10月20日(月)
「人間は忘れるから生きて行ける」
そんな言葉が空虚になった俺の頭に浮かんだ
菊地絵理香がプレーオフを終え、ハウスに帰って来たときだ。
泣いているえりかさんは見たくなかった。
だからよそうと思っていたのにそばにいるある人が言うのだ。
「ちゃんと迎えてあげて、お疲れさまを言ってあげた方がいいよ」、って。
数人で戻ってきた彼女にお疲れさまでした、と言えた。蚊の鳴くような声で。
サバサバした表情だった。
泣いてなんかいないし、目もうるんでない。
小さくその声を掛けた俺にいつもの笑顔で会釈してくれた。
えりかさんがそうなら俺も引きずってはいけないよな。
そう思ったとき冒頭の言葉が浮かんできたのだ。
忘れることはできないけど、引きずるのはやめよう・・・・・・・と、思った。
ある人がいっぱいの観客で最終ホールを見られない俺をハウスに呼んでくれたのだ。
ハウスの中でプレーオフを見ていた
彼女が2打目をあの忌まわしいバンカーに入れた
テレビを見るのをやめて離れたソファに座ってしまった。
菊地絵理香の夢と一緒に俺の夢も散った瞬間だ。
思い返せば楽しい3日間だった。
初日はあのスーパーダッシュを魅せてくれた
2日目は11番からの3連続バーディーで萎えていた俺の心をつないでくれた
そして昨日、最終日。
アンソンジュに1打遅れた2位からのスタート。
エリカ様が3打先行していてもヤバイと思うのに、これじゃ逆転なんか難しいな。
そう思って電車に乗ったもんだった。
2位を死守してくれれば上等だ。 そう思っていた。
アンソンジュがおかしい。 らしくないゴルフが続いた。
さくらはバーディーパットが入らない。
押し出されるように単独トップに立った。
3人3様、一進一退のゴルフが続いた。
12番、13番で長めのバーディーパットを決めた
めずらしいガッツポーズも出た。
14番、グリーンを外したアプローチをあわやというところまで寄せた
あの寄せを見て、もしかしたらイケるかもしれない。
俺はそう思った。
16番のロングを2オンしてバーディーを取った。
眠っていたさくらが目覚めたように1打差に肉薄して来ていた。
だがゴルフは目前の競り合う選手が敵じゃない。
敵は内にあり、なのだ。
球聖と言われたボビー・ジョーンズが言っている。
「ゴルフはオールドマン・パーが相手。パーとの戦いだ」・・・・・・と。
そう、その通り。 パーおじさんとの闘いなのだ。
思いたくないが、
このころから彼女には勝利への意識が芽生えたのかもしれない。
あとはみんなが見ての通り。
このまま行ってほしかった・・・・・・・・・。
3日間見ていてあんなドライバーショットは一発もなかった。
エリカ様のすぐうしろで彼女のティーショットを俺は見ていた。
あ~、やっちゃったぁ、っというような笑み。
苦笑ってやつだな。
アンソンジュの16番のバンカーからのショットには息をのんだ。
あんな離れたバンカーからあそこへ寄せるなんて誰にもできないだろう。
もう一度、っていってもアン自身でさえ、できないかもしれない。
自分の出番が来た、と思ったのだろうか?
試合は終わった。
3日間楽しい夢を見させてくれた菊地絵理香様に感謝だ
こんな笑顔をすぐそばでいっぱい魅せてもらった
3日間54ホール中一部を除いてほぼ全部一緒に歩いた。
楽しいウォーキングだった
豊後で残念飲みをしていたときはもうさっぱりしていた
いい夢みたなぁ、なんて思いながら飲んでるとき、
ノボちゃんからメールが来た
えりかちゃん、ブログ更新してます。
しかも16時54分に・・・・・・・。
急いで開いた。
こんなことを書いてる・・・・・・・・
これ見て・・・・・・・・泣いた
なにが、「すいません」・・・・・・・・だよ
一番くやしくて悲しいのはあなたじゃないか。
3日間あんなに楽しませてくれたじゃないか、俺を。
えりかちゃん、勝つことだけがゴルフじゃないよ。
あんな可愛い姿を全国に見せてあげたじゃないか
ファンがいっぱいできたらおじさんは困るよ(笑)
そしてランキングも20位まで上げたじゃないか
わたしをリコーに連れてって。
あんなムリ出ししたのにもう射程に入ったじゃないか。
菊地絵理香さん、あなたは最高です