神奈川大が20年ぶり3度目の制覇!
 最終区でエース・鈴木健吾が逆転!


 勝負所の6区、7区、8区……
 ともに鮮やかな濃いブルーである。紫紺とでもいおうか。奇しくも目に染みいるようなブルー系ユニフォーム同士の熾烈な争いとなった。
 東海大と神奈川大、今シーズンからユニフォームを変えた東海大は「東海ブルー」と呼んでいるそうな。神奈川大は「プラウドブルー」で、スクルカラーだという。レース後半の三つの区間は両校が追いつ追われつの叩き合いとなり、最後まで目放しできなかった。
 出雲、この全日本と箱根の前哨戦を観て、今シーズンの大学駅伝はいつになく混戦ムードの様相である。王者・青山学院をみるに,昨年ほどの圧倒的な強さは感じられず、出雲を制した東海大学も、いまひとつもどかしい。出雲で7位に甘んじた神奈川大に、やすやすと寝首をかかれるようでは、なんとも心もとないものがある。出雲で善戦して底力のあるところをみせた神奈川大の快挙によって、東洋大や駒澤大もにわかに勇気百倍、「やる気」が出てきたにちがいない。……

 

 レースはハナから波乱含みだった。
 1㎞通過が2:51、3㎞通過が8:38……。第1区にしてはいつになくスピード駅伝の様相となった。3㎞をすぎて東海大の鬼塚翔太が先頭に出てきたのは予定の行動だったのだろう。後ろは東洋大の相澤晃、第一工業大のG・ギチア、全日本選抜のM・ムイル、早稲田の太田智樹らがつづき、早くも縦長になっていった。
 5㎞で先頭集団は13人にしぼられ、ここでM・ムイルが集団から抜けだした。鬼塚、太田らは追ったが、青山学院大の中村祐紀はうまく反応ができなかった。太田がムイルを追いかけて抜けだし、鬼塚を中心に青山の中村祐紀らもふくめて9人が第2集団となる。
 7,6㎞、第一の異変がおきた。なんと青山の中村が第2集団がこぼれ落ちていったのである。
 11㎞をすぎて、第2集団のなかから中央学院大の大森澪、東洋の相澤がペースアップ、12.5㎞で相澤はムイルに追いついてトップ集団を形成する。だが、異変その2、ここで東海の鬼塚がおかしくなった。第2集団から置いて行かれたのである。
 13㎞をすぎてトップ争いは、にわかに激しくなった。トップの相澤にムイル、駒澤大の片西景、神奈川大の山藤篤司、早稲田の太田がからんできたのである。
 14㎞ではムイルが先頭に立つも、その後ろにいた山藤、片西、太田、相澤らが追いついてくる。5チームによるデッドヒートとなったが、残り200mで相澤がラストスパート、そのまま先頭でたすきリレーした。2位は駒澤大の片西で1秒遅れ、3位は早稲田の太田で4秒遅れ、4位は神奈川大の山藤で5秒遅れ、5位は全日本大学選抜のムイルとつづいたが、候補の一角・東海大の鬼塚はトップから35秒遅れの8位、青山の中村はトップから1:22秒遅れの10位と大きく遅れをとった。2強といわれた青山、東海が出遅れて、レースはにわかに波乱含みとなったのである。

 

 2区にはいってトップ争いは熾烈になった。青山学院、東海といった主力が後手をふんだので軸がみつからない。早稲田大の安井雄一、東洋大の渡邉奏太、駒澤大の工藤有生、神奈川大の大塚倭が集団を形成、その後ろに中央学院大の新井翔理が追うという展開になった。その後ろからは青山学院大の田村和希が追いかけ、はるか後方では大きく出遅れた順天堂大の塩尻和也が猛然と追う上げてくる。
 容易にくずれなかった4人の先頭集団は変化が兆したのは8㎞すぎだった。東洋大の渡邉がペースアップで先頭に出る。駒澤の工藤、神奈川大の大塚が追いかけたが、ここで早稲田大の安井は遅れ始めた。後方では青山の田村と東海の塩澤が6位をはげしく競っていた。11㎞になると東海の塩澤と青山の田村が5位の中学の新井に背後に迫り、12㎞では塩澤が前に出る、だが青山の田村が勝負所で一押しが利かなかった。塩澤に離されてしまい、ここでも後手にまわってしまった。
 先頭争いは東洋の渡邊が快調、後続を引き離してトップ通過。2位は駒澤大・工藤で13秒遅れ、3位は神奈川大で32秒遅れ、4位早稲田大で35秒遅れ、5位には東海大がやってきて50秒遅れ、6位は青山学院大で57秒遅れ、22位発進の順天堂大の塩尻は9人抜きで13位までやってきた。青山の田村は東海に迫りながら、とらえることが出来ず、区間賞をとったものの青山を勢いに乗せる走りとはならなかった。

 

