成年後見人が本人の居住用不動産を処分しようとするときは,事前に,家庭裁判所から許可を得ておく必要があります(民法859条の3)。

許可を得ないでした居住用不動産の処分は無効となると考えられています。


第859条の3  成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。



また,後見監督人が付いているときは,監督人の同意も得なければなりません(民法864条,13条1項3号)。


第864条  後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。

第13条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
   不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。


不動産を処分する際は,通常,売買契約であれば売買契約書のひな形を別紙として付けて許可申立を行い,許可が出てから契約します。




不動産業者などは,契約書に「裁判所の許可が得られなかったときはノーペナルティで契約は効力がなかったこととにできる」という白紙撤回条項が入っているから先に契約してほしいといってくることもあるのですが,独断専行でやってしまい,後で許可が得られなかった場合のリスクを考えると,やはり,先に許可を得てから,許可を得たとおりの内容で契約した方が無難です。というか,契約書にサインしたとしても,裁判所の許可を得ていない以上,民法上,契約自体が無効ということになります。




むかし,監督人をしていたとき,親族の後見人が私が「資料を揃えて家裁に許可を申し立て,許可得るまで待ってほしい」とストップしていたのに,本人名義の居住用不動産の処分の契約をしてしまったことがあります。




監督人の同意も裁判所の許可も得ていないので無効な行為ですが,契約をせかす不動産業者に上記のようにうまく言いくるめられてしまったようです。




私の方で査定を取って取引価格を確認し,金額その他の契約条項なども確認したところ特に問題があるわけではなかったので,その後見人に悪意があったという訳でもなく,また,その親族後見人の持分も入っている不動産の処分でしたので,その辺りの事情も書いたうえで,裁判所に署名押印済みの売買契約書を別紙として添付したうえで許可申立をしたところ,その内容で許可が出たということがあります。




事情によっては後見人の解任ということにもなりかねない行為です。




契約してしまった後であれこれ思い悩むよりも,契約の前に申し立てておけば何の問題もなかったので,監督人の立場としては,後見人との間で事前にきちんともっと相談を密にしておくべきだったと思っています。




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