東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、受託収賄容疑で再逮捕された大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)側が、出版大手「KADOKAWA」からの賄賂とされる計約7600万円が送金されたコンサルティング会社の株式を20%保有していることが関係者への取材で判明した。同社は、収賄罪の対象になる「みなし公務員」の元理事の「身分なき共犯」として6日に同容疑で逮捕された容疑者(73)が社長。東京地検特捜部は2人が一体で賄賂を受領したとみてコンサル会社の実態を詳しく調べている。

(9月7日毎日新聞から一部引用)

 

「身分なき共犯」というのは,刑法65条に規定されている共犯についての規定のことをいいます。

 

刑法

(身分犯の共犯)
第65条
 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

 

今回の件でいえば,収賄罪は犯人が「公務員」であることが成立要件ですが,公務員ではない者が関与した場合にもその者は共犯として処罰されるということを定めているのが刑法65条1項です。

ほかにも,以前の刑法では,強姦罪の主体は男性(男性しか犯せない犯罪)でしたが,判例はこれを身分犯と解して,女性が男性と共謀して、強姦の犯罪行為に加功した場合には、女性にも強姦罪の共同正犯が成立するとしていました(最高裁昭和40年3月30日判決)。

 

 

2項は,「身分によって特に刑の軽重があるとき」,例えば,横領罪には,業務上横領罪と単純横領罪があり,業務上の占有者はより重く処罰されますが,業務上と非業務上の占有者が一緒になって横領した場合などに適用されます。判例は,このような場合,犯罪としてはあくまでも全員に業務上横領罪が成立し,非業務上の占有者には単純横領の限度で科刑がされると解しています(最高裁昭和32年11月19日判決)。

 

 

司法試験の勉強の際には必須の論点でしたが,実務に出てから使うこともなく,こうしたニュースの際に頭を整理しておきたいと思います。