相続が発生したのに,不動産の登記名義は亡くなった被相続人のままということは,よくあることです。
所有者が変わったら登記名義を変えなければならないという法律はなく,税金も亡くなった人の名義のまま送られてくる納税通知書で支払いしている限り,役所も文句は言いません。
登記名義を変えない理由はいろいろあるのかもしれませんが,大半の理由は単純なもので,「面倒くさい」とか「そこに住んでいるわけではないので関係ない」「費用がもったいない」とかいうものです。
一代前というだけではなく,中には2代前,3代前の名義のままになっているということもあります。
しかし,このような場合に,売却の必要が生じたなど,何らかの理由で現在の所有者に登記名義を変更しようと思うと,大変な手間暇がかかることがあります。
相続が発生して遺言がないと,その遺産はその相続発生時の相続人の共有状態となります。
そのままの状態で共有者の一人である相続人に相続が発生すると,さらにその相続人の共有持分について相続人の共有状態になってりして,一つの不動産に何人もの権利者がねずみ算式に増えてゆくことになります。
この共有状態を解消するためには,現在のすべての相続人から署名実印を記載押印してもらった遺産分割協議書に印鑑証明書を添付して法務局に登記の申請をしなければなりません。また,裁判所で遺産分割手続きする場合には,現在の相続人全員に呼出状を送って手続きに参加してもらわなければなりません。
最初の相続が旧民法の時代であったりすると,その相続人は家督相続などの現在の民法にはない制度が適用されたり,相続分割合が異なっていたりと,複雑化したりします。
また,相続人の中には,外国に移住してしてしまっていたり,外国に移住した一世は死亡していて二世は日本語も何もわからなくなっていたりなど,連絡を取るのにも大変になったりします。
ここまでひどくなくても,共有という状態は,一度共有者間で揉めると,解消するのに大変な手間暇がかかります。
登記するしないは自由とはいえ,後世のためにも,権利変更が生じたらこまめに登記しておくようにしましょう。
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