判例時報2193号で紹介された最高裁の決定です(平成25年6月18日)。



被告人と被害者が二人乗りしていた原付が転倒し,被害者が高次脳機能障害を伴う後遺症障害を負ったという交通事故で,事故当時,被告人は16歳の少年でした。




そのまま少年事件として家裁に送致されていれば,家裁での少年審判により処分がされていた筈なのですが,本件では,運転者がどちらであったかという点に争いがあり,被害者の記憶も回復しなかったため,警察から検察官に対する事件送致までに約2年11か月を要しました。




そして,検察官は,嫌疑不十分という理由で不起訴(家裁送致すらしない)という処分としました。




しかし,その後,被害者から検察審査会に対して審査申し立てがされたのを機に,検察官が再度の補充捜査をした上で,公訴時効の完成8日前にぎりぎりで公訴提起したという事案でした。その時点で,被告人は成人に達しており,成人という扱いとなり,正式な刑事裁判にかけられるということになったわけです。




本件で,被告人側は,家裁の少年審判を受けられる機会が失われたとして,公訴提起の無効を主張し公訴棄却を求め,最高裁まで争いましたが,受け入れられませんでした。



最高裁は,本件では被告人が否認する一方で長期間にわたり被害者の供述が得られないという状況が続き,鑑定等の専門的な操作が必要であったことなど,運転者の特定までに日時を要する事情があったとしました。

また,当初,検察官が家裁送致にもしなかったのは,被告人について嫌疑が不十分であり,他に少年審判に付すべき事由もないと判断した以上,やむを得ないとしています。




少年法42条1項では,検察官は少年について犯罪の嫌疑があると考えた場合にはすべて家裁に送致しなければならないとし,また犯罪の嫌疑がなかったとしても審判に付すべき事由(それ自体は犯罪に至らなくても,親元に寄りつかない,深夜徘徊などのいわゆるぐ犯とされているものです)があると考えれば,やはり家裁に事件を送致すべきとしています(全件送致主義)。




本件でも最高裁は,この少年法42条1項の趣旨を踏まえて,適切な見通しをもっと迅速な事件処理を心掛ける必要があると指摘していますが,本件では上記のような理由で当初の検察官により家裁不送致もやむを得なかったと言っています。




少年の被疑事件で捜査等に時間を要したため家裁の少年審判を受ける機会が失われた場合の捜査の適法性やその後の公訴提起の有効性に関しては,昭和44年12月5日,昭和45年5月29日の最高裁の判断があり,ことさら捜査機関や検察官が,家裁の審判を受ける機会が失われることを知りながら捜査を遅らせたり,不起訴処分にしたり,特段の事情もないのに事件の処理を放置したりするなどの重大な職務違反がない限り,手続に違法はないとされています。

この2件の最高裁の事例では,事件当時,被告人は19歳の年長少年でしたが,本件では事件当時16歳であり,犯人性も激しく争われていたという事案であったということが特徴です。




本件が特に争いのない事件で,事件当時16歳の少年について事件処理を放置したうえで,少年審判を受ける機会を失わせたということであったとしたらまた別の判断であったのかもしれません。





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