判例時報2172号で紹介された事例です(札幌地裁平成24年11月19日)。



1月31日,友人2人とともに北海道積丹岳に登山した当時38歳の男性(遭難者)が遭難し,一度は警察の救助隊に助け出されたが下山中に雪庇を踏み抜き滑落死,その後ストレッチャーに乗せられたものの,ストレッチャーごとさらに滑落し,凍死したという案件で,遺族が救助方法に問題があったとして,北海道を訴えたという案件です。経過の概要は次の通りです。




・1月31日午前8時05分頃 友人2人とともに登山開始



・午前9時30分頃 休憩所に到着



・午前10時頃 山頂に向けて三人で休憩所を出発。転校は曇り微風,視界は良好。




・間もなく,先頭を行く遭難者と他の友人2名との距離が開き始めて,友人2名は山頂まで登ることをあきらめて休憩所に引き返すこととした。



・午前11時から11時間の間 友人の一人が遭難者から「山頂まで1時間半ほどの地点にいて山頂に向かう」との無線連絡を受ける



・友人2名は休憩所で遭難者を待っていたが午後2時ころになっても下山してこなかった。なかなか無線が繋がらなかった



・午後3時過ぎ ようやく無線がつながり話すことができた 遭難者の話では「午後1次40分に山頂に到着したがホワイトアウトで危険なので下っているが,視界不良のためビバークする」とのことであった。



・午後3時30分頃 遭難者から連絡「雪洞を掘り終わりツェルトを張って落ち着いた」 友人が救助を要請するかと聞いたところ「お願いしたい」とのことで友人が北海道警察に連絡した



・警察ではヘリコプターで捜索を開始したが悪天候のため打切りました。なお,遭難者からは「ヘリの音が聞こえる。姿は見えない」といった連絡がありました




・2月1日午前5時30分頃 救助隊として編成された警察官が出発。救助計画としては,一部の隊員が遭難者がいる場所までスノーモービルで先行し,他の隊員は雪上車で同地点を目指すというもの。



・スノーモービル,雪上車により遭難者のいる場所まで目指すことは悪天候のため中止となり,スノーモービル等は待機の上,救助隊が山スキー,坪足で前進した。



・午前11時59分頃 救助隊が遭難者を発見した



・隊員が遭難者を脇で抱えるようにして歩いて雪上車まで向かうこととしたが,救助隊長は来たルートをそのまま戻ることはせず,最短コースを選択することとした。しかし,その方向には,雪庇があり,このことは隊員たちも認識していた。北風が強く視界は約5メートル程度。




・下山開始から約5分後,隊員や遭難者は雪庇を踏み抜いてしまい,遭難者と一部の隊員が滑落。遭難者は約200メートル下の急斜面にまで滑落した。



・崖からの引き上げのためにロープとストレッチャーを使用して引き上げることとし,遭難者をストレッチャーに乗せて作業したものの手間取り,ストレッチャーごと滑落し,その後,遭難者の凍死が確認された。




本件では,救助隊が遭難者の発見後に取った進行方法について過失があると判断されました。




進行方向をどのようにとるかについては救助隊に裁量があるものの,進行方向に雪庇があると認識しながら,GPSで自分がたどってきた位置を後からポイントとして固定するという機能を使用することなくその通りに元来た通りに下山するということはしなかったこと,常時コンパスで方角を確認しながら進行方向を指示するということがなく,「気持ち北東方向に」という指示を下にとどまったことなどの進行方法は過失があると言わざるを得ないとされています。




なお,救助隊の救助活動が国賠法上の「公権力の行使」に該当するかについては,肯定されています。




結果として合計約1200万円の損害賠償が認められていますが,遭難者にも単独で山頂までの登山を敢行したことについてなど8割の過失があるとされています。北海道は主張しなかったようですが,過失相殺については職権でされています。




上記事実経過については端折ったところがあり,私は冬山のことはよく分りませんが,経験のある人が読んだらさらに興味深いかと思います。




本件は控訴されています。








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