ガッツ

水野晴郎さんが倒れて重体、というニュースを見て、
急遽予定した内容を変更、「1月14日よりOK牧場ロードショー」
(チラシの宣伝文句より)されているガッツ石松主演最新作
『ガッツ伝説 愛しのピット・ブル』の話をしよう。

なぜって、この二人、実は浅からぬ因縁がある。
ガッツ石松が唯一、監督・主演・脚本を兼ねて製作した意欲作
『カンバック』(1990年)の公開当時、映画評論家として
横綱級の知名度があった水野晴郎さんに映画を酷評され、
怒ったガッツさんは、テレビ番組中に食ってかかった。
「これまでのボクシング映画は、みんな嘘っぱち。
本当のボクシングはそんなもんじゃない。それが
ボクシングの素人にわかるのか。釈明しろ!」
みたいな大人げない内容だった。水野さんも負けてはいない。
「私は映画評論家として、よくないと思うものを皆さんに
オススメするわけにはいきません」
「何を!」とガッツさん、険悪なムードで収拾がつかないまま
テレビ番組はドタバタと終了、となってしまったのである!



松竹
カンバック
これには見ている方が驚いた!
それ以降、ガッツさんは俳優に専念、映画を一度も製作していない。

実はそれから数年後、私はガッツさんにも、水野さんにもお会いして
話をしたことがある。もちろん、あまり深くは聞かなかった(笑)
が、二人ともタイプは違えど、とても素敵な人たちだった。

実際、その後、ウチの娘が生まれた時、あまりにガッツさんに顔が
似ていた(後で知ったのだが、生まれたばかりの赤ちゃんは、みんな
ガッツ石松さんに似ているらしい。そういう話を出産した人に何度も
聞いたことがある!)こともあり、ガッツさんには思い入れがある。

そして一昨年、ガッツさんが水野晴郎さんの『シベリア超特急5』に
出演しているのを見て、「和解したんだな」と人知れず嬉しかった。
ちょうど、ガッツさんが「OK牧場?」で再び脚光を浴び始めていた
頃だ。それから、『ガッツ伝説』が40万部のベストセラーとなった。



ポニーキャニオン
シベリア超特急5~義経の怨霊、超特急に舞う~



ガッツ石松&鈴木佑季, EXCITING編集部
最驚!ガッツ伝説



ガッツファミリー, エキサイティング編集部
最驚!ガッツ伝説2

しかし、それ以前に、ガッツさんの俳優としての実績はものすごい。
リドリー・スコットとスピルバーグ監督作品の両方に出ているのは
日本人では他にいない、というのがガッツさんの自慢だ。それで、
「人情ドラマの最高傑作」という明らかな誇大宣伝に騙されて、
最新作『愛しのピット・ブル』を見てしまった、というわけだ。

確かに人情喜劇であることは間違いない。ただ、『ガッツ伝説』と
タイトルに謳うからには、徹底的に大ボケをかましてほしかった。
これじゃ全然、笑えない。元ボクサーのしがないペット屋のシャイ
なオヤジが、シングルマザーの麻生祐未に不器用な恋をするという、
今時TVドラマでもやりそうにない、ありきたりな設定は古臭過ぎ。
舞台での実績がある野伏翔監督は、なぜ『ガッツ伝説』という本が
こんなに受けたのか、まったくわかってなかったんだろうと思う。
どうせコケるなら、せめて「OK牧場?」の台詞に失笑が起こる
ぐらいボケまくって、大暴れしてほしかったなあ……総合評価★
(ガッツさん、ゴメンね……水野さん同様、許して下さい~笑!)
新宿トーアにて、まだ公開中、と思います(汗)。

ちなみに、「OK牧場?」のネタ元、『OK牧場の決闘』(1956年)
は、水野晴郎さんの水曜ロードショーでも視聴率25%を稼いだ往年の
大ヒット作。何度も映画化されている西部開拓史上最も有名な実話を
基に、実際の決闘シーンの一人一人の動きを忠実に再現したという
ジョン・スタージェス監督の決闘三部作の一つ。フランキー・レイン
とディミトリ・ティオムキン(50~60年代の映画音楽のキング)の
『ローハイド』コンビによる有名な主題歌、バート・ランカスター、
カーク・ダグラスという二大スターの競演でも話題になった名作だ。
ジョン・スタージェス監督がワイアット・アープとドク・ホリデイの
その後を描いた続編『墓石と決闘』(1967年)も、出演者は異なるが
(ジェームズ・ガーナーのガンさばきは見事ですよ)佳作だった。
また、後者の音楽は巨匠ジェリー・ゴールドスミスの初期の傑作。
スリリングでキレのある音は、もう往年の名作とは違って今風です。
どちらも、総合評価★★★★(……今、見ると★★★ぐらいかな?)



パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
OK牧場の決斗【字幕版】



アミューズソフトエンタテインメント
墓石と決闘

ケビン・コスナーとデニス・クエイドの『ワイアット・アープ』(94)
や、カート・ラッセルとバル・キルマーの『トゥームストーン』(93)
は、『OK牧場の決闘』と『墓石と決闘』の話の前後まで描いた大作
(前者)とアクション映画(後者)で、比べて見ると面白いですよ。

ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演の名画『荒野の決闘』
(46)も同じ話だけど、詳しく違いを述べていくとキリがないので、
今日はこのへんまでにしておこう。とにかく全部見てください(笑)。
でないと、いつか話が合わなくなりますから……。

『ガッツ伝説』との対決?……まだ言わせたいんですか?(笑)
元ネタは偉大だったということです。

水野さん、意識は回復したそうですが、くれぐれも無理はなさらぬように……。