◇言語の壁が低くなった、驚くべきPCとAIの進化

 今や時として先生として、時として翻訳者として、時として知恵袋として、まれには作家として、大活躍のChatGPT様である。
 ある時日本語の英訳が必要となった。
 有名・無名の翻訳会社がある。翻訳料の相場を調べると、卒倒するほどの高額だった。見て考えるだけでも目が眩むので、卒倒する前に画面を閉じた。

 そこでちょこっと考えた。
 そうだ! Google翻訳があるではないか。

 1、2年前、いやずっとそれ以前からGoogle翻訳はすごかった。が、英語などの欧文を和訳させると、怪しい日本語で戸惑った。使えそうで、使えない?

 翻訳ソフトはPC用は20年くらい前からあって、私はその、Windows98時代にPCに付属してきた翻訳ソフトをインストールして、ときどき使うことがある。が、その翻訳は、かなりこまかく単語の分析までしてくれるのだが、日本語としての生成能力は原始時代のような感じで、大幅に意訳してやらないと、日本語化できない代物だった。いくつか「こりゃ英和」とか、いろいろとソフトがあったが、かつてはどれもこれも、原始時代の日本語しか生成しなかった。
 あれから10年、そして10年、ここ2、3年で、Google翻訳の精度がめちゃくちゃに高くなり、今はまさに、日進月歩の勢いで、Google翻訳のとくに英語から日本語の翻訳の精度はバク上がりしている。

 驚くべきことは、無料で使えるというところである。有料であれば、優秀なソフトがあるという人がいるが、私自身は翻訳者ではなく、単なる興味本位なので、無料でないと使えない。貧乏人でもあるので……。

◇翻訳ソフト「Deepl」と「Google」

 調べると、「Deepl」という翻訳ソフトの評判が良い。無料版と有料版があるが、もちろん私は、無料版しか使えない。
 ある,英語コンテンツ、かなりある特殊分野の専門的な用語がある、特殊なものになるのだが、この英語コンテンツを、DeepLとGoogle翻訳でそれぞれ翻訳させて、日本語の生成力を確かめたことがある。今年の夏ごろのことだ。
 結果、両者ともに、かなり精度の高い日本語生成力があることがわかった。DeepLは、である調っぽく、やや固い。Google翻訳は、ですます調的でやさしいニュアンスで、しかもかなりの意訳をしてくる。私は、日本語としての親和性は、Google翻訳に軍配を揚げた。が、それは数か月前の話し。今やったら、どうだろうか?

 ところで、私に最近必要となったのは、日本語コンテンツの英訳だった。それもけっこう長い。通常本の4分の1くらいの量がある。
 翻訳会社に依頼すると、~~十万で卒倒してしまう。しかも数週間もかかる。

 はたと気がついた。Google翻訳はどうか?

 すでに、英語から日本語の翻訳力は確認済みだ。だとしたら、その逆も十分ありえるのではないか。もともとGoogleはアメリカ英語圏のソフトである。その日本語翻訳力が向上しているということは、Google翻訳のデータベースに、日本語の複雑な文法や慣用句やら単語や古語や放言、流行語などなどが、膨大に整理されて出番を待っているということではないか? だとしたら、日本語を英語に翻訳する精度は、かなり高いのではないか?
 
 もう一つ、閃いたことがある。
 ChatGPTだ。
 聞けば、日本語でもなんでも、ほとんど何でも知っている風で、答をすぐに書き出したくる生成AIは、英語圏で生れた新星である。英語の文法や語彙能力は、著しく高いと聞いた。
 ならば、Google翻訳とChatGPTを複合的に活用して、日本語の英訳をさせたらどうなるか?

◇「Google」+「ChatGPT」の英訳、驚愕の出来

 かなり長いコンテンツでやってみた。
 その成果を、英語がわかる人間に評価してもらった。
 なんと、ほぼほぼのネイティブ英語に翻訳できたらしい。
 私には、英語の知識が幼稚園並にしかないので、検証できないが、英語に堪能な知人の言を信じている。感触として、かなりの確度の高い、英訳ができた。
 これは、~~十万もの翻訳料となるその業者の方には、ゾッとする現実である。
 私はその金額で卒倒するが、その業者は時代の変化に卒倒するだろう。
 
 日本語の英訳力だが、Google翻訳は、やや直訳風らしい。高校生レベルとも言えるようだ。ChatGPTは、翻訳した英語をさらに再翻訳して英語表現を高めることができる。こうして驚くべき美文の英語ができあがる可能性を秘めている。
 Google翻訳は、一度翻訳するだけだが、ChatGPTは、英語なら、何パターンも生成してくる。その一つ一つの違いを、残念ながら、私は評価できない。幼稚園レベル英語しか理解できないから。だとはいえ、ニュアンスとして、ものすごく英語的な雰囲気になることはわかる。

 私は、Google翻訳のすごさはすごいのだが、今言いたいのは、ChatGPTの生成力がすごいということなのである。
 だとしたら、日本語から英語ではなく、英語から日本語のへの翻訳の、最初の問題に移るが、ChatGPTの、英語を日本語に翻訳する能力はいかがなものか?

