隣人13号

まずは「おめでとうございます!」ですね。

今、最も旬な女優だった竹内結子が産休に入るため、
業界では相当ショックを受けている人も多い一方で、
相手の中村獅童って、誰?っていう人も意外にいた。



少し前までは、故・萬屋錦之介という大スターの甥で、
「歌舞伎の人?」という程度の認識しかなかった。
どうやら女形の系統らしい。
しかし、歌舞伎の世界では、まだ半人前の存在。
決して美男子とは言えないイカツイ顔で、
映画の世界において特に強烈な印象を残している
歌舞伎界の異端児だ。


このカップルの出会いは、映画『いま、会いにゆきます』
での共演がキッカケ。でも、実はコレ、まだ見てない。
中村獅童出演作で見ているのは、
CMなどのTV出演や舞台を除くと2本。
映画デビュー作の『ピンポン』と、最近作『隣人13号』。
『ピンポン』ではオーディションで役を勝ち取った。
ドラゴンという強烈な主人公の対戦相手役で
異様な雰囲気を漂わせていたが、
今年3月に公開された(もう公開してないかな?)
『隣人13号』は、その何倍も異様で強烈だ。
普段はおとなしい二重人格の主人公・十三の、
凶暴な一側面のみ独立させた人格を演じている。

小学生の時にイジメに遭った主人公が、二重人格となって
イジメた奴の復讐にくる『隣人13号』は、
サイコホラー(R-15 指定)と言っていいだろう。
イジメた奴は元ヤンキー妻(パフィーの吉村由美)と子供一人
の三人家族でアパート暮らし。建設現場で働いている。
その彼と同じ職場に入り、同じアパートに引っ越してきた十三
は、陰惨な殺人事件を繰り返す。その人格が中村獅童。

イジメに遭って、卒業写真撮影にも間に合わず、
外の枠の中に別撮りで収まっている主人公の
写真へのなぐり書きが、また怖い。

「そんな昔の話をいつまで引きずってんだよ!」
と、いじめた側は主張するが、
イジメられた方は顔の火傷跡とともに一生、
引きずっていくのだ。
そのことがとてもよく描かれている。

日本や韓国などアジアの恐怖映画は、
そうした怨恨が基本にある点で、
欧米のホラー映画とは別の恐さを醸し出す。
だから事実が明らかになっていくにつれ、その恐怖は増す。


(以下、ネタバレあり、注意)

イジメられた奴とは関係のない人間まで殺していく中村獅童に、
途中で「やり過ぎでは?」とも思ったが、
過去のイジメも明らかに「やり過ぎ」だ。

「やり過ぎ」と「やり過ぎ」の応酬には解決の糸口などない。

最後にイジメた奴から「ゴメン」のひと言をついに
引き出した瞬間、壊れていく中村獅童がまた凄い。
そこから急速に過去の出来事が変化していき、
主人公は卒業写真に外の枠内ではなく、
皆と一緒に笑顔で収まるようになるエンディングまで、
井上靖雄監督の演出は実に見事。
しかも、これが初の映画監督作らしい。
今年、見た日本の映画では断トツの出来ばえだ。
総合評価★★★★


というわけで、中村獅童の印象というのは、
一途で異様で強烈。
竹内結子も、あのイカツイ風体の
そんなところにまいったのかな?





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