ヴィレッジ(2023年)
WOWOWでエアチェックしておいた「ヴィレッジ」を鑑賞…タイトルを初めて聞いた時、てっきりシャマラン先生のアレなあの映画を日本でリメイクしたのかと思ったら、どうもそういうわけではないらしいとのこと。こちらは…最近、邦画でよく名前を見かける監督、藤井道人が手掛けた作品。社会派なテーマの作品をよく撮ってるイメージがあり、代表的ないくつかの作品のタイトルも思い浮かべることはできるんだけれども、実は…今まで、この監督の作品を一つも見ていないことに気づく(汗)一つや二つ、過去にWOWOWで録画してそうな気はするんだけど…。
とある地方の集落・霞門村…そこは神秘的な“薪能”が行われることでも知られた地区なのだが、最近は近くの山に大きなごみ処理施設が建設され、異彩を放つようになっていた。霞門村で生まれ育った青年・片山優は…不幸な過去を背負い、今はギャンブル好きの母親が作った借金返済のため、ごみ処理施設で働いていた。中には非合法な仕事も多く含まれているが…村長をはじめ村の人間のほとんどがそれを黙認している。ある日、優の幼馴染・中井美咲が東京から戻ってきた。優と同じ職場で働くようになり、彼女の存在が優の転機になったのだが…。
「ヴィレッジ」というタイトル通り、閉鎖的な村社会を舞台にしたお話…どうやらサスペンスらしい。冒頭で、意味深に見せられる“能”、後に、主人公やヒロインが幼少期に習っていたという設定があることもわかる。“薪能”が関わってくるということで、一瞬、市川崑監督の「天河伝説殺人事件」を思い出す…それこそ、横溝っぽい(前述の「天河伝説~」は内田康夫の原作だが…金田一シリーズそっくり)土着ミステリーのような香りもどこか漂う、出だしで期待が高まる。その村には、場違いな巨大ごみ処理場が聳え立ち、今では村の生計と切り離せない存在に!
表向きは…堅気の商売なのだが、実は、こっそり非合法に産業廃棄物の処理とかもしていて、借金返済に苦しむ主人公は、それが犯罪だと認識しながら、一番下の底辺で、こき使われてる。そんでもって、ギャンブル好きの馬鹿な母親のせいで…いくらもがいても、借金地獄から抜け出せない状況。さらに、家族に関する不幸な過去のせいで…チンピラやヤクザ連中からも、イジめられまくっていると。そんな時、東京に出ていた幼馴染、ヒロインが村に戻ってきて…ごみ処理場の“表の仕事”に携わるようになり、幼馴染という接点で、主人公を気にかけてくれる。
最初は、同情すんじゃねーよとか、ヒロインに対しても反発してたんだけど、ヒロインが根気よく接して、気がつけばいい雰囲気になってる。ヒロインの方も、最初からそうなるのを望んでいた節があり、主人公も…あんなにも人生に絶望し、愚痴ばかりたたく根暗野郎だったのに、1回やったら、もうカレシ面してやがって…まぁ、それが自身の転機にもなり、ヒロインと一緒に“表の仕事”を手伝うようになるんですよ。なんかとんとん拍子に仕事もうまくいっちゃって…荒んでいた母親とかも、まるっきり人が変わるし、ヒロイン、どんだけ“あげまん”なんだよ状態だよな。
でもね、そこで“ちょっと待った”って横やりが入る…実は、主人公を“裏の仕事”でこき使っていたチンピラ野郎=村長のバカ息子が、イジメる対象がいなくなっちゃって、ついでに狙ってた女まで持ってかれて、我慢できなくなっちゃうのよ。チンピラ野郎=村長のバカ息子の行動もアホ丸出しで…勝つ見込みがないのに、ヒロインを口説こうとする姿がとにかく痛々しかった。まぁ、主人公…どん底にはいたけど、イケメンなのよ。チンピラ野郎=村長のバカ息子にこれだけは言いたい…お前、自分の顔を見ろよ。親の七光りがなきゃ、お前の方がイジメの対象やろ。
っていうか…「蟹工船」みたいな話と、どうでもいい三角関係を見させられて、一向に事件が起きない。あれ、横溝展開じゃなかったのか?あの村人みんなが奇妙なお面を被って、列をなして歩く“お祭り”のシーンとか、けっこう不気味で…もしかして「ひぐらしのなく頃に」みたいになったりしないかなとか、面白くなりそうな予感はあったんだけど、肩透かしのまま終わったな。一応、中盤あたりでようやく事件が起きるんですけどね…期待したほどの展開じゃなかった。っていうか、隠して、引っ張るほどの謎、真実でもなくてさ、驚きも、盛り上がりもまったくないよな。
どうせだったら…「刑事コロンボ」のような倒叙ミステリースタイルにして、もっと真犯人が完全犯罪を本気で目指すような展開、村を出て刑事になった村長の弟・中村獅童あたりが、真犯人とスリリングな心理的駆け引きを繰り広げるような展開にしても良かったと思うんだよ。それっぽい話にはなってるんだけど…どうなのよって感じだったね。胡散臭い村長の役が古田新太なんだけど、中村獅童との兄弟設定は意外と説得力ある…2人とも、顔がデカい(笑)村長のバカ息子役の一ノ瀬ワタルも同じく顔がデカく…血の繋がった一族感はめっちゃ伝わってきたな。
監督:藤井道人
出演:横浜流星 黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗 西田尚美 杉本哲太 中村獅童 古田新太
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