ECB、2つの政策について ‐「実質上の為替政策」と「与信政策」‐ | ニューノーマルの理 (ことわり) Powered by Ameba
September 05, 2014 00:22:37

ECB、2つの政策について ‐「実質上の為替政策」と「与信政策」‐

テーマ:欧州経済

先月理事会後のドラギ会見を聞いていると「ユーロショートが拡大している」なんて事を(中銀総裁)が平然と言っていたので「今月ひょっとして」という思いはあったが、まさか一段の10bpカットとはね。今回の利下げは外為市場に強烈なインパクトを残したが、実際の経済にはマイナスの可能性もある。


ユーロ圏オーバーナイト平均金利は先月、マイナス圏へ沈み込んだ場面があった。今回の措置は、オペレーションバンド自体は圧縮していないものの一段引き下げており、言い換えれば、ただ単純に6月のアクセル を一層踏み込んだ、という事になる。政策金利を0.05%、中銀預金ファシリティレートをマイナス0.20%、という事は、「その狭間」にあるオーバーナイト市中金利も一段引き下がる可能性が高くなった、という事。


6月の政策変更でオペレーションバンドの中へ引きずり込む事に成功 、としていたが、つまり、ここのところ0.01%付近で張り付いていたユーロ圏のオーバーナイト平均金利は先日同様、一層のマイナス圏へ突入する可能性が出てきた、とも考えられる。これはハッキリ言って経済成長にとっては失敗となる可能性がある。0.01%で張り付いていた市中金利を、これ以上引き下げればマイナス圏、という事になり、そういう状態が続けば、コストを課せられた銀行は貸出金利を引き上げる可能性が出てくる。結果として民間への与信は逆に少なくなるかも知れない。


民間銀行は、預金ファシリティおよび当座預金にプールしてもマイナス金利、ドイツ国債を買ってもマイナスだろう。つまり今回の「金利引き下げ」は、経済に対してプラス効果はないし、明らかにユーロ相場引き下げを狙っている、と解する事ができる。ユーロ圏の過剰流動性は、金融市場からのアウトフローを発生させず(経済鈍化)、ドイツ国債のバブル (マイナス金利)とともにユーロ相場は軟調だという事。


上記リンク、6月のエントリー中で「ドラギは市中金利及びユーロ相場引き下げを意図しており、過剰流動性への課金措置とコリドー圧縮のダブル効果でその結果が問われる場面を迎えている」とさせて頂いたが、今まさにその渦中にあるという事が顕著になった。



ドラギ流の為替介入


FRBによる出口方向への議論が活発化してきたこのタイミングで、(ECBが)「すべて逆」を行えばユーロ相場を引き下げやすいのは明らか。当然タイミングを考慮しての利下げ措置になる。ユーロドル相場の方向性は中銀政策を顕著に表した合理的な結果だといえるだろう。


このユーロ相場を大きく意識した政策を技術的なところでいえば、リバースレポレート(実質上のフロアレート)で政策金利の下支えをしようとする米国に対し、ユーロ圏は中銀預金金利(フロアレート)を一層押し下げ、フロア(底)のタガを外した感がある。外為市場の視点でいえば、通貨に底を当てた米国と、底を外したユーロ圏、と端的に捉える事は可能だ。今回の利下げ(0.05%)で、ECBによる引き下げ政策は打ち止め、という事だが、つまり今後は非伝統的政策に舵を切っていく事になる。




ECBの「非伝統的金融政策」


非伝統的政策といっても巷でいわれる実質的な(国債買い取り等の)QEではない。外為市場参加者、そして金融メディアにQEと思わせる、実質的な信用緩和、「CE」になる。

ABSとカバードボンドの購入、6月発表の不胎化停止の措置などは当然、ユーロシステムのバランスシートに影響を与える政策だが、LTROの返済によって、一時は2.7兆ユーロ水準まで膨れ上がっていたECBのバランスシートは、今現在2兆ユーロに限りなく近づいている。ABSとカバードボンドの詳細な買い入れプログラム発表は10月理事会に持越しとの事だが、過去最高水準に到達するか否かは分からない。


金融危機後、ユーロ圏ABS市場は流動性が滞り、事実上の取引停止の状態が続いた。ABS市場の発行規模が米国と比較し著しく小さい事から、カバードボンドの買い取りを併用したのだろうが、そのカバードボンドの買い入れにしても以前実施した時には目標額の半分程度の水準しか買い入れる事ができず、計画発表時の高揚感は吹き飛ぶ事になった。


NY連銀も以前、リーマン後に財務省のTARP資金援助を受け、金融市場向けファシリティとしてCPFFや(今現在継続している)MBS買取などと同時に、(そのABS買取の)TALFを実施した。(09年3月初回入札、QE1の一環) 当時のFRBによるABS購入プログラムは、今回のECBのそれと同様、中小企業への流動性支援を目的としたもので、その買取適格(ABS)は最上位格付け(トリプルA)のものであり、随分前にお伝えしたように 米国内では潜在的需要も高かった。


一方のユーロ圏ABS市場は疲弊化している上に規模は小さく、発行残高はユーロ圏主要国のものを合わせても(発行量の多い)イギリスのそれに届く規模。財務省と協力したFRBに対し、ECBは欧州投資銀行の協力を得るのだろうが、市場規模自体が小さい上に、その中でも限られた一部のものを買取適格とする事を考えれば、証券の信用リスク格付けも定かではない。ここでは10月に発表されるであろう、買取証券の種類や信用度を見極める事が重要になる。 しかしやはり諸々の事を考慮すれば、ユーロ圏ABS市場機能回復、および中小企業向け融資の拡大には期待感が薄い、というのが率直な感想だ。




ユーロ切り下げ政策は理に適い、与信政策は期待薄


自分は繰り返しバランスシートが大きくなる事がかならずしも通貨下落に直結するとはいえない、と主張している。つまり今回、中銀預金レートはさらに引き下げられ(フロア下落)、資金がユーロ圏主要国ソブリンに向かう「カネの流れ」が加速する事が予想され、金利は低下し通貨下落が見通された、という事。


一方、ABSやカバードボンド購入はバランスシートが大きくなるものの、おそらくは計画通りにはいかず(目標額に届かず)小規模なものになる。金利引き下げと違って、こちらの政策は中小企業与信を高める信用緩和であり、通貨下落を狙ったものではないといえる。 一方の政策は為替政策、もう一方はマネーサプライの拡大を狙ったもの、という事。















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