最も強烈に、「それまでの話がまったく意味がない」……

という「大どんでん返し」で、完璧にダマされてしまった映画が

『オーソン・ウェルズのフェイク』(1975年)だ。


言うまでもなく、監督は20世紀の怪物、オーソン・ウェルズ。

主演、というか、パーソナリティとしても登場する。


さすが、『宇宙戦争』をラジオドラマ化した『火星人襲来』の見事な演出で、

全米を恐怖とパニックに陥れた実績の持ち主だけのことはある。

今回も見事に彼のダマシのテクニックの餌食となってしまった……

……なんという快感……!!


ダマされた後ですら、それまでの話が

にわかに「虚構」だと納得するのに時間がかかってしまうほど、

なんとも見事な真に迫った演出なのだ!!


『フェイク』も、『火星人襲来』と同じドキュメンタリー的手法で、

ピカソの贋作作家に隠されたバックエピソードが語られていくのだが、

これがまた実に興味津々な内容で、グングン引き込まれていく……



ああ~~、どこまで話していいんだろう!!

ここまで話といて、今さらなんだけど、あとは実際に見てほしい。

『火星人襲来』から約30年後に発表された『フェイク』は、

オーソン・ウェルズの実力を垣間見ることができる傑作だ。


やはり、オーソン・ウェルズは「ダマシ」の天才だった!


問題は、2度目に見る時、もうダマされることがないってこと。

一度目の快感が、おそらく2度目で上回ることは絶対ないはず。

そもそも、2度目を体験したいと思うかどうか……。

それぐらい強烈な初体験が得られるけど、

それがこの手の映画の限界、なんだよね……。

総合評価★★★★


なんだかセックスの話をしてるみたいになってきた。

決して、誤解のないよう……(笑)



ジェネオン エンタテインメント
オーソン・ウェルズのフェイク