旭化成、2年連続、史上最多の23V
  磐石の布陣で3強対決を制する 

 

 別名・ニューイヤー駅伝と呼ばれる本大会は、先ごろテレビドラマで人気をああつめた『陸王』の舞台になった駅伝である。
 駅伝レースでは頂点をなす大会だが、そのわりに人気はいまひとつで、翌二日からはじまる箱根駅伝の露払いのような位置づけでしかないのは、どうしたわけなのだろう。
 日本の男子マラソン・長距離が最近では世界の3流になりさがり、本大会がスター選手を生みだしていないせいもあるだろう。
 そういう観点から見て、今大会どうなのか? 
 東京五輪の2年前なのにいぜんとして目玉になるような注目選手は見当たらないが、駅伝ウオッチャーの目からすれば、一縷の望みをかけるランナーがいないわけではない。
 遠藤日向(住友電工)、高校卒業したばかりの19歳のルーキーである。高校時代から敵なし、ラスト勝負の強さは無類で、すでにして日本でもトップクラスの呼び声が高いのである。
 長距離男子の本流は、高校から大学へ進んで、箱根駅伝、それから実業団にひろわれて本大会でデビューするというプロセスをたどる。たとえば今大会の優勝候補ナンバーワンの旭化成なんかは、かつての箱根のスター選手がずらりと顔をそろえている。
 遠藤はあえて数ある大学駅伝からの誘いを袖にして実業団、それも旭化成やトヨタなど強豪チームではなく、渡辺康幸のいる住友電工をえらんだ。かれの眼中にあるのは東京五輪である。大学にゆけば東京五輪のときはまだ在学中、箱根駅伝と東京五輪の両方を背負わなければならなくなる。箱根駅伝など眼中にないというふてぶてしさに魅力があり、久しぶりに現れた逸材である。

 

 第1区にその遠藤日向が出てきたのである。
 スタートしたまもなく前に出てきたのは、連覇をねらう旭化成の茂木圭次郎であった。1㎞=2:48の入りで集団を引っ張り、Hondaの田口雅也、富士通の佐藤佑輔、中国電力の藤川拓也らが後ろにつけた。住友電工の遠藤日向も集団の前のほうに付けた。
 3㎞をすぎてペースは安定して横ひろがりの集団をいぜんとして旭化成の茂木がひっぱって、たんたんと進む。富士通の佐藤、中国電力の藤川、SUBARUの阿久津圭司が前に出てくる。
 5㎞になってSUBARUの阿久津がトップに立ち、その後ろに旭化成の茂木、富士通の佐藤らが続くが、集団が少しずつ縦長になり、先頭集団は2つに分かれはじまる。
 6㎞ではSUBARUの阿久津が先頭のとびだすが、DeNAの上野裕一郎ら遅れはじめた。8㎞になると、先頭集団はヨコ長になり、トヨタ自動車の藤本、SUBARUの阿久津、そして住友電工の遠藤らが前に出てきた。
 レースが動き出したのは9㎞たりからで、中国電力の藤川がスパート、先頭集団は16チームに絞られ、愛知製鋼の高橋流星、トヨタ自動車の藤本らが追走してくる。10㎞になると愛三工業の山口浩勢が先頭に出てくる。コニカミノルタの宇賀地強、日清食品の小野裕幸、Hondaの田口雅也らがこぼれていいった。
 11㎞になって中国電力の藤川がスパートをかける。住友電工の遠藤、トーエネックの服部弾馬が反応して、三つどもえのスパート合戦となる。最後は服部と遠藤の争いとなったが、遠藤の瞬発力が勝った。2位にはトーエネックの服部、3位にはひらまつ病院の梶原有高であった。旭化成は10秒遅れの9位、トヨタ自動車は11秒遅れの10位と好位につけたが、Hondaは30秒遅れの21位、コニカミノルタは44秒遅れの24位、MHPSは47秒遅れの25位、DeNaは57秒遅れの31位と出遅れてしまった。

 それにしても……。遠藤日向は期待にたがわぬ走りで驚嘆した。デビュー戦でいきなり実業団のトップたちを力でねじ伏せてしまった。渡辺康幸ののもとで、どれほど大化けするか、楽しみである。

 

 インタナショナル区間となる2区になると本命の2チームにつばぜり合いになった。まずは10位発進のトヨタ自動車のコシンベイがトップに立ち。その後ろから旭化成のキャプシスがやってくる。2人が抜けだして、はるか後方から中国電力のカマイシ、富士通のマイナが追ってくる。5㎞ではトヨタ自動車のコシンベイと旭化成のキャプシスがトップを並走。6秒差で愛三工業のケモイ、西鉄のキプケモイ、富士通のマイナらが3位集団で追ってくる。
 トップ争いに結着がついたのは7㎞すぎだった。旭化成のキャプシスがスパートをかけると、トヨタ自動車のコシンベイとの差はじりじりひろがっていった。
 中継所では旭化成のキャプシスがトップでタスキリレー。6秒差でTNのワウエルが2がやってきた。トヨタ自動車のコシンベイは3位で先頭とは7秒差。注目のDeNAのカロキは今回も区間賞の走り、18人抜きの13位までやってきた。

 

