https://www.yomiuri.co.jp/national/20181012-OYT1T50027.html

 

 

 

発表によると、同社と代表取締役は今年3月1日から31日までの間、社員4人を「管理監督者」として扱い、労使協定(36協定)を結ばない状態で、月80時間以上の違法な時間外労働をさせていた疑い。最長で100時間超の残業をしていたという。

 同社によると、時間外勤務に関する36協定は労働組合と締結しているが、この4人は「管理監督者」としていたため、対象者ではなかったという。

(10月12日読売新聞オンラインから一部引用)

 

労基法の労働時間,休憩,休日に関する規定は,労基法41条で3つの類型の適用除外が定められており,このうち,よく問題となるのは2号の「管理監督者」の法定外労働時間の割増賃金の問題です。割増賃金の支払いを免れることを目的として管理管理職としているケースを踏まえて「名ばかり管理職問題」などと呼ばれています。

 

 

(労働時間等に関する規定の適用除外)
労働基準法第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

 

管理監督者が適用除外とされた趣旨は,そのような労働者は自らの労働時間を裁量で決定することができ,かつ,管理監督者の地位に応じた高い待遇を受けることから労働時間の規制の適用がふさわしくないと考えられていることにあり,これを踏まえて,行政解釈は,「管理監督者」の当たるかどうかについて,労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体の立場にあるものの意味であり,名称にとらわれずに実態に即して判断すべきであるとしています。

さらに裁判例も踏まえて,管理監督者の要件としては,①事業主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮監督権限が認められていること②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること③一般の従業員に比較してその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが必要と考えられています。

 

 

このような観点から,管理監督者として認められなかった事例として著名なものとしてはマクドナルドの店長の事件があり,この件では店長として店舗の労務管理(アルバイトの採用・時給額,勤務シフトの決定など)を含む店舗に関する管理業務に従事し,自らの勤務スケジュールも自分で決定していたものの,権限は店舗のものに限られ経営上の方針への関与まではしていなかったことや自らの勤務スケジュールを決められるといってもシフトマネージャーが必ず店舗にいなければならないという勤務体制上,店長がシフトマネージャーとしてスケジュールにざるを得ない実態であったことなどから,管理監督者として認められないと判断されています。

 

 

他に管理監督者性が問題となった事案としては,銀行の支店長代理,学習塾の営業課長,ファミレスやカラオケ店の店長,会社の係長,人事課長といった役職の事例がありますが,さきほどの基準に照らして名称にとらわれずに実態に即して判断し,管理監督者性を肯定した事例,否定した事例がそれぞれありますが,印象的に言うと,否定される事例のほうが多いのかなという気はしています(地位と権限にふさわしい待遇をしているのであればそもそも争いになりにくいということも言えるのだろうと思れます)。