破産関係の相談を受けていると,その債権(債務)が破産法253条1項に規定されている非免責債権にあたるかどうかということが問題になることが良くあります。





個人が破産する目的は,背負っている債務を支払わなくてもよいという裁判所からのお墨付き(免責)をもらうことにありますが,非免責債権にあたるということになると,せっかく裁判所から免責決定を貰ったとしても,当該非免責債権はその免責決定の適用対象外ということになってしまいます。





一番わかりやすいのは,破産法253条1項1号に規定されている税金債権で,たとえ,裁判所の免責決定があっても,税金は支払わなければならないので,免責をもらっても役所と話をして分割であっても支払ってゆかなくてはなりません。





税金のような分りやすい構造のものはよいのですが,特に,破産法253条1項2号,3号に規定されている悪意で加えた損害賠償請求権のようなものについては,悪意なのか重過失なのかといった裁量評価がはいるものですから,非免責債権といってもその判断は誰がどの手続きでするのかということは検討を要します。





まず,破産手続きの中で,その債権が非免責債権に該当するかどうかということは判断されません。





破産裁判所が判断するのは債務者を免責するかどうかということだけです。





そうすると,債務者としては,とりあえず,非免責債権として主張されるであろう債権についても債権者名簿に登載し,免責決定を受けることを目標とすることになります。





非免責債権であることを主張する債権者としては,債務者(破産者)がひどい人間であることを訴えて,免責不許可とするように意見を述べるわけですが,それでも,債務者が免責決定を得て確定した場合は,破産手続の中でその判断を争うことはできません。





非免責債権であることを主張する債権者としては,訴訟提起することになります。これに対して,債務者は,免責されていることを抗弁として請求棄却を求めるということになり,その訴訟の中で免責(請求認容)か非免責(請求棄却)か決着が付けられることになります。

なお,免責決定を受けたことは請求棄却ではなく請求却下ではないかといった細かな議論もありますが,ここではこだわらないこととします。





それでは,破産手続の段階で,すでに勝訴確定判決を受けている場合はどうでしょうか?例えば,破産者が破産した時点で暴力でけがをさせられたということで損害賠償を支払えという勝訴判決を持っているような場合です。




この場合に,債務者が免責決定を受けたとしても,債権者はすでに勝訴判決に執行してもよいという執行文を付与してもらっているのであれば,破産手続が終了した後なら,強制執行をすることができます。




債務者が,強制執行を担当している裁判所に対して免責決定を提出したとしても,強制執行は取消・停止されません。




この場合,債務者としては,請求異議の裁判を提起して,その中で,債権者の請求権が免責によって失われているということを認めてもらい,それによって初めて強制執行の手続を取り消してもらうことができることになります。







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