https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38872210T11C18A2CR0000/
公取委によると、2016年6月~17年11月、キティや「マイメロディ」の模様が入ったかばんや歯ブラシケースなどを納入した14業者に、「変色や不具合があった」として半年以上過ぎてから一部を返品していた。うち13業者を含む175業者には、サンプルの無償提供もさせていた。
サンリオは返品した商品を業者に点検させ、不具合がなければ再び納入させたが、下請法は納入から6カ月間経過した際の返品を禁止している。
(12月13日日経新聞オンラインから一部引用)
記事にある下請法とは,正式名称を下請代金支払遅延等防止法といい,いわゆる下請けいじめを防止するため昭和31年に制定された法律ですので結構歴史のある法律ということになります。
下請法は,力の強い事業者から立場の弱い下請業者を保護するための法律ですので,立場が強い事業者「親事業者」と呼び,資本金の額と取引の種類によって,「親事業者」「下請事業者」に該当するかどうかが決められています。なお,建設業者については別途建設業法の規定に従うこととなっており下請法は適用されません。
親事業者の下請業者に対する禁止行為は法4条に規定されており,本件で主として問題とされているのは,このうち4号の返品行為の禁止についてです。
下請代金支払遅延等防止法第4条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
一 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。二 下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。四 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。六 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。七 親事業者が第一号若しくは第二号に掲げる行為をしている場合若しくは第三号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。
製造委託取引において,親事業者が下請事業者から受領下製品について返品が認められるのは,「下請事業者の責に帰すべき事由がある場合」ですが,この点について,公正取引委員会が定めて運用基準では,下請法3条所定の書面に明記された委託内容と異なる場合か下請業者の給付に瑕疵がある場合としていますが,さらに,
・3条書面の委託内容が明確ではない
・検査基準を恣意的に厳しくする
・検査を下請事業者に文書により明確に委託している場合に当該検査に明らかなミスが認められるのに受領後6か月を経過した
・瑕疵を直ちには発見できない場合において受領後6か月(下請事業者の給付を使用した親事業者の製品について一般消費者に対し6か月を超える保証期間を定めているときはそれに応じて最長1年)を経過した
場合などには返品は認められないとしています。
記事にある返品可能期間の6か月というのは,この公取委の運用基準における規定を指しているわけです。
下請法というのは,下請代金の減額の禁止や下請代金は受領後60日以内に支払わなければならなず遅延した場合には14.6パーセントの遅延損害金が認められているなど,下請けとなる中小企業にとってはそれなりに使える法律ですので,中小企業の顧問弁士としては押さえておく必要がある法律です。