ジェームズ・タイラー・ケント博士による 

「ホメオパシーのマテリア・メディカに関する講義」(1911年）より和訳します。

ホメオパシーは、宇宙指数になる程、希釈し振盪した物質が、 

どのような症状を作り出すかを証明し、 

それを、その症状を持つ人に与えることで、体自身が情報を得て、

 自ずと治癒に向わせる、というメソッドの代替医療です。

マテリア・メディカでは、その症状の記録が書いてあります。

Phosphoricum acidum

（フォスフォリクム・アシドゥム / リン酸）

Phosphoric acid 患者の発言、行為、外見を考えると、
「精神的衰弱」という考えが頭に浮かぶ。

精神的に疲れているようである。
質問されると、この人はゆっくりと答えるか、
何も言わずに質問者を見るだけだ。
話すことも考えることもできないほど疲れている。

「私に話しかけないで、放っておいてくれ」
と言う。

この状態は、急性疾患と慢性疾患の両方に見られる。
精神的に非常に疲れており、全く疲れ果てている。
慢性疾患においては、長時間の勉強で発症し、
会社員は長期にわたる心配事で、
虚弱な女子学生は、ほんの少し頑張っただけで衰弱する。

急性疾患において、特に腸チフスでは、
話したり質問に答えたりすることを嫌がる。
ただ見つめるだけだ。
最終的に起き上がって、
「話しかけないで。とても疲れているんだ」
と言う。

何を言いたいのか考えられず、
質問に対する答えを構築することもできない。
別の原因は、若い男性や自慰に興じている人々の
過剰な性的行為である。
衰弱や反応の欠如、無気力、インポテンツを伴う昏迷状態、
精神的衰弱、そしてまるで背骨が折れたかのような状態である。

どのケースでも、最初にメンタル面の症状が現れる。
レメディは、メンタル面から肉体面へ、脳から筋肉へと作用する。

これは非常に顕著で、 Muriaticum acidと対照的である。
後者のレメディでは、筋肉の衰弱が最初に起こり、
筋肉が衰弱した後もずっと、頭脳は明晰であるように見える。

Phosphoric acidでは、頭脳の衰弱後も筋肉は強く見える。
患者は身体的に元気そうに見える。

この人は、体は大丈夫で、仕事もできるし、
激しい運動もできると言うが、
心は疲れ、メンタル面は無気力で、足し算はできず、
新聞を読んで、考えの流れを把握することもできず、
状況と結び付けることもできない。

家族の名前を忘れる。
会社員は社員の名前を忘れ、混乱する。
しかしながら、運動はできるし、外出して歩くこともできる。
筋肉の衰弱は後からやってくる。

Phosphoric acidはまた、身体に大きな衰弱をもたらす。
背中がとても疲れたり、筋肉がとても疲れたり、
そこら中疲れ、麻痺したように衰弱する。

後にインポテンツになり、性交を嫌がり、性欲を喪失し、
勃起できず、抱擁の最中にペニスが緩み、
行為が完了できない。(Nux v.)

仕事上の悩みや長引く悲しみから病気になる。
片思いや失恋に苦しむ少女。
他の人よりも激しく苦しむ人もいれば、
哲学的に見える人もいる。

「心配や、悲嘆、悲しみ、悔しさ、ホームシック、
　失恋から発病し、
　特に、眠気や、朝にかけての寝汗、衰弱を伴う」

患者はやつれ、衰弱し、どんどん弱る。
顔の萎縮、寝汗、背中の冷や汗、
足よりもどちらかというと腕や手に冷や汗をかき、
手足が冷え、循環が悪く、心臓が弱り、
ほんの少しの怒りで風邪をひき、胸に留まり、
乾いた空咳が出て、胸がカタル状態や結核になり、
徐々に衰弱と衰弱が進み、顔色が青白くなる。

この衰弱の間に目眩が起きる。
ベッドに横たわっている時の目眩は、
横になっている間、浮いているように感じられる。
手足は持ち上がっているように見える一方、
頭は動いていないようで、まるで手足が浮いているかのよう。
鬱血性の頭痛は、女子生徒において、
少しの頭を使い、目を使っただけで起きる。

骨膜痛。
骨が擦りむかれたかのように痛み、動くと改善する。
横になると、痛みは横になっている側に移る。

症状のほとんどは、暖かく保つこと、絶対的な静けさ、
一人で静かにいることで改善する。

心身の労作や、また話しかけられて症状が悪化する。
朝の頭痛。
頭痛のため、横にならなければならない。
話しかけられると頭痛が悪化する。
寒さに敏感。
暖かい部屋に敏感。