◇英文の和訳力はChatGPTは未熟、Googleが断トツ

 Google翻訳と、前にはDeepLで比較したが、今度はChatGPTで比較してみた。
 すると、Google翻訳は、かなりきっちりと直訳的だが、英語の文章を日本語化してくる。これは前にお伝えしたとおりだ。直訳的だが、かなり意訳もする。それも、正確な意訳をする。
 ところが、ChatGPTはというと、なぜか日本語が、少し短い。ChatGPTは、どうも直訳ではなく、意訳を交えているんではないかと感じた。もっといろいろと実験しないと言えないが、一部大事な英語の翻訳をしてくれなかったり、要約してしまったりするような気がした。しかも、日本語の表現は、平たい。つまり、ビジネス文書風となる。味わいは消える。
 ChatGPTは、じつはかなりずるいところがあり、知らなくてもしったかぶりをして、シレッ~とウソを平気で答えてくるところがある。その悪いクセが、日本語への翻訳では出ているのではないか。
 もう一つ、だんだんと明らかになったのは、日本語の要約能力は高いのだが、あんまり日本語が得意ではないようだ。飽くまでもChatGPTAIロボットは、米国人なのである。米国人学生が、あるレベルの日本語の知識をマスターして機能している未熟さが見えてきた。

 ある適度な長さの文章の要約をやってもらった。
 さらりとやってのける。
 だいたい、元の文章の4分の1くらいに圧縮してくれる。のだが、あるときふときがついた。
 元の文章は、「である」体だったので、最初はChatGPTの要約文も「である」調だった。ところが、何度かくり返してやっていると、いつの間にか「ですます」調の要約になった。元文は「である」調である。

◇ChatGPT、日本語の要約をさらりとやってくれるのに、なぜ「ですます」調?

 そこで、ChatGPTに、「である」調で修整を依頼したが、「ですます」調のまま、修整してきたので、再度、次のように書き込んで依頼した。

――日本語には、表現に「である」調と、「ですます」調があります。お願いをしたのは、「ですます」調の文章でした。これを「である」調への修整をお願いしたのですが、出てきた結果は、「ですます」調のままです。日本語表現の「である」調と「ですます」調の違いは、あなたのAI日本語言語に登録されていますか? いませんか?

 すると、ChatGPTは、次のように応答し、修整した文章を示してきた。

ChatGPT:すみません、誤解が生じました。私は「である」調と「ですます」調の違いを理解しており、修整が必要であるべきでした。以下に修整された文章をご紹介いたします。

 この修整文章を見て、私は「はぁっ?」となってしまった。
 たとえば、「魅了された経験に根ざしていますである」となっている。それ以降も同様である。何と、「ですます」調のうしろに「である」を付け足した、日本語として妙チクリンな修整がされていた。まさに蛇足とはこのことである。ChatGPTの日本語頭脳は、「ですます」文書に、「である」をつければ、「である」調になると理解しているとしか思えない。
 
 私は、再三再四、「である」調文書への修整を依頼するついでに,こうChatGPTに向かって説明をした。

――たとえば、直前の修整文書の最初
「魅了された経験に根ざしています。」が、
「魅了された経験に根ざしていますである。」
と修整されていますが、こういう日本語表現はありません。
正しく「である」調に修整すると、次です。
「魅了された経験に根ざしている。」
 同様に,次の部分
「響くことに感動しました。」は、
「響くことに感動した。」と修整すべきです。
 次、
「英詩を暗記しましたである。」ではなく、
「英詩を暗記した。」
 以上が、正しい「である」調への修整の仕方です。
 私の解説は理解できましたか?
 理解できたなら、もう一度、「である」調文書に修整をしていただけますか?

◇ChatGPT3.5は、「ですます」調と「である」調の日本語に無知だった!

 こうChatGPTに依頼して、再三再四修整された文章は、元の「ですます」調に戻ってしまった。
 この経緯を見て、私は、ChatGPTは、「である」調と「ですます」調の日本語表現の違いを、ほとんど理解していない、AI言語ロボットなのだと理解をした。
 そういえば、ChatGPTの日本語の表現は、ほとんどが、ていねいな「ですます」調で貫かれている。つまり、日本語生成では、「である」調表現の情報がほとんど不足していると判断した。

 私は、ChatGPTで、文書の要約とともに、「ですます」調、「である」調の相互の修整で使ってみようかと思っていたのだが、現状では、この使い方はできないことがわかった。
 有料の、ChatGPT4.0なら,できるのだろうか?