山田洋次監督最新作。


『小さいおうち』
健史(妻夫木聡)が慕う親戚のおばあさん・タキ(倍賞千恵子)が亡くなり、遺品を整理していると、彼女の自叙伝を綴った大学ノートが。
昭和11年。東北から上京して来た純真な娘タキ(黒木華)は、東京郊外に建つ、モダンな赤い屋根の家で、女中として働くことに。
その家で暮らすのは、玩具会社の重役である主人の雅樹(片岡孝太郎)、妻の時子(松たか子)、5才になる息子の恭一の3人。
穏やかな毎日だったが、ある日雅樹が部下の板倉(吉岡秀隆)を連れて帰ってから、時子の様子か変わる。
時子は、オシャレで芸術家肌の板倉に、ほのかな恋心を抱いてしまったのだ‥‥。

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原作は、直木賞を受賞した中島京子さんの小説です。
そして、山田洋次監督の、82作目の作品。
82作って!

今でこそ、住み込みのお手伝いさんがいる家庭なんて、結構なお金持ちですが。
昭和初期の頃は、中流家庭でも嫁入り前の娘さんを、女中さんとして雇うことは珍しいことではなく。
娘さんも、花嫁修業を兼ねて奉公に出ることは、珍しくなかったそうです。タキさん談。

今ほど物が溢れている時代ではないですが。
欧米の文化がどんどん入ってきて、明るく華やかな部分はあったわけで。
日本人たちも、今よりずっとモラルを大事にし、慎ましく生きていた時代なのです。

そんな時代を、清らかに生きていた、若き日の純粋なタキさん。
その時、お世話になっている奥様に不倫疑惑が。
田舎で育ち、男の人の手すら握ったことのないタキには、予想外すぎる出来事に、小さな胸を痛め悩むのです。

そして、ちょいちょい挟み込まれてくる現代のタキと、その時代の出来事に興味津々の健史。
自叙伝を書けと勧めたのは、その健史で。
途中で途切れた自叙伝だったのですが、ひょんなことから、その先を知る手がかりが‥‥。

黒木華さん、いいですねえ。
その時代から、タイムマシンで純粋な田舎娘(失礼)をスカウトしてきたかのようなハマリっぷりでした。
さらに、吉岡秀隆さんの犬感。
本編とは全く関係ないですけど
なんかこの映画の吉岡さんが、すごく犬っぽく思えたので書きました。笑

どんな人にも、生きてきた歴史があり、少なからずドラマがあるのです。
そして年を追うごとに、いろんな経験をして、スレてきたりするものなのです。
でも、お亡くなりになるまで、小さなおうちで起こった、小さな出来事で心を痛めていたタキさん。

その純真な心に、つい僕も涙ぐんでしまったのでした。


☆個人的見どころ
 ・黒木さんの田舎娘っぷり
 ・預けられた手紙
 ・トンカツ