盗品の回復請求権と代価弁償請求権 | 弁護士江木大輔のブログ

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https://www.nikkansports.com/baseball/news/201807090000058.html

 

 

 

球団によると、柿沢容疑者は5~6月にかけてジャイアンツ球場の選手ロッカーにあった阿部、坂本勇らのバット、グラブなど約110点を盗み出し、中古ブランド品買い取り専門店に売却し、約100万円の収入を得ていた。消費者金融からの借金があり、借金返済の一端として不正を働いていた。

(7月9日日刊スポーツ記事から一部引用)

 

 

同じ球団の仲間の者を盗んで売り飛ばすなどまったくひどい話だと思いますが,盗品であるバットやクラブなどを専門店から実際に購入した購入者がおり,その盗品の帰趨について法律的に分析すると,民法193条,194条の問題となります。

 

 

 

(盗品又は遺失物の回復)
民法第193条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

 

 

バットやグローブのような「動産」は,平穏公然,善意無過失で,わかりやすく言えば何の落ち度もなくその人が権利者であると信じて取得した場合には所有権を取得することができますので(民法192条 即時取得),今回,被疑者からバット等を取得した専門店は,落ち度がない限りは,盗品であるバット等について所有権を取得することができることになります。他の報道では,被疑者は「阿部選手らから貰ったものだ」といって処分していたというので,現役の選手がそのように言うのであれば信じるのが普通でしょうから,専門店には即時取得が成立する,つまり,バット等の所有権を取得するということになります。そして,その専門店からバット等を購入した購入者もまた適法にバット等の所有権を取得することになるというのが原則です。

 

 

ただ,盗品又は遺失物については,民法193条により,被害者は盗難又は遺失の時から2年間はその物の回復(返還)を請求することができるとされています。請求の相手方は,即時取得した者からの転得者も含むものと解されており,本件で,仮に専門店に即時取得が成立していたとしても,その先の購入者に対しても,被害者である阿部選手らは理屈上は返還請求することができることになります。ちなみに,対象となるのはあくまでも「盗品又は遺失物」ですので,「横領」は含まれないので,Bが保管していたAの物を平穏公然善意無過失であるCに対して売り渡したという場合には民法193条は適用されず,民法192条が成立してCが所有権を取得します。

 

 

但し,盗品又は遺失物を占有している購入者がその物を競売や公の市場又はその物と同種の物を販売する商人から取得したときは,占有者が支払った対価を弁償しなければならないとされており(民法194条),物の返還と対価の支払いは同時履行の関係に立つので,対価の支払いを受けるまでは物の返還はしなくてもよいということになります。本件でいえば,阿部選手らがバット等の返還を求める場合には購入者が支払った金額を支払わなければならないということになります。

なお,返還するまでの間にその物を使用収益した利益について,占有者は不当利得として所有者に対して支払わなければならないのかという点については,その支払いをすることは不要であるとされています(判例)。

 

 

なお,古物商が盗品又は遺失物を取得した場合には,その注意義務を重くみて,仮に市場や他の業者から善意で取得したものであるとしても,1年間は無償で変換に応じなければならないことになっています。質屋についても質屋営業法に同様の規定があります。

専門店などは古物営業ものであることが多いと思いますが,仮に,本件で,処分されたバット等が専門店のもとに留まっているものがあるとすれば,無償でその返還を求めることができることになります。

古物商や質屋が品物をじっくり見るというのは,値段を見定めるということのほかに,このような意味もあるということになります。

 

 

古物営業法第20条 古物商が買い受け、又は交換した古物(商法(明治32年法律第48号)第519条に規定する有価証券であるものを除く。)のうちに盗品又は遺失物があつた場合においては、その古物商が当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においても、被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる。ただし、盗難又は遺失の時から1年を経過した後においては、この限りでない。

 

質屋営業法第22条 質屋が質物又は流質物として所持する物品が、盗品又は遺失物であつた場合においては、その質屋が当該物品を同種の物を取り扱う営業者から善意で質に取つた場合においても、被害者又は遺失主は、質屋に対し、これを無償で回復することを求めることができる。但し、盗難又は遺失のときから一年を経過した後においては、この限りでない。

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

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