実業団のトップ・設楽悠太と箱根駅伝のスターたちとの対決という構図になった。
 設楽悠太といえば、マラソンを視野においたロードでは、いまや日本でも1、2を争う実力者である。学生3人のうち長野の関颯人は学生ではトップクラスのスピードランナーである。その関が逃げて、設楽が追いかける。関のスピードがどこまで通用するかが見どころで、最後の最後で願ってもない興味津々の局面がやってきた。

 設楽の動きは軽快だった。タスキを受けると千葉の鈴木とともに追いあげ、茨城の出口、神奈川の越川をとらえ2位集団になったが、1.9㎞では神奈川・越川を押さえて2位に浮上、トップをゆく長野の関との差はわずか3秒になっていた。1㎞のペース2:40台で追っかけ2.4㎞でとうとう関をとらえてしまった。
 設楽と関はしばらく並走、3㎞では先頭集団をなし、3位・千葉の鈴木、4位・神奈川・越川。そこからやや遅れて5位・茨城・出口、6位福島の住吉秀昭(国士大)、7位集団に福岡・高橋尚弥(安川電機)、山口・野田一輝(順大)がつづくという形勢になっていた。
 先頭集団に動きが出たのは5.2㎞である。埼玉・設楽が仕掛けるというよりも長野・関がついてゆけなくなった。その差はじりじりとひろがり、関は置いてゆかれたのである。設楽と関の力の差は歴然としている。箱根のスターであり、名うてのスピードランナーといわれる存在でも、遊ばれてしまった。マラソン練習をしている現在の設楽はスピード練習をひかえているだろうが、それでもまるで刃が立たない。レベルのちがいを見せつけられた感ありというところである。
 抜け出した設楽を追う者は誰もいない。かくして埼玉・設楽悠太は中盤から独り旅、楽々とゴールまでタスキを運んでいったのである。

 

 平和記念公園をスタート、気温は12度で風もない。絶好のラン日和で第1区は幕あけた。群馬の大沢佑介 (樹徳高)が引っ張る先頭集団、ややスローの展開ではじまった。2㎞になると熊本の井川龍人(九州学院高)、千葉・飯田貴之(八千代松陰高)も前に出てくる。中間点の通過は10:03、4㎞になると集団はタテ長になり、千葉の飯田を先頭に青森の田澤廉、長崎の扇育、熊本の井川、福島の半澤黎斗、鹿児島の安藤大樹などがつづいている。
 5㎞では青森の田澤、熊本の井川が先頭に出てひっぱり、福島の半澤、大阪の呑村大樹、新潟の岸本大紀らがつづき,集団は16人ぐらいになる。6㎞になるとタテ長になり田澤と半澤がトップを争い、後ろには長野の松崎咲人、福島の半澤、茨城の湯原慶吾、大阪の呑村、宮崎の田中康晴らがつけ、およそ9人となる。
 残り600で井川と田澤がするも、松崎、半澤も追ってきて、残り400で井川、田澤が競るところ長野の松崎がやってきたが、井川が振り切ってタスキリレーした。
 トップ通過は熊本、2位は連覇をねらう長野が4秒差でキープ、3位は福島、4位は青森、5位は茨城とつづき、ここまでがトップから10秒差、候補の一角・埼玉は14秒差の10位、千葉は19秒差の13位とやや出遅れた。

 

 2区にはいっても熊本はリズムアップ、福島、茨城、青森、長野、宮崎が2位争いをするなか、鶴川正也 (託麻中)がトップを独走、2位にやってきた茨城との差を10秒にひろげた。快走したのは福岡・石田洸介(浅川中)で15人抜きで一気に7位まで順位をあげてきた。
 2区を終わって、長野はトップの熊本から16秒遅れの3位と好位置をキープ、埼玉はトップから21秒遅れの6位、千葉は29秒遅れの8位につけていた。

 

 3区は大学生・一般の区間だが、上位の順位は変転として大きく動いた。
 先行する熊本の神林勇太(青学大)を茨城の森田歩希(青学大)が追い、3.2㎞で並走状態となり、3位以降は長野、福岡、千葉、埼玉、青森、福島、大阪が集団となって追ってくる。3.8㎞ではその3位集団に神奈川、新潟、山口が追いついて10人mの大集団となる。
 4㎞すぎで森田がトップに出て、神林を引き離しにかかる。3位集団からは福島の遠藤日向、千葉の松枝博輝、山口の田村和希が抜けだして追い上げてくる。トップ集団と3位集団との差はじりじりと詰まってくる。
 先頭集団に動きが出たのは6.8㎞、茨城・森田がしかけ、熊本・神林との差をひろげてトップで中継所にとびこんだ。後続はのこり500mで遠藤と田村が抜け出した。山口の田村はここで14人抜きの区間賞である。
 かくして3区終了時点では茨城がトップ、3秒遅れで福島、5秒遅れで山口、11秒遅れで千葉、13秒遅れで熊本とつづき、埼玉は19秒遅れの6位につけたが、長野はここで27秒遅れの11位まで順位をさげた。

