https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180808/k10011568971000.html?utm_int=detail_contents_news-related_003

 

 

選手への助成金の不適切な流用や、暴力団員だった人物との交際などが指摘され、日本ボクシング連盟の理事会から進退について一任されていた山根明会長が大阪市内で8日午後会見し、「私は本日をもって、会長を辞任致します」と述べ、辞任を表明しました。

(8月8日NHKニュースウェブから一部引用)

 

このような人物が準公的な組織のトップに君臨していたというのは驚きでしたし,ようやく辞めてくれてよかったというのでか外野からの感想です(ただ,会長だけでなく理事まで辞めたのか,影響下にある関係者についても排除され院政が敷かれることはないのかといったことは心配ですが)。

 

 

ところで,このような組織内部での紛争において,弁護士としてはどのように振る舞うべきかということが弁護士倫理の問題としてよく語られることがあります。

 

 

もちろん,例えば,今回問題とされた会長自身が自分で弁護士と契約したのであれば,その弁護士が会長個人のために弁護活動をすべきことについては論を待たないところです。

問題となるのは,組織の顧問弁護士の立場にあるような弁護士が,今回の件でどのように振舞えばよいのかというのは簡単なようでいて,理想と現実のはざまでなかなか難しい面があるのです。

組織,特に小規模であったり閉鎖的であったりする団組織の顧問弁護士は,通常,その組織のトップと昵懇,親密であることが多く,トップの地位が危ういとされた際に顧問弁護士が相談を受けた場合,そのトップを守るような策を献じてを勧めた場合,顧問を務めているはずである組織の利益を害してしまうということがあります。

この点,日弁連が作成した職務基本規程には,継続的な法律事務の提供(顧問契約の締結)をしている者を相手方とする事件については原則として受任してはならないという規定があります。

 

 

弁論し職務基本規程第28条

 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行っては ならない。ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその 依頼者及び相手方が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件

 

 

理屈上は,顧問契約を締結している組織の利益を守るために活動すべきであるということについ結論であることははっきりしているのですが,組織とそのトップが同一化してしまっているような場合には,顧問弁護士としては事実上身体窮するという場面も多く出てくることになります。顧問弁護士としてはそのトップ個人からそれまでにも個人的にいろいろな相談事を受けていたりすることも多く義理人情の面でなかなかトップと反対の立場に立ちにくいというところもあるし,トップ個人のいろいろな事情を知ってしまっているということで,全部ぶちまけて組織のために活動するといっても,トップ個人に対する守秘義務の問題も出てきます。

また,今回のボクシング連盟の理事の中には弁護士もいるとのことですが,理事(株式会社でいえば取締役)が弁護士資格を持っている場合,どのような行動をとるべきかということも問題となりますが,この場合は,理事として組織のためにどのような選択をすればよいのか考えて判断する,つまり,顧問弁護士の立場よりはもう少し判断の裁量が広いのではないかとも考えられるところです。

 

 

ちなみに,組織と弁護士とという関係でいうと,組織内弁護士(平たく言うと会社員として勤務している弁護士)について,組織が違法行為をしていたり,しようとしていることを知ってしまった場合にどのような行動をすべきかという準則としては,基本規程51条に次のようなものがあります。

 

(違法行為に対する措置)
弁護士職務基本規程第51条

 組織内弁護士は、その担当する職務に関し、その組織に属する者が業務上法令に違反する行為を行い、又は行おうとしている ことを知ったときは、 その者、自らが所属する部署の長又はその組織の長、取締役会若しくは理事会その他の上級機関に対する説明又は 勧告その他のその組織内における適切な措置をとらなければならない。

 

 

あくまでも組織内における適切な措置をとることを求められているので,上司や上部機関に対する報告等を行うということでその義務は果たしたものとされると考えられています。