豪華なキャストで良いテーマだったのに・・・

 

 

 

★★☆☆☆

 

いくら娯楽映画に徹したとはいえ、ご都合主義にもほどがある。

 

 

<ストーリー>

米国陸軍伝染病医学研究所のサム・ダニエルズ大佐(ダスティン・ホフマン)は、フォード准将(モーガン・フリーマン)に命じられ、アフリカの小さな村に派遣された。その村では、未知のウイルスによって村人たちが次々と死んでいた。サムはウイルスがアメリカにまで広がる恐れがあると判断し、警戒態勢を敷くように進言するが、フォードは“モタバ・ウイルス”と名付けられたこの病原菌の研究をやめるよう命令する。

その直後、カリフォルニア州のシーダー・クリークという町で、住民たちの間に伝染病が発生した。症状はサムがアフリカで目撃したものと同じだった。彼は命令を無視して町に駆けつけ、民間の研究機関である疫病管理予防センターで働く別れた妻のロビー(レネ・ルッソ)と共にウイルスの制圧に取り組む。

モタバ・ウイルスは60年代に米国陸軍が参加したアフリカでの局地戦の際に発見され、陸軍幹部マクリントック少将(ドナルド・サザーランド)によって採取され、生物兵器として使用するためにひそかに保管されていたのだ。

サムは部下のソルト少佐(キューバ・グッディング・ジュニア)と共に、最初にウイルスをもたらした“宿主”がアフリカで密猟された猿であることを突き止める。その頃、少将は生物兵器の事実を隠すため、かつてアフリカで行ったのと同じようにシーダー・クリークの町を焼き払おうと画策していた。

そんな時、ロビーが誤ってウイルスに感染してしまう。(KINENOTEより抜粋)

 

 

 

オープニングはなかなか良かった

1967年、ザイール地方での軍隊で発生したモタバウィルス感染症の悲惨な状況とその処置として村ごと破壊してしまうというオープニング、そして現代に時間が飛んで研究所内の危険レベルを紹介していくまでの導入部はテンポよく面白かったのに、ダスティン・ホフマン演じる主人公と別れた奥さんのプライベートが登場したところからは典型的なアメリカのお気楽な娯楽映画になってしまう。

 
 
感染力が強く村ごと病人だらけ
 
爆弾で一掃
 
 
 

研究所で扱う病原菌のバイオセーフティレベルの描写(ここは判りやすい)  

 

レベル1(連鎖球菌など)

マスクなし

 

レベル2(インフルエンザなど)

マスク着用

 

レベル3(HIVなど)

フィルター付きマスク、ゴーグル、フード付きの作業衣

 

レベル4(エボラなど)

化学防護服着用

 

 

 

そして長くてつまらない別れる夫婦のエピソード

 

まずは荷物のやり取り(出張中の荷物預かりを元妻に頼む)

 

転居する妻と別れのシーン

ここが長い!ここまで長いと“最後は復縁するんだろうな”と先が読めてしまう

 

 

病原菌のアメリカでの感染拡大

アフリカから感染した猿を密輸した青年がシーダー・クリークのペットショップに持ち込み、そこでペットショップの店主に感染。

扱いを断られた青年は猿を森へ逃がし、恋人の待つボストンへ。ボストンで青年と恋人は感染し死亡。

猿を森へ逃がす

 

ボストンの空港で恋人にチュー(濃厚接触にもほどがある)

 

あっという間に死亡、この後、恋人も死亡。

 

 

一方、シーダー・クリークではペットショップの店主の血を検査技師が浴びてしまう。

遠心分離器に手を突っ込んで採血管を割ってしまう。

 

ウィルスが変異し空気感染するようになってあっという間に広がり病院は阿鼻叫喚

 

 

そして、シーダー・クリークの街は封鎖される。

 

 

 

CDCの職員は化学防護服で完全防備

 

シーダー・クリークの病院職員はマスクのみの防護

 

 

 

この後の、政府の閣議でシーダー・クリークを気化爆弾で消滅させることを決める場面は秀逸。

大統領補佐官を演じるJ・T・ウォルシュ(クレジット無し)の演技が見事

このシーンのみの出演だが数分間にわたり、熱の入った演説を聞かせてくれる。

 

 

そして、お約束の展開が始まる

まだ主役級のスターではなかったケヴィン・スぺイシ―。なんとなく登場シーンから死亡フラグが立っちゃっている感じだったが案の定、化学防護服が破けて感染、グチョグチョになって死んでしまう。

アリッ?

 

防護服が裂けた

 

グチョグチョになって死んでいく

 

 

一方、ルネ・ロッソもケヴィン・スぺイシ―の採血していて針刺し事故を起こし感染してしまう。

アリッ?

 

やってしまった。

 

そこそこ重症化にむかっていてもきれいなお顔をキープ。

 

 

 

後半はご都合主義のオンパレード!