 3区に入っても東洋大はとまらなかった。
 西山和弥が追ってくる駒澤大の物江雄利を突き放した。
 後ろでは5位発進の東海大・館澤亨次が追ってきた、2.5㎞で早くも早稲田大の新迫志希、神奈川大の荻野太成をとらえて3位集団となって、駒澤の物江を追っかけ始めた。西山は区間新を上まわるペースでトップを快走、2位の駒澤・物江との8㎞で35秒まで開いてしまった。その物江を8.3㎞で館澤がとらえて2位に浮上するも,東洋ははるか先にいってしまっていた。
 3区を終わって東洋大が2位にやってきた東海大に31秒の差を付けてトップ。3位は駒澤で40秒差、4位は神奈川45秒差、5位は青山で1:04秒差とつづいた。青山は順位をひとつあげたもののトップとのタイム差は逆に開いてしまった。

 

 4区にはいっても東洋は快調であった。エース山本修二が逃げた。
 猛然と追う2位発進の東海大・關颯人に駒澤大の下史典が4㎞で追いつき、2位争いを繰りひろげる。だが5㎞で關はペースアップして下をふりきった。その下を青山学院の森田歩希が追ってくる。さらに後ろから神奈川の鈴木祐希がやってきて8㎞では青山と神奈川が並走状態となる。この4位集団が13㎞で、3位の駒澤・下とをとらえ3位集団となり,2位の東海・關に7秒差まで追いすがり、2位以下は大混戦となる。
 かくして4区も東洋大がトップ通過。後続の東海大に1:02者差をつけた。3位は青山学院で1;09差、4位は神奈川大で1;14差、5位は駒澤大で1:15差と2位~5位まではわずか13秒差でひしめきあっていた。

 勝負は後半の3区間に持ち越され、東洋の勢いがつづくかどうか。5区が大きな大きなポイントとなった。5区でも東洋が好リズムをキープすれば、おそらく優勝は見えてきただろう。だが、ここで、またしてももつれた。
 トップをゆく東洋・中村駆の後ろが風雲急を告げ、2位の東海大の湊谷春紀を青山学院大の下田裕太と神奈川大の越川堅太が追ってきて、5㎞では2位集団となり、東洋の中村を追い始めたのである。エース下田の登場で、青山学院がここで見せ場をつくるかと思いきや、その下田が6.5㎞で怪しくなった。左脚をひきずりはじめ、みるみる落ちていったのである。
 2位争いは湊谷と越川のマッチアップとなるも、7㎞すぎで越川がペースアップして湊谷をふりきった。越川は快調なペースで東洋・中村を追い、1分以上もあった差を10㎞では20病までつめた。すぐいしろには東海の湊谷の姿もあり、先頭争いはいぜん分からなくなってきた。
 5区の中継所では東洋大の中村がなんとかトップでたすきリレー。2位には神奈川大・越川がやってきて11秒差、3位は20秒差で東海大がつづき、途中失速した青山学院大の下田は1:03秒遅れでなんとかたすきをつないだ。5位は駒澤大、6位は中央学院大とつづいた。

 5区を終わって東洋、神奈川、東海が20秒差でひしめきあい、優勝争いはこの3校にしぼられた感があった。青山は頼みの下田が不発でここでも後手をふんだ。


 6区にはいると追ってきた東海大と神奈川大に勢いが出てきた。
 先頭は東洋大の浅井崚雅。2位は神奈川大の安田共貴、3位は東海大の國行麗生……。2.3㎞で安田がトップをゆく浅井をとらえ、3㎞では国行も追いついてきて並走状態となった。だがここで東洋大の浅井が遅れ始め、東海と神奈川の先頭争いとなる。遅れた東洋の浅井は後ろからやってきた青山の竹石尚人に追われ、その差はどんどんと詰まってゆく。とうとう8.4㎞で竹石は浅井をとらえて3位に浮上するも、前をゆく安田と国行との差はそれほどつまらない。
 トップ争いはラスト勝負となり,東海の國行が最後に前に出て、東海がはじめてトップでたすきリレーした。神奈川大の安田とはわずか1秒差。3位の青山学院大とは53秒差、東洋大とはは1:11差とひらいた。続いては駒澤大がやってきて、6位の中央学院大と7位の早稲田大とは45秒差であった。

 東海大の三上嵩斗がトップ、すぐ後ろに神奈川大の大川一成がぴたりとつけている。7区にはいって優勝争いはこの2校にしぼられた。


 この7区がレースの天王山……、三上も大川もそのことは十二分に承知していただろう。三上は逃げて、悪くとも30秒以上の差を付けたいところ。大川にしてみれば、アンカーのエース鈴木健吾がいるから、三上にくっついて行けばいい。どちらかというと大川は気楽で、三上にプレッシャーのかかる局面となった。
 大川は三上の後ろに、ぴたり張りついて離れない。そんな心理戦が7㎞までつづいた。三上は引きつけて置いて、後半のどこかで一気に突っ放す腹とみていた。予想通り三上は7.5k㎞でペースアップ、差はじりじりとひらいた。だが大川も懸命にくらいつく。残り1㎞でその差は10秒……。7区の両者のせめぎ合い、それが、このレースいちばんの見どころであった。
 7区を終わって東海大の三上がトップ。だが神奈川大の大川はわずか17秒差と踏ん張った。最終区を待たずしてレースのゆくえはほぼ結着していた。
 3位の青山学院大は先頭から1:06差、4位は駒澤大、5位は東洋大とつづき、6位は中央学院大と7位・早稲田大とは1:30差となり、シード権争いにもほぼ決着がついた。

