「音工房Z」というスピーカー箱をメーカーがある。
 http://otokoubouz.com/

 いわゆるピュア・オーディオという分野で販売されているメーカー製オーディオ用スピーカーユニットによる、自作スピーカーボックス作りを提案しているユニークな会社である。自作ベースで、たくさんの種類のスピーカーボックスを設計し、制作できるキットも、できあがったものも、販売している。
 この分野は、20年以上前くらいまでは、長岡鉄男(1926-2000年、ながおかてつお)氏というカリスマが、日曜大工の分野でベニヤ板などを加工して、フォステクスのスピーカーを主に使って自作し、それをオーディオ雑誌等で紹介する活動を続けていたが、突然、他界された。そのあと、オーディオ評論に、ぽっかりと大きな穴が空いてしまったのではなかろうか。
 
 オーディオという評論世界は,メーカーのよいしょ評論がほとんどで、評論といえない広告宣伝すれすれのものが多かった。が、長岡さんだけは、読めばわかるが、かなりニュアンスが違っていて、私はずっとファンだった。
 たしか、高田馬場の会場の記憶があるが、私が20代の半ばごろだろうか? 50年近く前のことになるが、長岡氏の作ったスピーカー箱の装置と、有名なメーカー製スピーカーの音比べというイベントで、長岡氏が評論として書いている記事の中身が、実際にほんとうだということを知り、長岡氏の評論は、もちろんメーカーからいただいちゃった影響はないわけではなかろうが、この人の発言は信用できると思うようになった。
 彼は、当時から、いわゆる三菱やフォステクス(当時はフォスターだった)のさまざまなユニットで、いろいろなスピーカーボックスを設計していた。いまでもその設計図は、音楽の友社から発売されている。
 が、かつてのカリスマ人気は、いまどうなっているのだろうか。私にとっては懐かしい限りで,私は長岡氏設計のスピーカーボックスを、数種類自作して遊んだことがある。いまでも、いまから30年以上も前に、当時、長岡氏の設計で最高傑作とされた「スワン」というフッステクスFE103Σというユニットを使った、首長の、その名のとおり、白鳥スタイルのユニークなボックスにあこがれて、作りたいとは思ったが、この「スワン」設置にかなりのスペースが必要で、私の自宅では置けない。そこで私は、「スワン」の設計図をもとに、かなり音道は異なるが、底面積が20×30センチほどでも置ける、ただし高さだけは180センチを超える、上面開口のトールボーイのはックロードホーンを設計して自作した。
 いまこのスピーカーボックスは、そのまま使っている。
 ただし、スピーカーユニットは、一時目標だったFE103Σを長く使ったが、前後に何度か交換し、現在はマークオーディオのアルパイン7?とかいうユニットに付け替えている。かなりワイドレンジでピュアな、ダイナミックで美しい、しかも腰が低い音で満足をしている。
 ところが、何年か前に、フォステクスで、FE108Solという、かつてFE103Σを凌ぐとウワサされるユニットが登場した。この情報を知ったのが、先に書いた、音工房zさんからだった。
 音工房zという会社は、かつてのカリスマ長岡鉄男氏の亡き後を引き継ぐかのように、個人の制作枠をはみ出した町工場のようなところから、スタートしたと思う。社長の大山氏は、若く、かなりの才覚の方のようで、その実験精神はすごい。
 おそらく現在では、アマゾンでの展開も著しく、ニッチな趣味オーディオの分野でありながら、大成功を続けている注目の会社である。
 その音工房zが、数年前にFE108Solを使った箱で、エアー録音したYouTubeを公開していた。それを聴いて、私はこのユニットの優秀さを聞いたと思う。飽くまでYouTubeからの音なので……という問題はあるのだが、良いものは、多少の媒体のばらつきがあったとしても、わかるものはわかる。しかし、FE108Solは限定生産で、評判からすぐにソルドアウトして、幻のユニットになってしまった。
 その、幻のユニットが、コロナ開けの今年、再び限定生産されると聞き、買えるときに買うことにした。楽しみにしている。

●私の試聴環境は、Windows11からの非オーディオブランド品

1)という安物の高音質モドキBluetoothh 密閉、50ミリくらいの大きなドライバーのヘッドフォン★Bluetooth接続
2)同上ヘッドフォンのアナログ3.5インチ★有線接続
  ※接続端子は、最安値の中華製REIYINというusb~光・同軸・アナログヘッドフォン端子の3出力ができるデジタル変換器

 



 ヘッドフォンは、アマゾンで数千円の高級機モドキですが、超超低域と、たぶんかなりの高音域まで、フラットに再生できるので、高齢者のため、1万ヘルツくらいまでしか聴こえなくなってしまった耳だが、かなりのハイCPだと思い込んでいて、主にクラシックを楽しんでいる。不満は、フラットすぎて音質の個性が薄いことと、少し低音が膨らみ気味で、切れがちょっと悪いところ。たぶんこの切れの感覚が、本物の高級品と違うのだろうと思うが、まあ、私には十二分である。
 
 ところで、どうして再生音を確認するかである。私はかつて、CDプレイヤーなどを昔から使ってきたわけだが、安物のAV用DVDやブルーレイ再生機でも、HDMIか同軸または光からのデジタル信号を、フルデジタルアンプに入力すれば、目の覚めるような再生音を得られることが分かり、高価なCDプレイヤーへの興味がゼロになった。

