金融法務事情2094号で紹介された事例です(東京地裁平成29年11月29日判決)。

 

 

偽造のキャッシュカードが用いられて不正引き出しがされるという事案が相次ぎ社会問題化したことから,平成17年に偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(いわゆる預金者保護法)が制定され,偽造カードによる不正引き出しがなされた場合,当該払い戻しが預貯金者による故意によって行われたとき又は金融機関側が無過失であったとしても預貯金者に重過失がない限りは,当該払い戻しは無効となり,預貯金者は救済されるということになりました。

私も,このころ,不安になって,生体認証のキャッシュカードに切り替えたり,窓口でしか取引ができないよう定期預金にしたりするなどの対策をした覚えがあります。

 

 

偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(預金者保護法)

第4条1項 偽造カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しは、当該機械式預貯金払戻しに係る預貯金等契約を締結している預貯金者の故意により当該機械式預貯金払戻しが行われたものであるとき又は当該預貯金等契約を締結している金融機関が当該機械式預貯金払戻しについて善意でかつ過失がない場合であって当該預貯金者の重大な過失により当該機械式預貯金払戻しが行われることとなったときに限り、その効力を有する。

 

 

本件は,おそらく,東南アジア旅行中にデビットカードの暗証番号を何らかの方法でスキミングされた預金者が,その後,デビットカードを不正に利用され,約86万円相当の現地通貨を海外ATMから引き出されたという損害を被ったとして金融機関に対して補償金の請求をしたという事案です。

 

 

 

争点の一つとして,上記預金者保護法の適否が問題となりましたが,裁判所は,次のような理由からその適用及び類推適用を否定しました。

・本件は,預金者がその預金口座から現金を引き出しているのではなく,また,預金者からの指示ではなく,海外金融機関からの利用情報に基づいて預金者の口座からの引落と送金を行っているので条文にある「払戻し」「振り込み」には当たらない。

・また,預金者保護法は対面取引については保護の対象としていないところ,デビットカードは加盟店での対面取引での利用も想定されていることや海外ATMはデビットカードを発行した金融機関の管理下に置かれているわけではないこと,預金者保護法の制定過程においてデビットカードが保護の対象となるとは考えられていなかったことなどから,類推適用することもできない

 

 

また,当該預金者は金融機関の取引規定に基づく補償金の支払いも請求しましたが,当該金融機関のデビットカード規定には,暗証番号を用いたなされた取引については補償しないという規定があり,これが適用されるとしてこちらについても否定されています。

 

 

実は,私もデビットカードの不正利用をされたことがあります。

デビットカードは利用の都度登録されたアドレス宛にメールが飛んでくるのですが,私の場合,少額の身に覚えのないメールが次々と来たため,慌てて,カード裏面に記載のある発行金融機関の窓口に電話しました。相当焦りました。カード自体は私の手元にしっかりとあり,しかも,その金融機関でデビットカードを付けたのはたかだか1か月程度前のことでした。

はっきり言って,金融機関はカードの利用を止めることしかしてくれず,後は,引き落とされた先の利用加盟店と話し合ってくれというだけでした。

私の場合,引き落とされていたのがGoogleでしたので,金融機関から対応先のGoogleの電話番号は教えてくれました。

Googleが電話対応とはまたレトロなとも思いましたが,電話はストレスなく何度もつながり,対応してくれた方(日本人)もとても丁寧,親切で,メールでのやり取りよりは話が早くて,結果的にはよかったです。

私のGoogleアカウントなどの情報を伝えるとともに,Googleでは不正利用かどうかを調査するチームがあるとかで,結果が分かり次第連絡しますということで,数日は待たされるのかと思っていましたが,その日のうちに連絡があり,不正利用ということが判明したので返金処理しますということでした。

そして,Googleから返金の処理がされて,その後に私の口座にお金が戻ってきました。私はすぐにその金融機関との取引を金輪際しないように措置しました。金融機関は自分だけは損しないようになっていますし,もともと,顧客目線だのお客様第一だのというお題目は全くの嘘だと思ってはいたのですが,この件でその思いをさらに強くしました。

私の場合,不正利用された先がGoogleというはっきりしたところでしたからよかったのですが,上記のケースでは海外ATMからの現金引き出しというケースだったため,金融機関を相手にするしかなかったということになります。