判例タイムズ1490号などで紹介された事例です(札幌地裁令和 3年 9月24日判決)。

 

 

自筆証書遺言について,令和元年(2019年)1月13日の改正民法施行時以降に作成されたものについては,相続財産の目録については自書を要せず(パソコンなどによるものでよい),ただ,その目録の各ページに署名押印が必要とするものとされました(民法968条2項後段)。


 

民法

(自筆証書遺言)

第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

 

 

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本事例で問題となった自筆証書遺言は令和元年12月30日付のもので,改正法の適用対象となるものですが,遺言の添付された財産目録は自書ではなく,署名押印を欠いていたため,遺言全体が無効となるかどうかが争点とされたものです。

 

 

判決では,当該目録自体は法律上の要件を満たしていないので無効となるが,当該目録が付随的,付加的意味を持つに留まり,その部分を除外しても遺言の趣旨が十分に理解され得るときは,当該遺言の全体が無効となるものではないとしたうえで,本件で目録に記載されていたもののうち,生命保険についてはもともと指定されていた受取人が受け取るものとするという内容で記載があっても無くても保険金受取人は保険を受け取れるので無益的記載に過ぎないこと,預貯金・国庫証券については本文で引用されることなく包括的に相続させるものとして記載されていることから,目録の記載を除外しても遺言の趣旨を十分に理解することが出来るとして,本件においては遺言全体が無効となることは無いと判示しています。