数字がとても気になります。

 しかし、その数字にばかり注意がいくのは危険でもあります。

 

 例えば「80万人」とか。

 これは昨年の出生数、つまりはこの国で生まれた赤ちゃんの人数、79万9728人のことです。これには解説が必要で、それは「統計を取り始めた1899年(明治32)以来の最少を更新した」という点が重要です。単に80万人という数字だけの問題ではないと思います。

 

 岸田文雄君は自公政権を代表したつもりで「危機的な状況」とコメントしたそうですが、笑うしかないですね。だって、1989年(平成1)の1.57ショックを含めて、戦後のほとんどの時期は自民党が政治を動かしてきたのですから。自分たち(先輩も含めて)の失政が今の危機を生んだという認識が全くありません。これを無責任と言わずして何と表現したらよいのでしょう。理解できない思考回路です。

 

 1.57ショック以降、研究者はそれぞれの立場から様々な主張を唱えてきました。歴史人口学では少子化は国力を左右すると言います。従って、今後も少子化が進行すればこの国の衰退は避けられません。

 身近なところで言えば労働力が減少します。それはもう気配ではなく、現実となって現れているのは皆さんも気づいているでしょう。

 

 前にも書きました。

 教師が足りず、若者も教師になりたがりません。

 宅配需要は伸びるばかりなのにトラック運転手は不足しています。

 目の前の道路を補修する建設業者の多くは高齢者です。

 農家や漁師の高齢化は言うまでもありません。

 最近聞いたところでは、空港職員が足りないそうです。理由は簡単、ブラックだからです。飛行機飛べなくなるんじゃないですかね?

 岸田君は、ようやく保育士の配置基準を見直せと指示したそうです。しかし、同時に待遇(つまり給与)を改善しないで人が集まると思っているんですかね? 不思議です。

 有事に戦う自衛隊員、定員の約80%しかいないそうです。トマホークとかいっぱい買って、だれが操作するんですかね?(笑)

 

 もうやめましょうか。国内で労働力の奪い合いをやってどうするんですかね? そうならないように国民に呼びかけるのが政治家の使命だと思いますけど、どうも見識に疑問符を付けないわけにはいきません。

 ちなみに社会学者の山田昌弘先生は、ずっと前から少子化の最大の要因は「未婚化と晩婚化」だと主張してました。子どもを産んでからはもちろん、そもそも子どもが生まれやすいような対策を講じるべきだったのです

 残念ながらこの国では「子どもは結婚したカップルから生まれるべきだ」という雰囲気に覆われています。このような国柄をすぐに変えるのが難しいなら、どうやったら「国民が結婚しやすくなるか」にフォーカスしていくのが政治の役割だったのに自民党と政府はこの点をスルーしてきました。

 同性婚はもとより、選択的夫婦別姓も認めず、中途半端な働きから改革や数10円の最低賃金の値上げでゴマカシてきたツケが回ってきています

 

 気になる数字がもう一つ。メディアはもっと取り上げるべきです。この問題なぜ話題に上らないのか本当に不思議です。

 それは「人工妊娠中絶数」です。

 2020年、国が把握したのは「15万6716件」です。約15万人の命が失われたのです。アメリカの宗教右派のように中絶禁止などと言うつもりはありません。しかし約15万人の命のいくばくかは救えたはずです。

 ちなみに同年の出生数は84万0832人でした。2020年には最大100万人の赤ちゃんの泣き声を聞けたはずなのです。さらに言えば人工妊娠中絶数はここ数年、概ね15万人程度で推移しています。これは本当に悲しく、恐ろしいことと言わねばならないと思います。

 今、この国には中絶しないで済む、そして新しい命を救い歓迎する、そういう仕組みが必要だと思います。もちろん、そのためには「子どもは家族で育てる」とか言っている場合ではないのは明らかです

 

 赤ちゃん、歓迎!
 子どもの声がうるさいから公園や学校はNо!、とか言ってるようでは・・・。

 

・・・・・今日のBGMは“Kurt Rosenwinkel Trio”の「Reflectiоns」、久しぶりのジャズ・ギター、甘い音色が素敵です。