https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43505090Z00C19A4MM8000/?n_cid=DSREA001
政府・日銀は2024年度前半に千円、5千円、1万円の各紙幣(日本銀行券)を一新させる。麻生太郎財務相が9日午前に発表した。刷新は04年以来となる。千円札の図柄は北里柴三郎、5千円札は津田梅子、1万円札は渋沢栄一になる。「平成」から「令和」への改元機運を盛り上げる。自動販売機などの関連需要が生まれるため、景気刺激の効果もありそうだ。
(4月9日日経新聞から一部引用)
記事中でも( )書きされていますが,(政府)紙幣と日本銀行券は発行主体が政府か中央銀行(日本銀行)かで異なっており,我が国においては政府による紙幣(政府紙幣)は発行されておらず日本銀行券が流通しています。
日本銀行による銀行券の発行は日本銀行法で定められており,強制通用力が付与されています。
(日本銀行券の発行)日本銀行法第46条 日本銀行は、銀行券を発行する。2 前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。
発行主体は日本銀行であるものの,その種類や様式については政府・財務大臣が定める権限を有しています。
(日本銀行券の種類及び様式)第47条 日本銀行券の種類は、政令で定める。2 日本銀行券の様式は、財務大臣が定め、これを公示する。
日本銀行券と異なり,貨幣(10円玉などの硬貨)については政府が発行の権限を有しています。
(貨幣の製造及び発行)通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第4条1項 貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する。
今回の変更は偽造防止が主眼ということですが,銀行券,貨幣の偽造や行使というのは法定刑も重く大変な重罪とされています。
(通貨偽造及び行使等)刑法第148条 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
主だった裁判例でも,前科前歴がなくても実刑か実刑ぎりぎりの量刑が選択されていることが多いようです。
・東京高裁平成19年10月19日判決・・・懲役2年6月(スキャナー,プリンターを使って1万円札39枚偽造して売春婦に渡して使用。被告人が21歳で前科前歴はなし。年が若いことを理由に執行猶予をつけた原審を破棄)
・奈良地裁葛城支部平成19年5月30日判決・・・懲役4年(妻と共謀して1000円札22枚うち9枚を使用。執行猶予中の犯行)
・松山地裁平成17年11月10日判決・・・懲役3年執行猶予5年間(パソコン,スキャナーを使って1万円札2枚偽造うち1枚使用 500円札18枚偽造うち1枚使用 被告人に前科前歴なし。)
・新潟地裁平成15年9月16日判決・・・懲役1年8月(1万円札18枚偽造うち3枚を援助交際で使用 被告人に前科前歴なし)
手口として身近にあるパソコン,スキャナー,コピーを利用しての安易な犯行ということが多く,前科前歴がない普通の人が手軽にやってしまいかねない犯罪ということが言えますが,だからといって刑罰が軽くなるという傾向にはなく,このようなことは絶対にやってはいけません。