頭痛では、痛みは後頭部から始まり、頭頂部まで広がることが多く、
頭頂部に圧倒的な重みがかかっているように感じる。
動きや会話、光によって痛みが悪化する。

「頭に上から下への重りのような圧力がかかる」

これらの頭痛は、メンタルの弱さや、脳疲労を伴い、
非常に疲れ、疲労困憊する。
目眩は、耳鳴りと目のかすみを伴う。

微熱でのこの使用は、検討する必要がある。
症状はゆっくりと現れ、ゆっくり衰え、徐々に衰弱が進む。
このような症状は、進行した腸チフスに見られる。

衰弱し、腹部は鼓音を伴い、舌は乾燥して茶色く、歯に膿が付着し、
徐々に意識不明になり、
軽い喉の渇きから激しい喉の渇きに変わり、
発汗中に大量の水を欲しがる。

一人になりたがり、
質問をゆっくりと理解しているかのように、
生気のない目で質問者を見つめる。
瞳孔は収縮または拡張し、目は落ち込み、表情はヒポクラテスのよう。

発熱が続き、
鼻や肺や腸から出血したり、あらゆる粘膜から出血し、
目の周りが窪み、
唇は変色して汚物に覆われ真っ黒になり、
衰弱が徐々に進行する。

最初から精神状態は非常に顕著であり、
最終的に筋力低下が現れ、顎が落ちるまで悪化し、
患者は極度の疲労で死にそうになる。

このような衰弱状態は、出血によって起こる可能性がある。
(Chinaは、古いホメオパシー療法士の間では定番レメディだった)。

出血を抑えて回復を促し、浮腫を防ぐ。
貧血のような状態になり、
唇や舌が青白く、顔や手足が蝋のように白い。

体全体に痛みやうずき、動くと緩和し、寒さで悪化する。
痛みは根深く見え、神経に沿っている事が多いが、
特に長骨に沿っており、
まるで骨が削られたかのようだったり
骨に粗い器具が引っかかったかのようだったりする。

痛みは夜間に悪化することが多い。
ひどい骨の痛みがある。

胃が働かない。
食べ物が、胃の中に残って酸になる。
酸っぱい嘔吐。
頭が鈍い老齢の消化不良患者。
症状は、酸っぱい飲み物や冷たい飲み物、
しつこい食べ物から起きる。
通常の排便後、腹部の中に鳴るような感覚がある。

Phosphoric acidの症状のほとんどにおける顕著な特徴は、
尿が乳白色になることである。
排尿時に乳白色になったり、尿に乳白色の薄片が混じったりする。

男性で、尿道が詰まったように見える場合があり、
検査するとこの小さな乳白色の薄片が見られる。
尿は放置すると小麦粉やチョークのように、
またはリン酸塩の沈殿物が混ざったように乳白色になる。

Phosphoric acid では、下痢で終わる事によって、
症状が緩和されることが多い。

多量で薄く水っぽい便。
量から判断すると、患者は疲れ果てているように思われる。

子供が、夏に多量の水っぽい便が出る。
多量で、おむつが役に立たないほど。
便が母親の服や床にまで散り、大きな水たまりを作る。
便はほとんど臭いがなく、薄くて水っぽく、
子供は何もなかったかのように笑う。
母親はそれがどこから来るのか不思議に思うが、
子供は元気そうに見える。

Phosphoric acidの下痢は、多くの場合、多くの症状を改善し、
患者の気分が良くなる。
慢性下痢は、多量で薄く水っぽく、白っぽい灰色で、
患者は気持ちよく、自由で、幸せを感じる。
下痢が治ると、患者は悪化し、
結核や衰弱、疲労困憊、脳疲労の症状が現れる。
下痢をしないと決して気分が良くないと言う患者もいる。

Podophyllumは正反対である。
同じ子供を例に挙げよう。
便が非常に多く、床中に広がり、
母親はそれがどこから来るのか不思議に思うが、
便は不快臭で、ひどい悪臭を放ち、
患者は死にそうに見え、口と鼻は引きつり、
顔つきはヒポクラテスのようで、ほとんど意識がない。

どちらも痛みのない便が出るが、
Phosphoric acid はそれほど衰弱していない。
Phosphoric acid の便は白っぽい灰色で、汚れた白いペンキのよう。
Podophyllumでは黄色。

Gratiolaも同様の衰弱状態だが、体液は緑色の水で、
緑色のガラスを通して光が輝いているように見え、
ベトついて、緑色の胆汁のように見える事がある。

下腹部は、膨れ上がり、鼓音がし、
腸チフスのような腸の激しい痛みがある。

「白または黄色の水様性下痢で、慢性または急性で、
　痛みや著しい衰弱や疲労感はない」

便が水っぽい時、黄色になることはまれである。
便がどろどろしている時は、黄色だ。
水っぽい時は、色が薄く、乳白色のこともある。
黄色い時は、コーンミールのようにドロドロ。
腸チフスのような状態になると、薄く粘土のような感じになる。