 

 4区、5区は高校生区間だが、ここで強さを発揮したのが長野であった。
 4区にはいると0.5㎞で福島の芳賀宏太郎(学法石川高)がトップ茨城の鈴木聖人(水城高)をとらえ並走、後ろは山口・吉井道歩(西京高)、千葉・安田博登(市船橋高)が3位集団。5位に熊本・佐藤映斗(九州学院高)さらに大阪、埼玉、群馬、福岡もつづく大混戦。2㎞過ぎの折り返しから茨城・鈴木がスパート、トップを死守して2位との差を21秒とひろげた。埼玉・宮坂大器(埼玉栄高)が2位に押し上げ、大阪・小島慎也(大阪高)が3位浮上。区間賞は7人抜きの本間敬大(佐久長聖高)で長野を4位まで押し上げてきた。


 上昇ムードの流れに乗った長野は5区の中谷雄飛(佐久長聖高)はスタートして1㎞で2位に浮上、トップの茨城・片根洋平(水城高)との差を詰めてゆく。3位以降は、大阪の葛西潤(関西創価高)、埼玉の早田祥也(埼玉栄高)、福島の中沢雄大(学法石川高)、神奈川の鎌田航生(法政二高)、千葉の佐藤一世(八千代松陰高)、山口の仲山大輝(西京高)、福岡の浜地進之介(大牟田高)、熊本の古川隼(千原台高)など、大集団をなしていた。
 中間点でトップの片根と中谷の差は10秒、その後も差はじりじりと縮まり、中谷が片根をとらえたのは5.8㎞、片根にはもう中谷に追いすがる余裕はなかった。差はひろがる一方で中継点では2位茨城との差は29秒となっていた。3位以降大混戦、38秒差で神奈川、4位には41秒差で千葉、埼玉は46秒差の5位であった。6区はもっぱらトップに立った長野と埼玉のタイム差が焦点になった。

 

 6区にはいると 長野の越陽汰(川中島中)がトップ。2位をゆく茨城の亘理魁(松岡中)、埼玉の篠木珠良(吉川南中)に、神奈川の安沢駿空(久木中)、千葉・鶴元太(坪井中)らが追いついて3位集団となって追撃をはじめる。
 集団で競り合う展開がよかったのか、長野と後続との差はひろがることなく、逆に大幅に縮まってしまった。とくに埼玉の篠木珠良が踏ん張った。長野との差が46秒もあって、危険水域に接近していたが、ここで踏ん張って区間賞、4位ながら長野との差を13秒にした。埼玉を上げ潮ムードに乗せたのである。繋ぎの区間だが、6区中学生がスーパーエースが活きる展開を演出した。この段階で埼玉の制覇は濃厚となった。
 逆に連覇を狙った長野は4区と5区で埼玉に決定的な差を奪えなかったのが痛かったということになる。

 

 駅伝シーズンは終わり、次の注目は2月25日の東京マラソン。日本人招待選手になっている設楽悠太、駅伝も走り、マラソンも走る。まさに日本の実業団システムが生みだした申し子である。彼はまちがいなく大迫傑を意識して走ることだろう。大迫は駅伝中心の日本の実業団に背を向けて独自の途をあゆんでいるランナー。そういう意味では2人は好対照をなす。
 先の福岡国際で大迫がマークした2時間07分19秒に、設楽はどこまで迫れるか。2人のランナーとしてのあゆみを参照しながら、設楽の東京マラソンのレースぶりをしかと見まもりたい。

 

◇日時 2018年01月21日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:くもり 気温:11.0度 湿度:45.7% 風:東 0.8m(スタート)
◇埼玉(橋本龍、分須尊紀、牟田祐樹、宮坂大器、早田祥也、篠木珠良、設楽悠太)
◇公式サイト:http://www.hiroshima-ekiden.com/
◇総合成績:http://www.hiroshima-ekiden.com/information/pdf/recordlist23.pdf
           :http://www.hiroshima-ekiden.com/information/pdf/record23.pdf
◇NHKロードレース:http://www.nhk.or.jp/rr/zen-dan/#/
◇区間記録:http://www.nhk.or.jp/rr/zen-dan/#/resu