シェアハウス運営会社が民事再生法申請 説明会で批判相次ぐ | 弁護士江木大輔のブログ

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180413/k10011401061000.html?utm_int=news-social_contents_list-items_104

 

 

 

スマートデイズは、一般の人たちから資金を募り女性専用のシェアハウスを建設・運営してきましたが、入居者が集まらず、およそ700人のオーナーに賃料を支払えなくなった末に今月9日、民事再生法の適用を申請しました。
スマートデイズは12日夜、赤間健太代表らが、資金を出したオーナーを集めて説明会を開きました。
そして、会社の資金がほぼ底をつき、このままではシェアハウスの水道や電気が止められて入居者が生活できなくなるため、民事再生法の適用を申請するしかなかったなどと説明しました。
これに対して集まったおよそ120人のオーナーからは、会社の説明は納得できないと批判する声が相次ぎました。
スマートデイズのオーナーの多くは静岡県沼津市に本店をおくスルガ銀行から資金を借りていますが、審査に不正があったと、銀行の責任を問う声も強まっています。
融資の契約を白紙にするためにも破産の手続きに切り替え、裁判所の管理のもとで経営が行き詰まった原因をすべて明らかにするべきだという意見も相次ぎました。
出席した男性は「不誠実な対応で怒りしかない。一刻も早く破産してすべてを明らかにしてほしい」と話していました。

(4月13日NHKニュースウェブから一部引用)

 

 

オーナーが銀行から融資を受けて建物(シェアハウス)を建て,建物をスマートデイズ社(SD社)が一括して借り受けて賃料を保証し(サブリース),SD社が入居者を集めて賃料はSD社が受け取って,経費利益を差し引いてオーナーに渡すという仕組みのようです。

以下はあくまで報道などで流れている情報を前提としてという法律上のお話です。

 

 

 

SD社は,オーナーに対しては賃貸借契約の賃借人という立場であり賃料を支払わなければならない一方で,入居者に対しては賃貸人という立場で賃料を受け取ることができる立場ということになります。

 

 

今回,SD社は民事再生手続きを選択したわけですが,賃借人について民事再生手続きが開始された場合,将来の使用収益とその対価である賃料のそれぞれの義務は未履行であることから,再生債務者であるSD社としてはオーナーとの賃貸借契約を解除することもできるし,契約の継続(履行)をすることも,いずれもができることになります(民事再生法49条1項)。

この場合,賃貸人であるオーナーの意向は考慮されることなく,ただ,オーナーとしては一定の期間内に解除か履行かの選択をするように催告を行い,期間内に選択がされなかった場合には解除権を放棄した,つまり,履行を選択したものとみなされるということになります(同条2項)。

 

 
(双務契約)
民事再生法第49条1項 双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合には、相手方は、再生債務者等に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす。

 

 

この点については,仮に破産であった場合,解除か履行かの選択が破産した側(破産管財人)にあることは変わりませんが(破産法53条1項),催促された期間内に選択をしなかった場合には,解除したものとみなされることになっています(同条2項)。破産の場合のほうが,契約関係を解消(清算)する方向に仕組まれているということができます。

 

 

(双務契約)
破産法第53条 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合には、相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなす。

 

 

ところで,SD社の経営が現在のままでは立ち行かなくなっていることは明らかですので,破産でもよさそうな気もしますが,SD社が運用している収益物件のうち,賃料収入が好調なものもあれば不調なものもあるように思われます。

 

 

その場合,好調な物件についてはオーナーとの賃貸借契約は継続し,その物件の入居者からの賃料は確保しつつ,不調な物件については契約解除してオーナーに対する支払いをしないようにするということも考えられます。

不調な物件についても入居者がいるわけで,その手当をしなければならないわけですが,収益のバランスがある程度見込まれた段階で,スポンサーに事業を譲渡してその出資金から転居費用を手当てするということも可能性としてはあり得ることになります。

ちなみに,入居者にとってはSD社は賃貸人という立場になるわけですが,賃貸人が破産又は民事再生となったとしても,第三者対抗要件を備えている賃借人に対して契約解除をすることはできないとされており(破産法56条1項,民事再生法51条1項),現実に入居している賃借人は第三者対抗要件を備えていることから,SD社側からの契約解除をすることはできないということになります。

 

 

 

破産法第56条1項 第五十三条第一項及び第二項の規定は、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定する契約について破産者の相手方が当該権利につき登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えている場合には、適用しない。

(双務契約についての破産法の準用)
民事再生法第51条前段 破産法第五十六条、第五十八条及び第五十九条の規定は、再生手続が開始された場合について準用する。

 

 

 

これが,仮に,破産ということになると,事業は全て清算していく方向で処理してゆくことになりますから,破産管財人としてはオーナーとの賃貸借契約については基本的に解除を選択してゆくことになるのではないかと思います。

 

 

 

今回,SD社が民事再生を選択したということについてオーナー側からは不満が出ているようであり,その意図が何なのかということについて疑念も呼んでいるようですが,今後,仮に,好調な物件で解除と履行とで色分けがなされていくようであれば,オーナーサイドも利害関係が分かれて行くということもないとはいえないかもしれません。SD社側が民事再生を選択した理由として説明している電気などが止めらないようにして入居者の利益を保護するためという説明はこの件の全体的なスケールからすると少し規模感がぴんと来ないような気もします(仮に破産を選択としたとしても入居者からの賃料は入ってくるので,物件の水道光熱費くらいは捻出できるようにも思います)。

 

 

 

東京地裁の場合,民事再生の申立てをしたとしてもすぐに開始・不開始の判断をするわけではなく,債権者集会を実施して,債権者に対し説明し,裁判所から選任された監督委員の意見を聴取した後に判断がされることになります。

今回,上記のような説明がされたわけではないようですし(もしされていたとすると自分はどっち側なのかということで説明を求めるオーナーによりもっと混乱していたことでしょう),銀行の融資経緯について社会問題とも化している本件について,救われる者と救われない者がいるというでこぼこの処理でよいのかという問題もあり,この件についてどのような処理が図られるのかというのは興味深いところです。

 

 

 

 

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