「下痢だが衰弱しない。
　夏の暑い時期に風邪をひいた後、
　水っぽく慢性で激しい胆汁や粘液が、20か月間続く。
　急速に成長しすぎた若者が酸により、老人のように見える。　
　食後消化されず、便は緑がかった白色で、痛みはない」

中毒による下痢の場合、Phosphoric acidに関連する症状が
見られることがある。
クラレットのように酸味のあるワインや、
酢、レモンなどの酸から起きる下痢の場合は、
必ずAntimonium crudumを調べなさい。
これはこのレメディの非常に顕著な特徴である。
コレラに有効。

男性生殖器では、性機能が衰弱し、長時間消耗し、インポテンツ。
自慰や激しい疲労感を伴う夢精がある。

「前立腺漏出症。
　勃起の度すぐに前立腺液が出る」

軟便の場合でも、前立腺液が出る。

抜毛は顕著な特徴で、陰毛、髭、眉毛、頭髪が抜ける。
抜毛に関しては、Natrum、mur.やSeleniumと密接に関連している。

Selenium は、頭髪、眉毛、まつ毛、ひげ、陰毛、全身の毛髪が抜ける。
Natrum mur.は、毛髪が非常に薄くなる原因となり、出産中に陰毛が抜ける。

Phosphoric acidは厄介な帯下を引き起こし、
その色は黄色で、主に月経後に出て、痒みを伴う。
多量の黄色く薄く酸性の粘液が出て、萎黄病を伴う。

長期間、子育てをしていたり、双子を育てている女性、
そして母乳をたくさん出している女性に適している。
その人は疲れて衰弱している。
体液や血液を喪失している。
長期の授乳や、前述のような原因により衰弱している。

Phosphoric acid患者は、脳疲労や衰弱の末期に
胸部疾患に陥りやすい。

下痢が起これば胸部疾患は回避できる。
下痢を止める収れん剤や、患者に合わないレメディを使用すると、
最悪の結果を招く事になる。

患者は結核にかかり、呼吸困難になり、咳をし、胸部が苦しみ、
肺の構造変化に至る。

Phosphoric acidの兆候は、
組織の変化にはほとんど見られないが、
患者の初期状態や、神経質な状態、乳白色の尿、
長期間続いている下痢に見られる。

胸部の症状は急性で、
チフス性肺炎や微熱が続き胸部の問題を引き起こすなど、
Phosphorusとよく似ている。

精神症状を伴う長期の肺炎、反応の欠如、肺炎末期の浸潤。
血を吐く。

発熱が長引くと心臓が弱くなり、動悸と精神症状が現れる。
性的興奮時に動悸が起こる。
発熱が長引くと膿瘍ができやすい。

手足や関節に影響が出る。
股関節の痛み。
関節間の長い骨が痛み、動かすと楽になる。
老齢者の痛風体質。
組織が弱くなる。

骨の上の肉が薄いところに赤い斑点が現れ、
その部分が炎症を起こし、開いた潰瘍になる。

発熱後、筋肉に膿瘍ができ、
足首の周りや脛骨の肉が薄い部分が、分子レベルで弱くなる。
Phosphoric acid は骨膜と特別な関係がある。

骨膜炎。
夜に脛骨が痛む。
骨は、擦りむかれたような感じがする。
手は冷たく、足は熱い。
脚に潰瘍があり、水っぽくて不快な分泌物が出る。

おでき、膿瘍、膿疱、その他の湿疹。
化膿性発疹、組織が弱くなる。

神経質な状態や、著しい無関心、衰弱と震え、失神、
極度の神経衰弱、ヒステリーな感情がある。

全身に、特に体毛のある場所で、毛根に何かいるかのように、
ムズムズした、チクチクした、這うような感覚、蟻走感がある。

特に過剰な性行為で衰弱している人に起こる。

「全身に蟻走感がある」

背骨に痛い部分があり、背中がだるい。
腰痛がある。

「指の間や関節の曲がり目や手が痒い」

ヘルペスや湿疹、丹毒がある。

皮膚に大きな紫色の斑点ができ、毛細血管から血液が漏れ出し、
斑状出血が起こる。

皮膚の潰瘍や、癰(よう)、イボ、凍瘡、こぶができる。

刺すような痛みや燃えるような痛みを伴う魚の目は、
一部が黒くなり、皮膚の血液循環が悪くなる。

皮膚は萎縮し、老化して灰色になり、患者は衰弱する。

Phosphoricum acidum（フォスアック / リン酸）のマテリア・メディカ