リジェクト、そしてユニバーサルアプリへ | えほんや通信

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名作童話の電子出版「えほんや」の編集長・原 真喜夫のブログ。こどもの本と教材、雑誌、実用書の編集を手がける編集プロダクション・スキップの代表取締役。アロマテラピーにも目覚める。村上春樹、マーヴィンゲイ、寿司と焼き鳥、日本酒とワイン。

リジェクト

ある朝、Appleからのメール

それまで快調にアップルの審査を通過していた「えほんや」の絵本たち。
iPhone版の方向も決まり、実作のビルドも完了。
Appleへ申請し、1週間後の販売開始を待った。

10月23日の朝、出社するとAppleからのメールが届いていた。
『あなたのアプリを審査したが、これを販売開始するわけには行かないよ。
 詳しくは、iTunes ConnectのResolution Centerにあるからね』という内容だった。
「ふ~ん、これが、リジェクトってヤツか」
と、最初は結構、平然としていた。

アプリの名称に"iPhone"とつけてはいけない
というルールに違反していただけだと思ったのだ。
な~んだ。それでリジェクト、申請却下か…。
ま、手直しして再申請すればいいや、とそのときは気楽なものだった。
(実は、それ以外に、もう一つ大きな理由があったのだが、
 その時点ではまだ気づいていなかった)

たび重なるリジェクト
11月2日、11月10日とリジェクトも3回目になると、
かなり冷や汗が出てくる。
何がダメなのか理解できず、
「こうやって言われた通り作り直しているし、
こちらでテストしてもきちんとアプリは動く。
どこを治せば良いのか、教えてほしい」
と、こちらからAppleにメールで問い合わせた。

11月14日にAppleから返事。
「いくつかの問題がある。それについては、詳しくはマニュアルを見よ。」
という内容だった。

『わかってるって、読んでるって。
それでも、どこがダメなのか分からないから教えてって言ってるんじゃないか』
とかなりキレてきた。

…実は根本的な見落としがあった。

アドビサポートデスクへの問い合わせ

11月16日に4度目のリジェクト通知。
それを受けて、今度はadobeさんに問い合わせた。
adobeさんは日本のサポートデスクなので、
電話で、しかも日本語で話せる。

そして、根本的な問題がわかった。

iPhone版だけの単独アプリを作れない(2012年11月時点での
adobe さんのシステムを使っては…)ということだったのだ。

「たぶん、そのためのリジェクトだと思える。
 ただし、もう少し内容を確かめたいので回答は週明けに」
という、adobeさんの回答だった。

2012年11月16日は金曜日だった、17日、18日の週末は本当に
頭を抱えて、どんな解決方法があるのかを考え続けた。

いくつかの選択肢があったけれど、
「お客さまにとって一番いい形が、その商品のあるべき姿」
だろうという結論に、日曜日の午後にはほぼ達した。

それは、ある絵本に250円を一度払えば、
iPadでも、iPhoneでも、どちらでも見ることのできる
「ユニバーサルアプリ」
とすることへの変更だった。

iPad版とiPhone版はまったく別の物として販売するという、
単行本と、その文庫版のような形の販売方法を考えていた
当初の計画は、ここでバッサリと捨てることにした。

ただ、そのためにはどのようにアプリを作れば
問題なく販売開始できるのかという
システムがらみの問題が、まだ、解決できなかった。

ユニバーサルアプリへ

Adobeさんの全面的な協力もあって、11月21日(水)には
ようやく「これならいけるはず」という
方法がかたまり、appleへ申請をした。
同時にiPad版も手直しをして、申請が通った時点で、ver3.0.1とする
というかなり綱渡りの手法も決めた。

このころ、社内では
「これ、普通の会社なら、この時点でプロジェクト崩壊だな」
とよく言っていた。

まったく予定外のできごと、度重なる仕様の変更、
そのたびに伸びる作業時間。残業の山。
どこまで頑張っても最終的にはappleの判断次第、という厳しさ。

12月4日、iPhone版ローンチ
販売開始となったその日は、本当にホッとした。

「えほんやアプリ」が初めてready for sale(販売開始)
となった時から、個人的にローンチソングとなっている
adiemus の "Beyond the Century" を、その朝、大音量で流した。

2012年4月17日「えほんや」をスタートさせてから8ヶ月、
念願のiPhone版が販売開始となった。

オープン前はなかなかうまく進まない開発に
精神的にかなり追いつめられていたけれど、
今回は、危機をかなり客観的に楽しんでいる、自分がいたように思える。

度重なる失敗が1つずつ経験として
アプリ開発のノウハウ蓄積につながることを実感した日々。
そして、やればやるほど、お客さんが増えて行くという感触。

今となっては、ユニバーサルアプリ以外の形は考えられない。
iPad版と、iPhone縦持ち、iPhone横持ち、と
1つのお話を3つの見方で楽しめる。

それぞれ英語と日本語があるのだから、
1粒で6度美味しい、といったら言い過ぎだろうか…。

良いものを、
 読者がいちばん喜ぶかたちで届けよう!
  そして、世界へ!
世紀を超える電子のえほんを、
 作りだすのだ!