被後見人が亡くなった場合の後見人の義務の一つとして,被後見人の相続人に対する管理計算の義務があります。




規定しているのは民法870条になります。


 民法870条 後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、2箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。



規定上はどこにも相続人に対しての報告義務ということは書かれていないのですが,被後見人の財産を管理していた後見人が財産引継ぎの義務を負うのは被後見人の相続人に対してですので,そのように解釈されています。



管理の計算というのは,後見人の在職中に生じた財産の変動(一切の財産上の収支を明確にし,現在の財産額を計算すること)を明らかにすることで,具体的には死亡時点での財産目録と収支明細などの書類を相続人に対して交付します。



後見人が被後見人の相続人に対して管理計算の連絡をする趣旨は,管理財産を引き継いで貰うためです。




ただ,被後見人の中には子どもなどとの関係が悪く又は一切音信不通であったりして「自分が死んでも一切知らせてくれるな」という希望を持ち,後見人にも伝えていることがあります。

逆に,被後見人の相続人のほうから「本人が亡くなっても一切連絡してくれるな」と言ってくることもあります。




悩ましいところですが,法律に規定がある以上,後見人としては,被後見人が亡くなった後は,相続人に対して管理計算の報告のために連絡しなければならないでしょう。後者の場合,相続人の方が通知を受ける利益を放棄したとも考えられるのでしょうが,相続放棄してくれない限りは相続財産を引き継ぐ権利があるので(権利の向かい側には義務があります。義務を負っているのは元の後見人ということになります),やはり,管理計算の報告をすることになります。




また,相続人全員に対して管理計算の報告をしなければならないのかという問題もあります。

高齢の被後見人が亡くなり,相続人が兄弟姉妹や甥姪という場合ですと,相続人が10名を超えることもありますし,そもそも,関係がとても薄い場合もあります。




後見人が相続人に対して管理計算の報告を行うのは,相続財産を引き継ぐための前提行為です。

そして,後見人は相続人の一人に対して相続財産を引き継げば義務を免れるというのが一般的な考え方ですので,そうすると,管理計算の報告を行うのも相続人全員に対してではなく,そのうちの一人に対して行えば足りるのではないかと考えられます(私見)。

なお,全員に通知報告できる状況なのであればそうした方が望ましいでしょうし,被後見人が生きていた時から関係が悪い複数の相続人がおり,特に後見人からの報告を受けることを拒絶もしていないのであれば,平等に通知報告しておかないと,後で妙なクレーム(不公平だなど)を付けられかねませんので,注意すべきでしょう。





遺言執行者にも似たような規定があります。


 民法1001条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。


ここでいう相続人には,遺言の有効性を争うための機会を与えるという点からも,遺留分のない相続人も含まれると考えられておりそのように判示した裁判例もあります。


遺言の付言事項として「私が死んだことは誰にも知らせてくれるな」と記載がされていたとしても,法律上,相続人に対して財産目録を交付するように規定されている以上,遺言も遺留分制度などの法律制度の枠内で認められている制度である以上,遺言執行者としては相続人に対し通知することになるでしょう。




遺言執行者が相続人に対し財産目録を交付する趣旨として,遺言の内容によっては不利益を被る相続人に対しこれを争う機会を与えるためと解するのであれば,ここでいう相続人は,後見人の管理報告のケースと異なり,そのような利害関係を持っている者,つまり,相続人全員であると考えることになりましょう。また,遺言執行者は相続人の代理人とされています(民法1015条 この規定の意味はなかなか難しいとされていますが)。




誰にも知られずに猫のようにひっそり死ぬということは係累がいる限りはなかなか難しいということでしょうか。




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