労働判例1098号などで紹介された事例です(神戸地裁平成26年6月5日判決)。
事案は、NHKの集金スタッフが、成績不良を理由として期間途中での契約の打ち切りが、労働契約法17条1項に基づき「やむを得ない事由」がないにもかかわらずなされたものして期間中に得られたはずの未払い賃金等の支払いなどを求めたのにいたし、NHK側が、スタッフとの契約は、委託契約又は請負契約であるとしていつでも解約できるものだとして争ったというものです。
裁判所は、次のような理由からNHKとスタッフとの契約は、両者に使用従属関係のある労働契約であるとしました。
・スタッフはNHKから受け持ち区域を指定され、スタッフの希望が受け入れられるわけではなかった。
・期ごとの目標数値が提示され、スタッフが訪問した顧客ごとに、不在、居留守などの結果を記録し、貸与された送信キットを用いて1日1回送信することになっていたり、1週間に1度報告書を提出する、月1回の全体会議には必ず参加が義務付けられていた。NHKはスタッフの稼働時間が短いと判断すると、もっと働くように指導を行っていた。
・スタッフが当期の目標未達である場合には、特別指導が行われていた。
・業務に必要な備品等についてはNHKから支給されていた。
・スタッフに再委託が許されていたといっても、業務に必要なナビタン(器具)は1個であり、再委託と言ってもスタッフが臨時的に親族などに依頼する程度に限られていた。
・社会保険の適用がないからと言って労働契約性を否定するものではない。
このような点からNHKとスタッフとの間の契約は労働契約であると判断され、契約期間中の未払い賃金については支払いが命じられました。労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」とは、期間の定めのない労働契約における解雇権濫用法理の判断基準よりも強度のものが必要であり、期間の満了を待てないほどの切迫した事情が必要というのが通説であり、本判決もそれによっており、本件期間内解雇は理由がないとされました。
もっとも、スタッフが求めていた地位確認や慰謝料請求については認められませんでした。
本件は控訴されているということです。
解説によると、NHKとの取り次ぎ、受信料集金委託等契約については、高裁レベルでは労働契約性が否定されている例が多いということであり、本件も予断を許さないのかもしれません。
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