ピル・カムソン監督、ファン・ジョンミン、キム・ジェボム、イ・ユミ、リュ・ギョンス、チョン・ジェウォン、イ・ギュウォン、イ・ホジョンほか出演の『人質 韓国トップスター誘拐事件』。2021年作品。

 

韓国の国民的スターのファン・ジョンミンは、記者会見の帰りに誘拐される。彼を誘拐したのはコンビニの店主誘拐殺害犯の一味だった。そのコンビニのアルバイト店員のソヨンとともに監禁されたジョンミンは、彼の口座から5億ウォンを送金するよう要求される。しかし、送金したあとに二人の命はないだろうことは明らかだった。

 

今年の初めに『ただ悪より救いたまえ』を観たばかりのファン・ジョンミン主演映画。

 

韓国映画は僕は今年2本目なんですが、7月に是枝裕和監督によるソン・ガンホ主演の『ベイビー・ブローカー』を観ていることもあって、韓国映画をわりと観ているような気になってたりしますが。

 

この『人質』はアンディ・ラウ主演の中国映画『誘拐捜査』(2015年作品。日本劇場未公開。2017年にソフト化)の韓国版リメイク的な作品なのだそうで。

 

 

 

僕はオリジナル版である『誘拐捜査』の方は観ていないので2本の作品を比較はできませんが、実話がもとになっているのだとか。

 

韓国版では、俳優ファン・ジョンミンが俳優ファン・ジョンミンを演じる、ということで、どこまでが「素」でどこからが「演技」なのかわからなくなるような、そういうトリッキーな内容を期待していました。

 

ファン・ジョンミンを誘拐する犯人役の俳優たちは韓国でもあまり知られていない若手の人たちを起用したそうですが、そもそも僕は韓国の俳優さんをそんなに知らないので、そこんとこはリアリティを感じさせてくれましたね。

 

 

 

 

主犯格のギワンを演じるキム・ジェボムはまるでどこかのお笑い芸人のようなのっぺりした顔で一見迫力がないんだけど、だからこそ完全にサイコパスな役柄とのギャップが怖くて、巧いキャスティングだと思いました。

 

ナンバー2的なドンフン(リュ・ギョンス)との微妙な力関係も面白かった。

 

リュ・ギョンスさんは、『ベイビー・ブローカー』ではソン・ガンホさん演じるサンヒョンの知り合いで、彼から借金を取り立てる青年テホ役でした。

 

『ベイビー・ブローカー』でもチンピラの役柄だったし、今回もやはり凶悪な犯罪者役で半開きの目が不気味だったけど、髪の毛が長めの普段のご本人の顔はシュッとしたイケメンで、ちょっと宮沢氷魚さん…というよりもお父さんの宮沢和史さんの若い頃に似てるんだよね。あ、また韓国の俳優さんと日本の人のそっくりさん探しちゃったけど。

 

これは、僕がここしばらく観た作品がたまたまそうだったのか、それとも最近はそういう傾向なのかわかりませんが、韓国映画で以前のようなエグい残酷シーンを目にすることが減ってるような気がするんですが(ホラー系は観ないので知らないけど)。

 

『ただ悪より救いたまえ』もそうだったけど、題材は相変わらず残酷味溢れているものの、グロなショットを直接見せることを避けてるように感じられる。レイティング(年齢制限)を考慮したものなのかな?

 

それから、街なかでの激しいカーチェイス・シーンがあって、そういうことは今の日本ではできないから羨ましいですよね。『ベテラン』もそうだったけど、迫力の面で映画にかなり貢献していたのではないかと。こういう刑事ドラマだったら定期的に観たいな、と思わせる。

 

『ベテラン』と同様、エンタメ要素が勝っていて、実録モノっぽさはそんなに強調してなかった。

 

 

『ベテラン』は『人質』の中でもファン・ジョンミンの主演作としてタイトルが挙がってました。劇中で『ベテラン』の登場人物の名前を伝えることで危険を知らせる、という場面もあった。

 

『ベテラン』のリュ・スンワン監督は、『人質』では製作を担当しています。

 

上映時間は94分で、だからしんどさも感じないし、それでも出演者たちの熱演で生々しさや痛さ(ほんとに殴ったり蹴ったりしてるようにしか見えない^_^;)、気持ち悪さはちゃんと伝わるので見応えはありましたが、ただ、観る前には僕はファン・ジョンミンがもっといろんな演技のヴァリエーションで犯人たちを翻弄するんだと思っていたんですよね。

 

そこんところを大いに期待していたんですが、ファン・ジョンミンが見せる「演技」は迫真性はあるものの、「薬が切れて涎垂らして失禁する」とか、「人としての弱さを見せて人質の女性を見捨てるフリをする」とか…それは果たして素なのか演技なのか、と惑わされるというよりは、ファン・ジョンミンさんが演技のお手本をしてみせているように見えて、思ったほどドキドキしなかったし、それよりも僕が期待してたのは、演技力で自分が実際に持っている以上の力を持っているように相手に思わせたり、それこそ別人になってみせるぐらいの化け方を披露してくれることだったんですよね。

 

たとえば、今年の11月に公開予定(愛知や静岡、長崎、宮崎などでは12月9日から)の『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』は、自分がユダヤ人であることを隠してペルシャ人であるとナチスの将校に信じ込ませようとする男性のお話のようだけど、そういう、知恵と演技力で危機から脱する物語なのかと思っていたんだよね。

 

 

 

 

 

そういう部分に関しては、わりと肩すかしではあった。いや、繰り返すように迫力ある場面もいっぱいあるし、役者陣の演技はいいから緊迫感も持続されてけっしてつまらなくはないですけどね。

 

サクッと観られる長さだし、気になるかたはご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

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