 

 最終区にはいって追う神奈川大の鈴木健吾は1㎞通過が2:50、1~2㎞=2:46とゆったりとした入りで前をゆく東海の川端千都を追っていった。そして2.5㎞で早くも鈴木は川端の背後につき、3㎞すぎでトップに立ってしまった。あとは学生ナンバーワン・ランナーの独り旅であった。

 それにしても、鈴木健吾の走りは軽やかで リズミカル、空を切るような走りに目を奪われていた。昨年の箱根の走りも圧巻だったが、さらに今年はパワーアップしているようにみえる。東海の川端の走りが悪いというわけではない。だが、鈴木とならぶとすっかり色褪せてしまうのだ。
 なんとか故障せずに箱根を迎えて欲しい。おそらく2区に出てくるのだろうが、山梨学院大のニャイロとの直接対決を観たいものである。

 

 優勝した神奈川大は実に20年ぶりの制覇である。一時は箱根予選会の常連組にまで落ちたが、みごと復活を果たした。なんと出雲7位から大きな変わり身を見せた。区間賞こそ5区の越川堅太のひとつだけだが、2区をのぞいて全区間を区間5位までにおさめるという堅実ぶりが眼に付いた。前半で好位につけて、ムラなく走り、エースの鈴木健吾が生きる展開、勝ちパターンにもちこんだことが,最大の勝因だろう。先の出雲では鈴木を欠いていたが、その戦力の充実ぶりには目をみはるものがあった。
 出雲制覇の東海大学は今回、出雲の立役者である鬼塚と關を1区と4区の勝負所に配したが、鬼塚は8位と出遅れ、關も区間2位ながら不発に終わって、レース全体の流れを悪くしてしまったようだ。なんとか神奈川とのマッチアップにもちこんだのは、皮肉にも5区~8区に配した上級生たちだった。鳴り物入りの1~2年生はブレ幅が大きく、若さが露呈したというべきか、今回は凶と出たようだ。
 青山学院は3位に終わった。1区の出遅れがすべてだろう。2区の田村和希は区間賞、けれども5区の下田裕太に爆発力がなく、勝負所で踏ん張れなかった。終始、後手後手に回らされたままレースは終わってしまった。どこかチグハグな戦いぶりで不安を残した。地力のあるチームだけに、箱根でどのように建て直してくるか。原マジックのお手並み拝見である。
 4位の駒澤大、5位の東洋大はともに前半は健闘していた。とくに東洋大は1区の相澤晃の区間賞で一気に流れに乗った。2年生3人、1年生2人、3年生1人という4年生抜きで6区までトップを守り抜いた。距離が長くなれば、持ち味を発揮するチームだけに、箱根ではさらに上積みできそうな雰囲気である。
 駒澤は区間賞は6区の堀合大輔、ほかの全員が区間7位以内とクラなくまとめた。前半は東洋とともにレースを支配したのはさすが、伝統の力というものか。
 シード権争いは早稲田と中央学院が争っていたが、堅実性に勝る中央学院大が最後のひとつをもぎとった。早稲田は1区の太田の快走で前半は上位をキープしたが、中盤から後半にかけてブレーキが多すぎた。
 意外だったのは出雲4位の順天堂大である。1区で22位と出遅れのが大きかった。最終12位までもってくるのがやっとというのは少々さみしい結果である。
 終わってみれは関東の15校が上位を占め、それいがいでは立命館大の16位が最高というありさま。初出場の地元・皇學館大が京都産業大や関西学院大などを押さえて17位にやってきたのは大健闘ではないか。

 

 上位15校のうち明治をのぞく14校は箱根に向かうことになるが、出雲、全日本をみるかぎり昨年の青山学院大ほど図抜けた存在はみあたらない。今回の神奈川大とて、たまたま勝ちパターンにうまくハマっただけだろう。東海大、青山学院大、東洋大、さらに駒澤大もふくめて全日本の上位校は実力伯仲とみる。スリリングな展開が観られそうである。

 

◇ 日時 2017年 11月5日(日)午前8時05分スタート
◇ コース:熱田神宮西門前(名古屋市熱田区神宮)→ 伊勢神宮内宮宇治橋前(伊勢市宇治館町) 8区間 106.8 km
◇ 天候:晴れ 気温11.1度 湿度54% 風:北西の風:2m(出発時)
◇ 神奈川大学(山藤篤司、大塚倭、荻野太成、鈴木祐希、越川堅太、安田共貴、大川一成、鈴木健吾)
◇総合成績:http://www.iuau.jp/ev2017/49meki/17-49meki_results.pdf

◇公式サイト:http://daigaku-ekiden.com/index.html
 ◇tv asahi:http://www.tv-asahi.co.jp/ekiden49/