哀しいくちづけ‥‥。



『くちづけ』

かつて人気漫画家だった愛情いっぽん(竹中直人)と、知的障害を持つ娘・マコ(貫地谷しほり)。

親子は、知的障害者の自立を支援するグループホーム「ひまわり荘」にやってくる。

ある事件から大人の男が苦手になっていたが、ホームにいたうーやん(宅間孝行)には心を開き始めるマコ。

やがて、マコの誕生日でもあるクリスマスに、結婚すると言い出した二人。

しかし、みんなが幸せに暮らすひまわり荘に、やがて厳しい現実が‥‥。


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うーやん役で出演もされている、宅間孝行さんの原作・脚本です。多才ですね~。

元々は劇団のお芝居だったのを、堤幸彦さん監督で映画化。ですって。


いや~、もう。

なんて嫌な映画だろうか。

面白くないとか、凡庸だとか言う意味ではなくて。

辛い辛い気持ちになりました。見終わって。


知的障害を持ってる人を題材で扱うのは難しいと思うんです。

聖人のように扱うと、逆に差別くさく感じてしまいますし。

悲惨な面ばかりを描いても、それはそれで誇張を感じて現実味がないですし。

そういう意味では、かなりフラットに描かれていたのではないかなと、僕は感じました。

彼らの良い面も悪い面も。

一緒に暮らしていて楽しい面もしんどい面も。


なおかつ、知的障害の子を持つ親御さんの苦悩を、一歩も二歩も踏み込んで扱っておられました。

我々なんて、結局無関心じゃないですか。自分の身近にいる人以外は。

国がちゃんとやってくれりゃええやないかい。

そのために税金取ってるんやろがい。と。


でも、僕も含め、みんなが薄々感づいているように。

あえて直視しないでおこうとしていた部分があるわけで。

サポートがうまく行かず、結果として人間らしい暮らしができなくなる人は、決して少なくないのです。


それを悲観し、我が子の将来を嘆き、世を憂いた愛情いっぽん先生。

誰よりもマコのことを想ういっぽん先生と。

いつまでもお父さん=いっぽんのそばにいたいマコ。

いや、いつまでもそばにいれると思っているマコ。

なのに、なぜこんな‥‥。


現実は厳しいからこそ、せめて映画の中では幸せに暮らして欲しかったです。

いや、こういう厳しい話だからこそ、逆に印象に残り、問題提起になるんだろうか。


竹中さんはじめ、役者さんたちは皆さん体当たりの熱演で。

そして、映像がとても美しかったです。

美しいからこそ、物語の悲惨さが、本当に辛かったです。



☆個人的見どころ

 ・いっぽんとマコは‥‥

 ・マコとうーやん

 ・スライド