僕らの世界が交わるまで(2022年)
![僕らの世界が交わるまで [Blu-ray]](https://stat.ameba.jp/user_images/20240812/12/eigasuki/ed/ce/j/o0191022015473856000.jpg?caw=800)
WOWOWでエアチェックしておいた「僕らの世界が交わるまで」を鑑賞…「ゾンビランド」シリーズで知られる俳優ジェシー・アイゼンバーグが初監督を務め、同シリーズで共演もしている女優エマ・ストーンがプロデューサーに名を連ねている、ちょっと不思議な親子のドラマ。家族そっちのけで慈善事業にのめり込む母親役にジュリアン・ムーア、息子であるZ世代の今風高校生を演じる若手俳優も…見た顔だなって思っていたら、リブート版「ゴーストバスターズ」でヒロインのお兄ちゃんを演じていたフィン・ウォルフハードだった。ジェシー本人の出演はなし…。
DV被害者のためのシェルターを運営するエブリンには、高校生の息子ジギーがいた。そのジギーは、いつも部屋に閉じこもり、ネット配信で自作の歌を披露し、それなりに人気のある配信者らしい。何かにつけ、配信と歌で大金持ちになると豪語しているのだが、エブリンは…もっとまともな仕事に就いてほしいと願っており、顔を合わせる度に口喧嘩になってしまう。ある日、シェルターに…ジギーと同じ年ごろの息子を連れた女性が避難してきた。エブリンは彼女の息子カイルを気にかけるようになり、将来の進路について、親身になって話をしていたのだが…。
役者をやってる時のジェシー・アイゼンバーグっていうと…オタクっぽくて、常に早口で喋るようなキャラクターを演じることが多いイメージなんだが…そんなジェシーがいつも演じる役柄のように、劇中登場人物たちがよく喋る作品だった。特に息子のフィン・ウォルフハードは、ネット配信が生きがいで(YouTubeなのか?)、フォロワー数と投げ銭の額でしか価値を測れないような、いかにも今風な若者であり、生身の人間にも、ネットを介した視聴者たちにも、やたらとよく喋りかけていた。これ、もう少し若ければジェシー本人も自分で演じたかったんじゃないかな?
まるでジェシー・アイゼンバーグの生き写しのようにも見えた息子フィン・ウォルフハードは、普段の思いのたけを、自作の歌として表現!ネット上ではそれなりの反応もあるようで…DV被害者を支援するシェルターの運営をしている母親のことなんかも、半ば偽善的じゃねーかと見下し、いつしか自分の歌で大金持ちになるという夢を、本気で抱いているのだった。そんな息子が…学校で恋をする。相手は政治やら環境問題やらに傾倒しているインテリ系の美女で…明らかに高嶺の花なんだけど、彼女の教養の高さに刺激されちゃって、妙に背伸びするんですよ。
下手な鉄砲も数撃ちゃな感じで、相手の急所をピンポイントで捉えて、なんかうまくいきそうな雰囲気にもなるんだけど…所詮は“配信で大金持ちになる”なんて言ってる若造でして、そこでボロが出てしまうんですね。しかも己のミスにぜんぜん気づけていない。一方、母親の方も…ダメ息子を心配しつつ、自分の運営する施設で出会った、自分好みの性格、思想の持主の若者にやたら入れ込んで、親身に接しようとするわけですよ。一歩引いてみると…ウザくて、痛いオバサンにしか見えないんだけど、本人はそれが人のためになってると思って行動してる。
あの若者は、どう見ても、“ネットで大金持ちになる!”って言うてるダメ息子の代わりなんじゃねーかという感じに見えてくる。ここでも、結局…相手の気持ちをちゃんと理解してなかったのよね。要は母親も息子も自分勝手、身勝手なのよ…それが顕著に出ているのが、すっかり家族で忘れられている、2人の眼中に入っていない夫・父親の存在。どこの家庭でも一番よく目にする“家族あるある”な光景なんだけれども…こうやって見させられると、切ないなんてもんじゃなかったな。母と息子は、水と油、反発しあうことで…一応は繋がっていたんだよなと…。
最後はお互いに失敗を経験したことで、ようやく向き合うことができ、スタート地点に立ちましたよってことよね?ストーリーが面白いかと問われると、正直、微妙なところもあるんだけれども…母親役のジュリアン・ムーアも、息子役のフィン・ウォルフハードも、芸達者なので…2人の芝居でなんとなく見ちゃえるんだよな。いつもジュリアン・ムーアが、職場へ出勤する時に、カーステレオで、壮大なBGMを鳴らしてるんだけど…運転してるのは、妙に可愛らしいコンパクトカーだったりして、ふとした瞬間に垣間見えるシュールな笑いとかは、意外と嫌いじゃなかったな。
監督:ジェシー・アイゼンバーグ
出演:ジュリアン・ムーア フィン・ウォルフハード アリーシャ・ボー ジェイ・O・サンダース ビリー・ブリック
【Blu-rayソフトの購入】