• 29 Dec
    • 農業に従事したことによる寄与分を算定した事例

      判例タイムズ1430号で紹介された事例です(大阪高裁平成27年10月6日決定)。  本件は,被相続人(父親)が営むみかん農家を手伝っていた長男が民法904条の2による寄与分を主張したという事案です(昭和49年19歳で就職した後も農業を手伝い,平成21年の退職後には農業に先住していたというもので被相続人は平成24年死亡)。 (寄与分)民法第904条の2  共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。2  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。 寄与分は,共同相続人の中に身分関係や親族関係から通常期待される以上に被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がいるときに,その寄与者の相続分に寄与分額を加算して遺産分割をするというものです。名義上は被相続人のものとなっている遺産の中に潜在的に寄与者の寄与による財産が含まれているとして考えることもできます。  寄与分の主張にもいくつかの類型がありますが,本件は家事従事型と呼ばれるもので,評価のしにくい農業への従事だったということが特色です。  寄与分が認められるためには①特別の貢献②無償性③継続性④専従性⑤特別の寄与と財産の増加維持との間の因果関係の各要件が認められることが必要とされており,原審の家裁では,長男の寄与分を認めて,遺産の30パーセント相当額を寄与分と認定しましたが,高裁においては,長男の寄与は農業に従事したことによりみかん畑が荒廃することなく取引価格が低下することを防いだ点にあると評価し,みかん畑の評価額の30パーセントに限って寄与分を認めました。なお,平成19年から23年までは申告書上赤字であったことから,財産の維持増加が認められないのではないか(前記⑤特別の寄与と財産の増加維持との間の因果関係を欠くのではないか)ということが問題となりましたが,長男の寄与はみかん畑の荒廃を防ぎ価値を維持したことにあるので農業の収支上の赤字は関係がないと判断されています。   

      3
      テーマ:

プロフィール

弁護士江木大輔(北川・江木法律事務所)

性別:
男性
誕生日:
1974年生まれ
お住まいの地域:
東京都

読者になる