 条件は、入力からスピーカー出力の手前までアナログ回路がないフルデジタルアンプであること。私の使っているのは、20年くらい前の最初期のデンオン製フルデジタルアンプで、最新のものとは、かなりの差があるかもしれないが、それはさておき、音の再生音を、AVプレイヤーにした理由には、もう一つあり、usb端子に、wavやflac、mp3などの音楽データのメモリーやハードディスクを接続すると、AVによるモニター(テレビ)などから簡単に音楽再生できることがわかったからである。そこで、CDからwav~flacデータ化して、再生を楽しんでいたが、欲が出て、不満も出てきた。

 というのは、CDからのデータ抽出でWindowsのメディアプレイヤーで行ってきたが、抽出したwavは、Audacityという有名な無料の音響編集ソフトを使う。
 このAudacityは無料でありながら、ほとんど何でもできるものすごい代物で、これで、古いパブリックドメインの、たとえばフルトヴェングラーの音源データがあれば、これを擬似ステレオ化や微妙なディレー、残響付加、イコライザー調整等々によって、自分好みの音響に作り替えることができる(著作隣接権には留意し、私的使用の範疇の特権も駆使)。
 このAudacityの音質改造で、もう一つ驚くべきものがあった。
 作成したデータを、wavやflac、mp3等々に出力できるが、mp3は除外として、wavは32bit、flacは24bitで出力できるのである。しかもサンプリング周波数は、法外な384kHzまで生成可。が、流石に限界スペックでデータを作成しても、再生デバイスが最大限界スペックに対応したものが、たぶんPC以外には存在しない。
 AVプレイヤーは、あれれ? 24bitデータが再生できない。涙である。しかも48kHzという限界もあり、いわゆるハイレゾ音源に対応していない。どうしても24bitで生成したなら、その生成データのまま再生しなければ、意味がない。

 



 それを探るために、まずはPCによるデジタル出力での音楽再生の実験として購入した中華製のREIYINというDD+アナログ変換器で、OneOdio Studio WirelessというBluetoothヘッドフォンを有線アナログで接続して、ほんとうにどこまでハイレゾデジタル音源が再生できるかを、あれこれと試した。
 そこから分かったことは、次のことである。
 Windowsのジデタル出力では、デバイスによってだが、24bitの出力設定もできる。サンプリング周波数は、192KHzまで対応していた。
 「まさか?」と思ったが、PCからのデジタル出力では、ハイレズ音源の再生が、スムーズにできたのである。
 こうして、いろいろとできる調整や変更をWindowsのサウンドで行って実験した。
 その結果だが、サンプリング周波数は、48kHZ程度で、私の耳は、たとえば192kとの違いが分からない。老人のため、1万ヘルツまでしか聴こえないので、論理的には分かるはずがない。その論理のとおりの結果となった。私には、44Kでもオーバースペックである。
 ところが、ビット深度は違いが分かったのである。CDの16bitでも驚くほどの高い音質を聴くことができるのだが、これを24bit化で生成すると、もう一味音質になめらかさと深みが増すと感じられた。
 これは、ヴォーカルのサ行音の空気感や、ヴァイオリンの倍音のシルキー音質、ホールの拍手や騷めきの背後の空気感などに違いが出る。オーケストラの一撃の和音が鳴るときに、16bitだと「ドカッ」と平たいビンタ感だが、24bitだと「ドッス~ン」という立体的な深いパンチの迫力の違いがある。
 そんなことで、好きな音楽データを自分好みの音に変成したり、24bit96kHzのflacにして、自分のハイレゾ音楽ライブラリーを24bit96kHzでたくさん作ってきた。ほとんど、完全な趣味という無駄の集大成である。

 


 
 それはさておき、次の問題は、これをヘッドフォンではなく、どうスピーカー再生するかである。
 古い10年くらい前のWindowsレッツノートには、HDMI出力端子があったので、この出力端子からデジタル音を引き出しことにした。アマゾンで安物の光と同軸の音声だけを分離出力できるデバイスを入手し、これの同軸からデータをひっぱってフルデジタルアップに繋げた。
 再生のためのデジタル出力について、いくつか問題がないわけではない。デジタルならなんでも同じかと思っていたのだが、経験的に、PCからの場合、usbから引き出すよりも、HDMI端子からの方が、どうも再生音の鮮度が高いと思う。
 もう一つ、ケーブルは、同軸と光はかなりの違いがあり、光は何かが干渉するのか少し浮ついたギラギラ感がある。音の腰が軽いのである。が、同軸は、ニゴリがなく、どっと落ち着いて原音により忠実であると思う。この差は明確で、同軸が必須である。

 こうして、超古いレッツノートのWindowsマシンは廃棄処分ものなのだが、これをむりくりに11にアップデート(YouTubeでやり方を教わった)し、いまはこれで私のものすごく昔作ったスワンを参考にしたトールボーイ、バックロードホーン箱(180センチ上部バック開口)で、10センチフルレンジのマークオーディオ製スピーカーで再生させ、そこそこの十分な迫力と立体的な響きの音を楽しんでいる。

 分からないことは、Windows11のデジタル出力能力(性能)である。デバイスによって、16bit44K~24bit192kが現在は選択できるが、レッツノートにはCDドライブがついているので、当然CD再生もできる。そのとき、デジタル出力を24bitに設定しておくと、明らかに16bitとは違う良質な音が、再生できると私は思い込んでいる。気のせいで、そう聴こえている可能性もあるかもしれないが。
 とまれ、もし,原音データが16bitでも、PC内の出力で、24Bitとして生成した再生音データを出力できるなら、そしてその聴感上の聴こえが、確実によく聴こえるなら、私が16bitデータを、Audacityを駆使して、24bit96KHz化(データ量はでかくなります)をすることは、意味がないのだろうか? ひょっとしたら、これは丸っと遊びだが、ものすごくアホなことをしでかして、やっている感を楽しんでいるだけかもしれない。