 3区にはいると旭化成の市田孝がリズムよく快走した。トヨタ自動車の田中が追いかけ、3位のNTNの小山陽平を、愛三工業の石川裕之、九電工の中村信一郎がつづき、その後ろから富士通の松枝博輝がやってくるという展開で、旭化成にとって、もうひとつのライバルHondaはまだやってこない。
 市田はいぜん快調なペース、苦しかったのは2位のトヨタ自動車のほうで田中秀幸は3位集団の富士通の松枝、愛三工業の石川裕之らに追いつかれるしまつ。
 市田はその後も気分良く逃げて、後続との差をひろげ10㎞では2位にやってきた愛三工業の石川に19秒差とした。後ろの2位争いが熾烈になり、愛三、富士通に後ろからDeNAの高橋優太がやってきて集団となっていた。
 そんな2位争いを尻目に旭化成・市田は2位に32秒差をつけて4区のエース区間にタスキをつないだ。2位には富士通、3位は愛三工業、4位はDeNA、トヨタ自動車は37秒差の5位。Hondaはまだ先頭から1:32差の12位であった。

 

 本大会で最大のみどころとなったのは4区であった。
 旭化成のランナーは大六野秀敏、Hondaはハーフマラソン日本記録保持者の設楽悠太である。設楽がどこまで追えるかが注目の的となった。
 1:32秒遅れの12位でタスキをうけた設楽の追い上げはすさまじかった。2㎞で6位集団にに追いつき、10㎞では2位集団に追いついた。富士通の横手健、愛三工業の鈴木洋平、DeNAの室健太塚、トヨタ自動車の宮脇千博と5人の集団で前を追ってゆく。13㎞になって設楽は2位集団からするすると抜けだした。大六野との差はじりじりと詰まり、15㎞で29秒、17㎞では20秒差になる。追われる大六野も踏ん張っていたが、21㎞では10秒差となった。激しい両者のせめぎ合い、設楽が追いすがり、両者はほぼ同時にタスキをリレーした。トヨタ自動車は26秒遅れの3位であった。
 ひたすら前へ前へと身体をはこんでゆく設楽の快走、最後は懸命に粘る大六野がしのぎきると思われたが、あきらめずに最後まで追った姿はみごとであった。設楽と大六野の争いにしぼられた4区だったが、後のほうではMHPSの井上大仁が快走、区間賞はとれなかったものの13人抜き、チームを7位まで押し上げてきた。

 

 5区にはいると旭化成の村山謙太がハイペースですっ飛ばした。Hondaの山中秀仁との差をあっというまにひろげてしまう。その後もその差は少しずつひろがり、山中は離されまいとけんめいに堪えたが、結局、最初の猛ダッシュしたときの差が最後にモノをいってしまった。村山のこの頭脳的な作戦が功を奏して、ひとたびHondaに傾きかけていた勝負の流れは、ふたたび旭化成の手中に落ちた。
 5区を終わって1位は旭化成、2位はHondaでその差は14秒、3位はトヨタ自動車で1:40とひろがった。

 

 5区で流れをよびもどした旭化成は6区の市田宏がハイペースで快走、もう2位のHondaに追わせなかった。その差はひらく一方で、2位のHondaとの差は1:03もの大差、逆にHondaはトヨタ自動車に追われる展開となった。
 旭化成の7区アンカーは鎧塚哲哉、5000m、10000mで歴代2位の記録ホルダーである。追うHondaは上野渉、トヨタ自動車は早川翼だったが、勝負はすでに決していた。イニシャティブは鎧塚の手中にあり、あとはゴールまでたんたんとタスキをはこんでゆくだけだった。
 
 終わってみれば、やはり旭化成は強かった。
 4区間で区間賞をもぎとり、2位に2分以上の差を付けての圧勝である。18年ぶりに優勝した前回よりもさらにパワーアップされていた。もともと旭化成は外国人選手をもたないチームだったが、今回は初の外国人選手・キプヤティチで2区からトップに立った。近年になって宗旨替えして箱根駅伝のスターたちを大量にかっさらっていったが、実業団選手としてかれらが力をつけ、さらにウイークポイントであった外国人特区への対応もできあがった。これも大きかった。
 2位に終わったHondaはそこそこ肉薄したものの今回も勝てなかった。このチームは力がありながら、いつもどこかでポカをやる愛すべきチームである。今回は1区で21位と出遅れたうえに、2区、3区でも区間2桁順位、これでは勝てない。
 3位のトヨタ自動車は各ランナーともに安定していたが、いまひとつ爆発力がなく、競り負けてしまったという感ありである。
 シード権争いも激しかった。最終7区の14㎞過ぎまで、コニカミノルタ、DaNA、MHPS、安川電機、愛三工業,九電工など6チームが6位集団をなしていたが、残り600mからのスパート合戦でDeNAの木津晶夫、コニカミノルタの神野大地、MHPSの松村康平が抜け出した。住友電工は最後に11位に終わったが、遠藤日向で1区を制するなど見どころをつくった。前半は上位につけていた愛三工業とともに大健闘であった。
 意外だったのは7位でなんとかシード権だけは守ったものの7位に沈んだコニカミノルタ、1区の宇賀地強で出遅れたのが痛かった。日清食品グループはなんと15位、今回はまったく良いところがなかった。
 とにかくも全般的に見て旭化成の強さだけが際立った大会だった。2人の外国人加入で選手層も分厚くなり、まさに黄金時代が到来である。実業団男子駅伝は、当分の間、旭化成を中心にまわってゆくのだろう。

 

◇ 日時: 2017年 1月 1日(月=祝) 9時00分 スタート
◇ 気象 天気:晴 気温5.7 湿度53% 北西2.1m
◇ コース:群馬県庁スタート~高崎市役所~伊勢崎市役所~太田市尾島総合支所~太田市役所~桐生市役所~JA赤堀町~群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇旭化成(茂木圭次郎、K,A.キャプシス、市田孝、大六野秀畝、村山謙太、市田宏、鎧坂哲哉)
▽TBS公式サイト:http://www.tbs.co.jp/newyearekiden/
▽総合成績:http://www.jita-trackfield.jp/jita/wp-content/uploads/2018/01/2018NewYear_Result.pdf