それでは、「ハムレット」の物語から、オフィーリアにまつわる出来事を、時系列に沿って整理してみます。
少々「踏み込んだ(R15的な)発言」もございますが、なにせ「出生の秘密」というハナシですので、なにとぞご容赦のほどを。てゆうか、あくまでブンガク的妄想、フィクションの中のハナシですからね。
決闘の結果、薔薇の花嫁(ガートルード)とデンマークの王冠を手に入れた先王ハムレットですが、恋人と引き裂かれて泣く泣く結婚したガートルードの心までは手に入らなかったのでしょう。その証拠に、ハムレット王とガートルード女王の間にはそれ以後、一人も子供が生まれませんでした。寝室を共にしても体を許さなかった、ということも考えられます。ハムレット王は、その鬱憤を外に持って行くしかなかったでしょう。
ポローニアスが、妻を「奪われた」のか「寝取られた」のか「差し出した」のか、そのへんは分かりません。ともかく、ポローニアスは「王の落胤」を自分の娘として育てることになります。
これがポローニアスに、結果として計り知れない利益をもたらしたであろうことは、想像に難くありません。なにしろデンマークの本当の「女王」はガートルードなのですから、ハムレット王はこの不義密通を公にすることはできません。
王はポローニアスに大変な「借り」を作ってしまいました。彼が宰相にまで登りつめたのも、王国最大のタブーを握っている、つまり「オフィーリアを手許に押さえている」からなのです
クローディアスが先王を「暗殺」して王位を奪うと、ポローニアスはこんどは、この「秘密」を新王夫妻に高く売りつけます。
新王夫婦は「自分たちの本当の息子・ハムレット王子を「私生児扱い」から開放して王位を継がせたい、と考えています。そんな新王夫婦にとって、先王の落胤である娘、というのは、話を厄介にする面倒な存在です。さっさとどこか外国にでも嫁に行ってくれればいいんですが、そこはポローニアスががっちり娘をガードしています。ポローニアスにとってオフィーリアは、髪に触れると魔法のパワーを貰うことができる「切り札」です。簡単に手放すわけにはいきません。
しかし、ここで「八方丸く収まる」妙手があります。つまり、ハムレットがオフィーリアと恋仲になって、結婚してしまえばいいじゃないですか。思いつくとすれば、たぶんガートルードあたりです。たとえオフィーリアが先王の娘でも、ハムレット王子は実は先王の息子じゃないことは、彼女自身が一番良く知っているのですから、ノープロブレムです。かなりあとの、オフィーリアの葬儀のシーンで、ガートルードは「ハムレットの妻にと願っていました」と言っていますが、これはたぶん、本心です。
ともあれ、ハムレットとオフィーリアは電光石火、見事に恋仲になってしまいます。これはハムレットが「父王の葬儀のために帰国した」あとの出来事のはずですから、ロミオとジュリエット並みの早業です。
ポローニアスとしては、余り面白くない事態です。魔法の素の娘が、いつのまにか家の窓から逃げ出そうとしているのですから。なんとか阻止したい、どうしてもというならできるだけ値をつりあげたい、というわけで、レアティーズ旅立ちの直後の「お説教シーン」になります。ハムレット王子の恋心などニセモノだから諦めろ、今後はデートも文通も禁止だ、という命令を、オフィーリアはこれも父の愛ゆえ、と思い「わかりました」と一応納得します。
ところが。そのあと、ハムレットが突然、オフィーリアのもとにやってきて、奇妙な行動をとります。オフィーリアの顔をしげしげと見て、絶望したような表情を浮かべて首を振り、去っていった、という・・・。ハムレットはいいったいこのとき、何をしていたんでしょうか?