 

大統領令で20時に気化爆弾投下が行われると決定。あと10時間ぐらいしか時間がないのに、ここからの怒涛の展開が凄い。

 

①まず輸入動物の検疫所で青年が小動物を不正に持ちこんだことがわかる。

 

②ヘリの飛行時間が60時間のキューバ・グッティング・Jrの操縦でたちまち連邦政府ビルへ到着

 

③船を突き止めたら、たまたま前にいたおばさんの知り合いに沿岸警備隊がいた!(超ラッキー

 

④船に到着、飛行時間60時間のグッディングの操縦で華麗に船にヘリを横づけしてとホフマンが飛び移る

 

⑤猿に接した船員がたまたま写真を撮っていてわかりやすい位置に貼ってくれていたのですぐに宿主特定

 

 

⑥放送局で猿の目撃情報を呼びかけたら、たまたまその時間にテレビを観ていた人の子供が猿の居場所を知っていて、おびき出したら広大な森からあっという間に出てきてくれた!(ラッキー

 

⑦群のヘリコプターに追跡されるも飛行時間60時間のグッディングが橋の下をくぐったり、トラックの上にピタリとつけるという本職顔負けの離れ業を披露し難なく切り抜ける。(おまけにヘリの操縦が本職の軍人の銃弾は全然当たらないし)

橋をくぐる

 

トラックの上にピタリとつける

 

⑧抗血清を作ってまずは瀕死の元妻ルネ・ロッソに点滴して助ける。

 

⑨ここで、気化爆弾投下の情報が入り阻止にホフマンとグッディングが向かうので血清増産は一時中止することになるのでおそらく町の人の何人かは死亡しただろう。もし、もう少し早く爆弾投下の情報が入った場合はルネ・ロッソをほったらかして爆撃機の説得にむかったのだろうか?(自分の元妻に抗血清の投与が終わった絶妙のタイミングでの情報取得に超々ラッキー

 

⑩日没前にすべてのミッションが終了

 

 

 

まるで宝くじに当たり続けたような幸運が続き、たった半日ですべて解決。

今までは何をしていたの?

「カリフォルニア・ダウン」を観た時も思ったが、家族が危険にさらされると公務やルールを無視してく無茶苦茶な行動に出て多くの人が死にながら家族はギリギリで助かるという勘違いした家族愛はどうにかならないのだろうか?

 

 

当然、途中でこんなことしていて

 

最後はやはりこうなる

 

 

娯楽映画としてはそこそこ面白い(60点ぐらいの出来)、でも同じ感染を扱った作品でも感染経路の特定の丁寧なリサーチ、ワクチン製造や大勢への接種方法、行政側の対応までを詳細に描いた「コンティジョン」の出来には遠く及ばない。

 

 

 

キャストはやたら豪華だがキャラクターの設定が類型的。

ダスティン・ホフマン演ずる主人公ダニエルのキャラクターも見事に、これまでのB級娯楽映画の主人公パターンで、仕事能力は高いが、直情型で上司に逆らい、家庭では妻に愛想をつかされている。適当な直観での動きが何故かすべていい方に当たる。ある意味最強の主人公で、これなら絶対に失敗はしない。

感情出すぎ

 

 

脇役は豪華でドナルド・サザ―ランドは楽しそうに悪役を演じ、モーガン・フリーマンも後半でホフマンの味方になる美味しい役どころ

ドナルド・サザーランド

 

モーガン・フリーマン

 

キューバ・グッディング・Jrも若きエリートが最初は失敗しながら、最後は成長してホフマンと一緒に大活躍という、この手の映画によくあるパターンだった。

飛行時間60時間で、ヘリの曲芸みたいな操縦技術は“ありえないだろう”

 

 

 

カラー128分

 

【鑑賞方法】配信(字幕)U-NEXT

【英題・原題】OUTBREAK

【制作会社】 アーノルド・コペルソン・プロ

【配給会社】ワーナー

 

【監督】ウォルフガング・ペーターセン

【脚本】ローレンス・ドゥウォレット ロバート・ロイ・プール

【制作】アーノルド・コペルソン ウォルフガング・ペーターセン

【撮影】ミヒャエル・バルハウス

【音楽】ジェームズ・ニュートン・ハワード

【編集】ウィリアム・ホイ リンジー・クリングマン スティーヴン・E・リフキン ニール・トラヴィス

【美術】ウィリアム・サンデル

【衣装】エリカ・エデル・フィリップス

【特撮】ボス・フィルム・スタジオ

 

 
 

 

【出演】

ダスティン・ホフマン:サム・ダニエルズ大佐

ルネ・ロッソ:ロビー

モーガン・フリーマン:ビリー・フォード准将

キューバ・グッディンバ・Jr:ソルト少佐

ケヴィン・スぺイシ―:ケイシー・シュラ―少佐

ドナルド・サザーランド:ドナルド・マクリントック少将

パトリック・デンプシー:ジンボー・スコット