判例タイムズ1535号で紹介された裁判例です(東京高裁令和6年11月12日判決)。

 

 

事案の概要や問題の所在等については以前紹介した下記の記事をご参照ください。

 

 

自賠責保険から回収した人傷社に対する紛セの裁定により賠償金を支払った共済の不当利得返還請求の可否 | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

本件は、交通事故当事者間で訴訟が行われたというわけではなく、事故当事者において「判決又は裁判上の和解」が行われていない場合にも当該約款が適用されるのかについての解釈が問題となりました。

 

 

判決は、「判決又は裁判上の和解」については、いずれも文言上その主体が限定されておらず、実体法上の権利関係からの乖離を抑止する機能は、当事者が限定されていなくても機能することに照らし、「判決又は裁判上の和解」の一方の当事者が被害者や賠償義務者であることが典型であろうが、そうであることを要するものとは解し難いとしました。

 

 

そして、本件では、対人社である保険会社からは示談金が、人傷社である保険会社からは人傷保険金が支払われており、対人社又は人傷社として交通事故による損害賠償額等の算定を専門的かつ日常的に行い、本件事故による損害賠償額等の算定を専門的かつ日常的に行い、本件事故による損害賠償額等についても強い利害関係を持つ当事者間の訴訟であり、かつ、本件訴訟以前から、両社間で損害に係る情報のやり取りが行われていたことを踏まえると、人身損害額が、本件事故に係る実体法上の権利関係に照らして相当な内容のものであったと推認され、また、本判決による上記金額の認定は、本件代位条項のただし書所定の「賠償義務者があり、かつ、判決又は裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額が算定された場合」に該当すると認められ、本判決により認定する上記の金額は、両社間でに上記人身損害額についての争いがなく、それを受けて認定されているという経緯に照らし、本件代位条項における「その算定された額が社会通念上妥当である」との要件も満たすものと認められるとしました(不当利得返還請求を認容)。