https://www.sankei.com/west/news/180416/wst1804160042-n1.html

 

 

 

同署によると、女性は同僚との飲み会終了後に男性らに車で自宅近くまで送り届けてもらったが、酒に酔っていたため路上で動けなくなった。女性を介抱する男性の姿を見た男が、乱暴されていると勘違いし殴ったとみられる。

(4月16日産経新聞ウェストから一部引用)

 

 

このような事案というのはわりと裁判例でも多く登場しており,誤想防衛,誤想過剰防衛と呼ばれています。

 

 

被疑者としては女性を助けるつもりで殴ったということで,自分では正当防衛のつもりで防衛行為をしたものの,実際には,被害者は女性を介抱していたので,正当防衛は成立しないことになりますが,被疑者が正当防衛が成立すると誤信していたという場合にどのように処断するかという問題です。

 

 

 

誤想防衛というのは,実際には急迫不正の侵害がないのに存在すると誤信して,防衛行為としても相当な行為を行った事案のことをいい,この場合は,被疑者に対して責任非難を向けることはできないので,故意犯は成立せず,ただ,急迫不正の侵害かあると誤信したことに過失がある場合は過失犯が成立すると考えられています。

今回の事案で,仮に,当時の状況を踏まえて,女性が乱暴されていると誤信したとても仕方がない状況で,殴ったという行為が防衛行為として相当な程度のものであったとすれば,傷害罪は成立せず,過失傷害罪が問題とされるにすぎないということになります。

 

 

誤想過剰防衛というのは,いくつか類型がありますが,典型的なものとしては,急迫不正の侵害が存在しないのに存在すると誤信したうえで,防衛行為として過剰な反撃を行い,しかも,犯人がそのこと(不相当な防衛行為であること)について認識しているケースがあります。

この場合には,故意犯が成立し,本来は正当防衛の問題ではないけれども(客観的に急迫不正の侵害があったのに対して過剰な防衛を行ったのが過剰防衛),被疑者が急迫不正の侵害があると誤信していたことから,過剰防衛の規定である刑法36条2項が準用され,情状により刑の減軽,免除が図られるものと解されています。

 

 

(正当防衛)
刑法第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

 

 

この点で有名の判例が勘違い騎士道事件と呼ばれる事案で,女性(酒癖が悪かったようで,酔っていたことから「ヘルプミー ヘルプミー」などと叫んでいた)が乱暴されていると誤信した空手三段の英国人が,防御のために両手を構えた被害者がファイティングポーズを取ってい向かってくるものと勘違いしたことから顔面を回し蹴りしたことから被害者が死亡したというもので,一審は誤想防衛として無罪としましたが,控訴審は誤想過剰防衛であるとして有罪としたうえで刑法36条2項により減刑し(懲役1年6か月執行猶予3年間),最高裁も是認しています。

 

 

 

本件でも弁護側としては誤想防衛の首長がなされるものと考えられ,当時の具体的な事情というものが重要になってくるものと思われます。