私は週4日ほど、ジムに通って体のトレーニングをしている。かれこれ8年くらいになる。すでに私は古希を経て何年かになる。鏡を見るとハゲかけた白髪のジジイが写っているが、これが私だとは受け入れていない。目に見えることを、そのまま信じてはいけない。

 ところでだ。
 ジムは一度行くと、45分ほどのスタジオプログラムを2つほどする。スタジオプログラムには、ジャム、ズンバ、サルセーション、リトモス、エアロそしてカキラというのをやっている。私はたらたらやるのがきらいなので、ジジイであることを忘れて、むちゃくちゃに動き回る。いつも大汗でメガネが曇りっぱなし、はやくマスクだけは終わりにしてほしい。もう一つスタジオでは、ヘタクソなジジイなので、周囲の方々に迷惑をかけていることは自覚している。申し訳ない。

 それはさておき、ダンス系のエクササイズは、細かなステップが輻輳する。足や脚、膝の負担は過激だ。床はフラットだが、リズムでステップを踏むたびにシューズのソールが床にグリップする。その瞬時、足の指や底、足首、膝にビビッと力が入っては抜ける。そんな強い刺激と圧力が、床にグリップするシューズに、概算だが、1秒間に1度から2度くらいの間隔で加わっているはずである。裸足でやっていたら、足のあちこちにタコができたり皮がむけたり、ツメがはがれたりすることだろう。しかし、そのすごい摩擦と圧力を、シューズが受け止めて分散し、体を支えてくれていることを、今回初めて気がついた。
 因みに、スタジオのダンス系では、次のようなさまざまな種類の動きがあることを、YouTubeで知った。

 ウォーキング、マーチ、ボックス、マンボステップ、ステップタッチ、グレープバイン、ニーアップ、カールステップ、Aステップ、Vステップ、ヒールタッチ、バッククロス、フロントクロス、アクロス、ギャロップ、ケンケン、ビハインド、バックラウンジ、ジョグ、ヒールジャック、ツイスト、エルビス……等々。

 一つひとつ見てみると、確かにふだんやっている動きではあるが、こんなにもあったなんて、びっくりした。実際には、もっとたくさんある。ものすごく足を使っているということになる。
 その結果、何と気づいたときには、私のトレーニングシューズの小指の外側にあたる部分に、ぽっかりと穴が空いてしまった。それも左右ともにである。その穴は、手の指が通るほどの大きな穴だった。

 



 私は2種類のシューズを交互に履いている。すでに数年間使っているが、穴の空いたのは、足のサイズにぴったりフィットしていたニューバランス製だった。こういう穴の空き方を見たのは、久しぶりのことだ。私の孫がまだ小学生から中学生のころ、買ってやったシューズが、ほぼ数か月で穴があくことを見てきたが、そんな状態が自分のシューズにも起こるなんて……、ちょっと笑ってしまった。

 



 たしかに数年以上履いているので、そろそろ寿命かもしれない。いったいどれくらいの圧迫がシューズを壊したのだろうか? 計算してみた。
 ダンス系エクササイズで、1秒に1~2回ほどの圧迫があると想定し、それを平均して1秒で起こるシューズが受ける圧迫を1.5回とする。
 1分間で90回、1スタジオレッスンは45分だが、実質40分として3600回、2回やっているので倍の7200回。
 これがジムに1度通った時にシューズが受けた圧迫数となる。
 2足を交互に履いているので、1週間(2度)で14,400回、1カ月だと57,600回、1年で691,200回。
 1年も履いていると、トレーニングの度にほぼ70万回もの圧迫をくり返したことになる。
 これが5年となると、その数は、3,456,000回となった。
 300万回を越える途方もない圧迫数。これで私のシューズに穴が空いたのだ。それにしても、単純計算だが、実際にはこの半分だとしても、人間が足を使って動いている回數は、途方もない。長く履けば履くほど、シューズのどこかに穴が開かないほうがおかしい。逆に考えると、指の付け根に穴が空いても、シューズとしての機能には何の問題もないというのは、すごい。けたたましく丈夫だ。

 そんなシューズなので、愛着がある。確かに穴が空いてみっともないが、まだまだ使えるので、接着剤で修理をしてみた。内側にガムテープを張り、外側にG17というボンドをごちゃっと何度か塗り固めた。その上に黒のサインペンで塗ってみたら、見てくれも問題がなくなった。試しに、スタジオで厳しいステップのプログラムをやってみたが、まったく何の問題もない。捨ててしまうところだったが、これで当分様子をみよう。

 


 因みに、G17というボンド、これまであちこちに使ったが、ちゃんと乾かすと靴底のはがれも修復できるスグレモノである。