「皇帝」というのは全世界の支配者という意味だから、世界に一人はあたりまえ。でも世界はいくつもある | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

「帝国」というのは、欧州語の「エンパイア」の訳です。
「皇帝」の治める国が帝国、「エンペラー」が治める国がエンパイア。
これは本来別物です。「皇帝」と「エンペラー」が同時にいるのはアタリマエ。
とはいえ、「皇帝」と「エンペラー」には共通点があります。「全世界の支配者」という意味だということです。だから、ローマ帝国の皇帝(エンペラー)の使者が漢帝国の皇帝のもとにやってきても、漢のほうは相手を「大秦国王」としか呼びません。


東アジアには「皇帝」といえば中華を支配する者ただひとりです。
ヨーロッパには、「ローマ皇帝(エンペラー=カイザー)」がたったひとりしかいない、はずだったのですが。
ところが、そのローマ帝国が東西に分裂したことで、皇帝は二人になります。それぞれに権威を与える「法王」も、ローマ教皇と、コンスタンティノープル大司教の、二人ができてしまいました。つまり「世界」がふたつになったわけで、それぞれの世界に皇帝がいる、ということになったわけです。
以降、ヨーロッパ世界には、西ローマの帝冠を引き継ぐもの(神聖ローマ帝国→オーストリア皇帝、ドイツ語でカイゼル)と、西ローマの帝冠を引き継ぐもの(ビザンツ皇帝→ロシア皇帝、ロシア語でツアーリ)の二つの太陽が存在することになります。


さらに、ナポレオンがヨーロッパを席巻すると、ローマから教皇を呼びつけて戴冠式をやって「フランス皇帝」になってしまいます。ここで、ヨーロッパには三人の「皇帝」を名乗る者ができました、ロシア・オーストリア連合軍とフランス軍が戦った戦争は「三帝会戦」といいます。
近代になると、あちこちの王が、それぞれの理屈で勝手に「帝国」「皇帝」を名乗るようになります。プロイセン王がドイツ皇帝、英国がインド皇帝を兼ねて「大英帝国」、日本の天皇が「大日本帝国皇帝」、トルコは「オスマン帝国」、この頃になると「皇帝(と日本語に訳される君主)」は世界中にいっぱいいて数え切れない、ということになります。

 

 

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